若年層ほど「地方移住に関心あり」
新型コロナウイルスの影響により、テレワーク(リモートワーク)を選択できる企業も増え、オフィスと自宅を行き来する生活がマストではなくなった現在。「それならば地方に引っ越すのもいいかもしれない」と考えている人も少なくないのではないだろうか。
そんな中、高知県高知市が「地方移住への意識」をテーマに調査を行った。
この調査は、全国の20~60代以上の男女(合計1766人・2021年8月10日~8月18日)を対象に行ったインターネット調査。
この調査によると、
・2020年以降に地方移住をした…1.7%
・2020年以前に地方移住をした…5.5%
・地方移住する予定…2.0%
・地方移住に関心があり、情報収集をしている…3.5%
・地方移住に関心はあるが、検討には至っていない…18.5%
・地方移住に関心はない…68.8%
合計で31.2%が「地方移住済・地方移住に関心がある」という事がわかった。
この31.2%にあたる552人を年代別に見てみると、20代が104人、30代が111人、40代が113人、50代が113人、60代以上は111人。
さらに「地方移住に関心がある」と答えた20代は全体のうち最も多い21.8%を占めており、「実際に移住を検討している」のは30代が7.9%で最も多くなっている。
移住と言うと「定年後はのんびりと田舎暮らしをしたい」「静かな地方に“終の棲家”を構えたい」など、ミドル・シニア層からの計画を思い浮かべる人も多いだろう。
しかし、この調査では「移住に関心がある」と答えた人は50代で18.8%、60代では13.6%「移住を検討している」層は50代で5.3%、60代で3.3.%など、20~30代の方がより移住への関心が高いことがわかった。
コロナ禍で「移住への関心高まった」人は3割
また、この552人を勤務体制別に見ると、リモートワークが多い人で「地方移住へ関心がある」人は22.2%、「移住を検討している」人は12.5%。出社勤務が多い人で「移住へ関心がある」人は20.9%で、「移住を検討している」人は5.9%。
地方移住への関心は勤務体制によって大きな差はないが、検討するまでに至っている人はリモートワーク勤務の人の方が多いという結果になっており、ワークスタイルが実際に移住に踏み切るかに影響していることがわかる。
また、地方移住へ関心がある・すでに地方移住をした500人(552人のうち、比較分析しやすい
よう各年代の男女が各50人になるように抽出)に「コロナ前後で地方移住に対する関心の変化」を聞いたところ、コロナ禍で地方移住への関心が高まった人は29.2%。
地方移住をしたいと思った理由については、
・ゆとりのある生活をしたい…48.4%
・自然の多い環境で生活したい…42.8%
・人が少ない安全な地域へ行きたい…18.6%
・家族や友人の近くで生活したい…17.2%
・テレワークなど働き方の変化…9.2%
・金銭的理由…7.6%
移住を決めた理由には、
・家族の変化…34.5%
・仕事の変化…24.8%
・生活の変化…24.8%
・経済的変化…16.6%
・価値観の変化…13.1%
・コロナの影響…6.2%
などが挙がっている。
若年層の移住への関心が高く、また実際に移住を検討しているリモートワーク勤務の人が多いという調査結果にくわえ、「安全な地域へ行きたい」という意識や「働き方の変化」など、コロナ禍が少なからず地方移住への意識に変化をもたらしていることが伺える結果となった。
ちなみに、地方移住と「幸福度」について、地方移住へ関心がある・地方移住をした人に聞いたところ、地方移住に関心がある人で「幸せだと思う」と答えた人は55.8%、地方移住を予定している人は40%、すでに地方移住をした人は63.5%。
移住した人からは「コロナ禍では、人との接触が少ないため地方移住は安心できる(鹿児島県、製造業・20代男性)」「地方でも可能な仕事をわざわざ都会で行う事はないと思う。職種にもよると思うが、経理等の仕事は地方で充分と思う(山口県、製造業・40代男性)」などのコメントも寄せられており、より幸福度が高いことも調査により判明している。
新型コロナの影響がいまだ色濃い中、地方移住へ意識が向いている若者が多いということはわかったが、では地方移住の実態はどうなっているのだろうか。
調査を行った高知市では、移住を希望する人に対し、まずは高知県内の都市部である高知市に移住・滞在し、高知市を拠点に県内をめぐり、最終的な移住地を決めてもらうという「二段階移住」を提案している。
こういった支援制度も盛り上がりを見せているのだろうか?高知市の地域活性推進課 移住・定住促進室にお話を聞いた。
調査の高知市「地方移住の若年化を感じている」
――地方移住への意識調査を行ったきっかけは?
新型コロナウイルス感染症の全国的な感染拡大は、人々の生活環境に大きな変化をもたらすことになりました。特に、人々が密集する大都市圏においてその影響は大きく、地方暮らしへの関心が高くなったとの調査結果も出ています。地方移住を促進する上で、地方の立場からそうした意識の変化を把握し、少しでも地方移住の失敗をなくすために、今回の調査を実施することが大切であると考えました。
――20代の移住への関心が高いという結果が出ている。実際に高知市ではどうなっている?
高知市においても、近年、若年層の移住が増えており、今回の調査においても同様の傾向であることが確認できました。令和2年度の高知市への移住実績においても20歳代が約4割と、前年度と比較して1割ほど高かった一方で、60歳代などのシニア層は若干減少しています。
――コロナ禍で移住への関心が高まったという結果の受け止めについて…
コロナの前後で、3割程度の方が地方移住に対する関心が高まったとのことで、大きく意識の変化をもたらしたと認識しています。
――高知市では実際にどれくらいの人が移住を希望し、移住支援制度を利用している?
「こうち二段階移住」は、平成30年度から制度としてスタートし、令和3年9月末時点までの3年半の間に、累計115組203人が二段階移住の制度(補助制度・お試し滞在施設)を活用しています。
――地方移住を支援する制度、今後の課題は?
「こうち二段階移住」では、移住ミスマッチをできるだけなくすために、段階を踏んで移住することをオススメし、幸せな移住をしてもらうために支援するものです。また、高知市では、移住者同士の交流や地域の魅力を伝えるために、移住者交流会を開催しています。しかしながら、現状ではコロナの影響もあり、開催が難しい場合もあり、移住者のフォローアップが課題となっています。
高知市でも増えつつあるという移住者数。
コロナの影響による環境の変化が高知市への移住のきっかけとなった人も実際にいるということで、移住した人の年齢層も以前は20〜40代が全体の約70%だったのに対し、現在は約80%を占めており「地方移住の若年化を感じている」という。
「その場所の空気感や実際に住んでいる人と触れ合っていただくことで、よりよい情報が入手でき、そこでの生活イメージがより深まると思う」と話す高知市。
コロナ禍で生まれた移住の需要だが、同時に、コロナで移住者同士が情報交換する場が開きにくくなるなどの問題も発生している。今後も「安全な地域に行きたい」という意識から地方移住希望者は増えそうな予感がする調査結果だが、“アフターコロナ”の生活が整うまで、移住者のバックアップをどうしていくかが自治体の課題となりそうだ。