女性自殺者8割増!コロナ禍の女性への影響が深刻化
政府は、新型コロナウイルス対策の一環として、男女共同参画の視点から「コロナ下の女性への影響と課題」に関する研究会を昨秋から立ち上げている。
コロナの感染拡大で、非正規雇用など女性が多い分野の労働環境が大きな影響を受けていることや、外出自粛によりDV=ドメスティックバイオレンスや性暴力が増えていることなどが理由で、政府は女性への影響と対策などを検討している。
この記事の画像(9枚)とりわけ、去年10月は女性の自殺者数が前年同月比で8割増となるなど問題は深刻で、橋本聖子女性活躍相は今が「女性不況」とも言える状況だとして、「しっかりとした対策をしないといけない」と危機感を募らせている。
研究会には経済学者や医師など幅広い有識者が加わり、今年度内に議論を取りまとめることにしている。
緊急事態宣言が男女に与える影響は?
政府は1月7日、首都圏の1都3県を対象にした緊急事態宣言の発令を決定したが、これに先立ち、政府の研究会は昨春の緊急事態宣言が男女に与えた影響を分析し、中間報告を取りまとめた。今般の緊急事態宣言再発令にあたり一考に値する資料として紹介したい。
調査は去年11月末~12月上旬にかけて内閣府の男女共同参画局が行い、全国の20~60代の10,571人(6,679世帯)から回答が得られた。
(以降、「緊急事態宣言」とは昨春の緊急事態宣言を指す。図表はいずれも内閣府資料より)
緊急事態宣言で家事、育児はどうなった?
調査では緊急事態宣言中、時間の使い方がどのように減ったかを調べた。すると、男女ともに「仕事の時間」が減ったとする人は2割強。一方で「家事の時間」「育児の時間」については、女性の方が増えている。
※家事時間の増加:女性33.0%・男性21.6%
※育児時間の増加:女性35.7%・男性23.9%
そのうえで、「緊急事態宣言中の不安やストレス」を問うたところ、総じて女性の方が「不安を感じた」割合が高かった。その中でも「家事・育児・介護の負担が大きすぎる」「家計の先行きが不安」「職を失う不安」は女性の方が大きい結果となった。
こうした状況の中で、「今後の家事・育児に望むこと」については、男女間の違いが鮮明に表れた。女性で多さが目立ったのは「配偶者にもっと家事をしてほしい」という項目で、女性の方が16.7%高かった。一方で男性の方が高い項目としては、家事の時短などにつながる「新しい家電を導入したい」というものであった。
「新しい働き方」テレワークには女性の方がネガティブ?
さらに調査では、緊急事態宣言中はもとより、コロナ禍の中で「新たな日常」として普及しつつあるテレワークの影響についても尋ねている。緊急事態宣言中と前後における就業時間の変化を分析すると、テレワークの導入を受けてか、女性の方が就業時間を調整していることが分かる。
そのうえで、テレワークに対する評価を尋ねたところ、男女間の違いが顕著であったのは、女性の方が男性よりも「家事が増える」「自分の時間が減る」などといった負担を感じる回答が多かった一方、男性には「通勤時間分を有意義に使える」などといったポジティブな見方が目立った。
さらに、コロナ禍を通じた総合的な「働き方の変化」の捉え方については、男女ともに「業績が悪化した」、「多様な働き方が認められた」などメリット・デメリットの双方がうかがえる結果となった。その中でも、総じて男性の方はポジティブな捉え方が多く、女性の方は「子どもの面倒を見ないといけない」などネガティブな捉え方が多かった。
政府関係者はこうした調査結果について、「元々あった『固定的性別役割分担意識(夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである)』がコロナ禍で顕在化した」と受け止めたうえで、「一概には言えないが、総じて一連の変化について男性はポジティブ、女性はネガティブに受け止める傾向が見える」と分析する。
もちろん性別でひとくくりに判断するわけではないが、政府は今回の調査結果を、今後の施策に反映していくことにしている。例えば、女性に負担が偏らないように意識したテレワークの制度設計や、女性が“コロナ禍の影響をネガティブに受けがち”なことを踏まえた自殺対策などが挙げられるという。
内閣府関係者によると政府は、今後コロナの影響が続く中で、地域別の分析など、今回の調査をより深掘りし、政策に生かしていくことにしている。緊急事態宣言の再発令という事態の中で、今こそ「女性目線での施策」が必要だ。今回の調査結果を踏まえた政府の適切な対応が求められる。
(フジテレビ政治部 山田勇)