男子高校生が転落死、女性に直撃

2020年10月、大阪の繁華街・梅田のランドマークとなっている商業施設から男子高校生(17)が転落し、下を歩いていた19歳の女子大生に直撃した。その後、2人の死亡が確認された。

この場所は普段から人通りが絶えない場所で、当時も多くの若者などが訪れていた。

警察は屋上には高校生のものとみられる鞄が置いてあったことや、目撃者情報などから、高校生が自ら飛び降り、路上を歩いていた女子大生が巻き添えになったとみている。

転落・巻き添え事故があった大阪・梅田 10月
転落・巻き添え事故があった大阪・梅田 10月
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7月以降自殺者増加 

新型コロナウイルスの感染拡大で、社会のあり方が一様に変化した今年、4月から6月までに自殺した人は例年に比べて減少した一方、7月以降は増加し、10月には対前年同月比で619人増え、40%を超える増加率となった。また11月も対前年同月比で182人増え、11%を超える増加率となっている。

「いのち支える自殺対策推進センター」によると女性の自殺が増え、特に10代など若年層が多くなっているという。

その理由として、コロナ禍で経済的な問題や家庭内暴力が深刻化したほか、芸能人の自殺を伝える報道の影響が考えられるという。

巻き添え事故は過去にも

実は飛び降り自殺をした際、歩行者などを巻き込んでしまう事故は少なくはない。

2018年には新宿歌舞伎町で若い女性がビルから飛び降り、下敷きとなった男性は骨折する重傷を負った。

2006年に東京・調布市の大学で当時55歳の女性が飛び降り、下を歩いていた20歳の女子学生が巻き込まれて重傷を負ったほか、2007年には東京・新宿区の雑居ビルから当時48歳の男性が飛び降り、下にいたバイク便の男性にぶつかり、男性は胸の骨を骨折する重傷を負った。

2008年にも東京・立川市で、当時53歳の男性がマンションから転落し、自転車で通りかかった女性が巻き添えになり足の骨を折る重傷を負っている。

2007年に自殺した女性を書類送検

2007年11月には大阪梅田の事故と同じように、巻き添えとなった人が死亡する事件が起きている。

東京・豊島区のJR池袋駅前ビルの屋上から当時25歳の女性が飛び降り、通行人の男性が巻き添えになり死亡した。

女性が飛び降りた東京・池袋パルコ 2007年
女性が飛び降りた東京・池袋パルコ 2007年

この事故を捜査した警視庁は、「人通りが多い池袋駅前で飛び降りれば、通行人を巻き添えにする危険性があることは十分認識できた」と 判断し、死亡した女性を重過失致死の疑いで書類送検した。

巻き添え事故に関して、現場を目撃した人は、「気付いたら人が倒れていた。まさか空から人が落ちてくるなんて誰も想像できないので、このような事故に巻き込まれると防ぎようがない」と話す。

飛び降り・巻き添え事故があった現場  2007年
飛び降り・巻き添え事故があった現場  2007年

コロナ禍の中で7月以降、増えている国内の自殺者。
このような中で、誰もが行き場のない怒りを感じる巻き添え事故は、今後二度と起きてほしくない。

執筆:社会部所属 河村忠徳

河村忠徳
河村忠徳

「現場に誠実に」「仕事は楽しく」が信条。
FNN北京支局特派員。これまでに警視庁や埼玉県警、宮内庁と主に社会部担当の記者を経験。
また報道番組や情報制作局でディレクター業務も担当し、日本全国だけでなくアジア地域でも取材を行う。