2021年1月特集は「コロナで変わる家選び」。

昨年は新型コロナウイルスの影響で、住宅での感染予防対策や「おうち時間」の充実も関心を集めた。コロナ禍で人々が住宅に求めるものに変化が起きていると思われるが、リフォーム業界の調査でもそれを裏付ける結果が出た。

売上高は減少でも…関心は増加傾向

この調査は、一般財団法人「住まいづくりナビセンター」が2020年8月31日~9月14日にウェブで実施。実際のリフォーム事業者180社に、コロナ禍での影響や需要の変化を聞いている。

調査ではまず、2019年比での売上高の変化を聞き、その回答は「大きく増えた」(2%)、「増えた」(14%)、どちらともいえない(43%)、「減った」(31%)、「大きく減った」(11%)という結果に。全体の約4割で売上高が減少していた。

2019年比での売上高の変化(提供:住まいづくりナビセンター)
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その一方で、コロナ禍で消費者の需要に変化はあったかを聞いたところ、戸建てで39%、マンションで17%、店舗など住宅以外の建物で9%がリフォームの需要が増えたと感じていた。需要が増えたと感じるリフォームの種類としては、「修繕・メンテナンス」、「設備の更新」、「間取り変更・模様替え」を挙げる事業者が多かった。

コロナ禍で感じたニーズの変化(提供:住まいづくりナビセンター)

住まいづくりナビセンターに聞いたところ、コロナ禍となる2020年5月~8月ごろは自社運営のリフォーム事業者評価サイトのアクセス数も、例年と比べて約1.3~約1.5倍に伸びていたという。

担当者は調査結果について、「在宅時間が長くなったことで住まいへの関心は高まったが、接触による感染を恐れて、落ち着くまで様子を見ようと思ったのではないか」と分析している。

具体的な行動は起こしにくいが、住生活を見直したい心境があるのかもしれない。では、実際にコロナ禍でリフォームした家はどういうケースだったのだろうか。

住宅のリノベーション(大規模リフォーム)事業「リノベる。」を展開する「リノベる株式会社」に聞いてみた。

仕事や趣味に集中できる空間が人気

ーーコロナ禍で需要に影響は出ている?

お客さまからのお問い合わせは正直、2020年3~4月は冷え込みました。ただ、5月のゴールデンウイーク以降は前年の同時期を超えています。人々の気持ちは数字には表れにくいですが、住まいの選択肢に関心を持つ人は増えていると思います。


ーー人々が住宅に求めるものは変わった?

感染予防対策の結果、住宅で過ごす時間が伸びているので、お客さまからは少し広めの面積にしたいというご要望、個室がほしいといったお声をいただくことは多いです。集中して仕事ができるワークスペースだったり、外出しなくても楽しめること、例えば音楽やものづくりといった、趣味用のスペースのニーズは高まっていると思います。

また、ウイルスを自宅に持ち込まないこともポイントになると思います。例えば、帰宅後にすぐ手を洗えるように、玄関に手洗い場がほしいというお声をいただくこともあります。


ーーコロナ禍で実際に改装した例はある?

弊社のお客さまは、中古物件をリノベーションされる方が多く、例えば4LDKのマンションをコロナ禍仕様の3LDKに改装したご家族がいます。コロナの影響で在宅勤務が増えたことで、生活に不満や限界を感じたそうです。主な改装としては、感染予防対策として帰宅後にすぐ手洗いできるよう、玄関先に手洗い場を設置されました。

実際の改装例。玄関先に手洗い場を設置した(提供:リノベる株式会社)

加えて、ご家族の旦那さんがテレワークでリモート会議が多いことから、一畳半の小さな個室の書斎も新たに作りました。旦那さんは以前は、家族の迷惑にならないよう、洗面台に移動して会議をされていたそうです。

在宅勤務用に設けられた書斎(提供:リノベる株式会社)

さらに、外出できない環境に備えて「おうち時間」を充実させようと、外にいるかのようなインナーバルコニーも設置されました。トレーニングや緑を楽しむ場所にしたいそうです。

マンションの一角はインナーバルコニーとした(提供:リノベる株式会社)

感染予防やテレワーク…改善できる?

ーー感染予防対策として、住宅はどう改善できる?

一つは帰宅後すぐに手を洗えたり、住宅の奥にウイルスを持ち込まない設備を導入することですね。玄関に手洗い場を設置することもそうですし、非接触の水洗設備、声でオン・オフなどの操作ができるスマートライトなどを設置しても、接触感染の予防につながります。

また、新型コロナウイルスの対策には換気が重要とされています。間仕切り壁に室内窓をつけて風が流れやすい空間を作ることもできるので、換気しやすい環境にもできます。

非接触の自動水洗を設置する方法も(「リノベる。 東京 表参道本社ショールーム」より)

ーー部屋の間取りなどで工夫できることは?

感染者が出たとき、その方の居住空間を限定できる間取りが理想
ですね。イメージとしては、昔の家庭でよくみられるような、廊下を挟んでその先に個室があるような間取りです。

近年の住宅は、全ての部屋がリビングに通じているなど、一体感のある間取りが好まれる傾向にありました。ただ、感染予防の視点でみると、この流れも変わる可能性があるかもしれません。仕事用のスペースだけではなく、個室のニーズが高まるのではないかと思います。


ーー仕事環境の点で改善できる余地は?

テレワークだと、家族が気になって仕事がはかどらない、仕事の話を聞かれたくないなどの理由で、リビングから離れた場所にワークスペースを求める声はあります。Web会議でも自宅が背景として見えてしまうこともあるので、ここも改善できる余地はありますね。

また、自宅に長時間いることが増えると、精神的に疲弊することも考えられます。例えば、ワークスペースを小さくても2カ所作り1カ所は窓際にするなど、テレワークでも気分転換ができるような、環境作りをすることもできます。

テレワークでも気分転換できる環境を(「リノベる。 東京 表参道本社ショールーム」より)

ーー費用はどのくらいかかる?

費用面はお客さまのご要望に応じて変わります。弊社の場合は自由設計で、間取りから住宅設備、配管まで変えることが多いので、1200~1500万円ぐらいかける方が多いです。ワークスペースや家族のためのスペースなどを造ることもできます。工事範囲によっては、これより少額でできることもあるので、詳細はご相談いただければと思います。

戸建てリフォームは思わぬ追加費用に注意

ーーどんな状況の人にリノベーション(リフォーム)を勧めたい?

都心部などの新築物件は価格の高騰が続いているので、不動産価格を抑えつつ、自分らしいデザインや間取りで利便性の良い場所に住みたい人には、有効な選択肢になると思います。コロナ禍で住宅環境に不満を感じたり、もっと自由な空間を作りたいという場合は、一度検討してみてはいかがでしょうか。

ーー住宅にも一戸建てやマンションなどがあるが、そこでの注意点は?

一戸建ては個々の建物で大きく状況が異なるため、物件によっては思わぬ追加費用が発生する可能性もあります。物件の状態など、十分な下調べをすることが重要です。マンションのリノベーションは、施工範囲が専有部である室内にとどまります。管理組合もあるので、建物の状態にばらつきが少ないのは安心ですね。


ーーコロナ禍でリフォーム業界はどうなる?

コロナ禍で働き方や居住地の選択肢が広がったことで、人々の住宅に対する考え方も大きく変わってきました。仕事をする場所、趣味を楽しむ場所など、住宅に求めるものも多様化してきたので、今後はより一層、そうしたご要望を実現する手段にはなると考えています。

自宅を快適な空間に改装するのも選択肢の一つ(「リノベる。 東京 表参道本社ショールーム」より)

感染予防対策や仕事に集中できる環境など、コロナ禍で住宅に求められるものも、やはり変わってきたようだ。賃貸契約だと引っ越すこともできるが、持ち家の場合はそうもいかない。今の住生活に悩んでいるのなら、リフォームも一つの選択肢となりそうだ。

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