ネットが普及した今、企業の「クレーム対応」はやり方を間違えると炎上の可能性もあるため難しい。
こうした中、Twitterに高槻市営バスのクレーム対応が投稿されると、なんと10万を超える「いいね」が付き、大きな話題になっている。(12月10日現在)
毎月出る高槻市営バスのお客様の声は、クレームがいかに盛ったり作ったりしてるかってのが可視化されてる点からも興味深い。 pic.twitter.com/TJ4sDrJuhW
— 桜井の塔 (@skr_busterminal) December 3, 2020
毎月出る高槻市営バスのお客様の声は、クレームがいかに盛ったり作ったりしてるかってのが可視化されてる点からも興味深い。
話題になっているツイートは桜井の塔(@skr_busterminal)さんが投稿したもの。
画像は、大阪府の高槻市営バスが公開している「お客さまの声」で、利用者からの意見について市営バスからの回答とあわせてホームページで公表しているものだ。
注目なのは、市営バス側からの回答の際に、以下のようにドライブレコーダーでしっかり検証している点で、時にはクレームが事実と違うことを指摘するときもある。

(意見・苦情)
JR高槻駅南から阪急富田駅行きに乗車したが、運転が非常に荒かった。急加速と急ブレーキの繰り返しで、非常に不快だった。市バスの運転手としては、もっと安全意識を高めてほしい。
(市バスの回答)
当該乗務員とドライブレコーダーの映像を確認したところ、荒くはないが、アクセルワーク及び運転姿勢に問題があることを指摘し、指導しました。
(意見・苦情)
171号線のマクドナルドから道路に出ようとしていた際に、私が少し車で出すぎてしまっていたのですが、車の前をバスが通る時にかなり威圧的な態度で睨みつけられました。並走して信号止まった時に、「なんですか?」と尋ねたら、片手で振り払う動作をされてとても怖かったです。
(市バスの回答)
ドライブレコーダーの映像を確認したところ、当該乗務員の運転や行動には問題なく、お問い合わせの内容とは異なる事実が確認できました。今後とも市営バスのスムーズな運行にご協力お願い致します。

高槻市営バスはドライブレコーダーを2011年度から導入し、2018年12月からこのような苦情・意見に対する回答をWebで公開している。
バス1台には前後左右と車内に合わせて6~7台のカメラが付いており、車内の音声も記録しているという。
もちろんドライブレコーダーを検証した結果、バスがスピードを出しすぎていたり、乗務員が所定場所以外でタバコを吸っているなど、クレーム通りの失態が見つかることもあり、その場合は当該乗務員に厳しく指導した旨が記載されている。
一方、Twitterでは不当なクレームや理不尽な苦情にしっかり反論する姿勢にたくさんの賞賛が寄せられていた。
・モンスタークレーマーには、きっちり反論して気持ちいい
・話しを盛ったクレームの真相を暴いてる
・謝罪だけではない、これが本当の真摯な対応
・バスのドラレコってまっとうなクレーム対応にも役立ちそう
近ごろは、過剰なクレーマーは「○○ポリス」や「モンスタークレーマー」などと呼ばれているが、事実を確認した上で回答する姿勢が評価されているようだ。
高槻市営バスはどういう目的でこの取り組みを始めたのか?担当者に聞いてみた。
言い訳をするのが目的ではありません
――ドラレコ導入前はクレームをどうやって検証していた?
苦情があった際には乗務員本人から事情を伺っていました。
ただ最終的な決め手になる映像がない当時は、判断に迷うことがあったと聞いております。
――ドラレコでの検証は、反論するため?
ホームページで苦情やご意見などへの対応を公開しているのは、いわゆる理不尽なクレームに対して防御線を張ったり言い訳をするのが目的ではありません。
ホームページを立ち上げたときは、いいことばかり発信するのではなく、恥ずかしながらお客様からこんなクレームを頂いていますということを白日の元に晒す狙いがありました。
ところがドラレコの映像を見ると、お客様の言っている事とは違うという事があり、こういう対応を取ったということを説明しています。
それが知らぬ間に反響を呼んでるようで、私どもも驚いているところです。
――ドラレコの検証で理不尽クレームは減った?
苦情やご意見・賞賛・ご評価は、合わせてだいたい月平均15件ほど頂戴しています。
しかし、我々の肌感覚としては、増えた減ったというのはございません。
恥ずかしい話なんですが、お客様がおっしゃることのほとんどが正しく、我々が反省すべき点が多い状況です。
――ドラレコを使う事で乗務員や他に変化したことは?
乗務員は個人によってちょっと緊張感を持ったかもしれませんが、特に目立ったものはありません。
ただ、どの業種でも一緒だと思うんですが、新しい機械を入れますと管理の手間や維持するための費用が掛かってきますので、そこは確認作業が便利になった分の費用や手間が増えたという変化はあります。
公開後にさらなるクレームは?「まったくありません」
――「事実じゃない」と書いたら、それにまた苦情が付くのでは?
それはまったくありません。
――ネットで話題になった反響は?
今のところは数は少ないんですが、「インターネットで話題になっています」「素晴らしい取り組みです」など、応援のメールを頂いております。

話を盛ったり作ったりするモンスタークレーマーに対しては、一定の効果はありそうだ。
企業がクレーム対応に頭を悩ませる中、高槻市営バスの取り組みはヒントになるかもしれない。
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