大晦日の風物詩・除夜の鐘にここ数年変化が起きている。
そもそも除夜の鐘は、大晦日の深夜から元日にかけて、人間が持つとされる108の煩悩を静めるために煩悩の数と同じ108回鐘を突くものだ。(諸説あり)

鐘の音が遠くから聴こえると「今年も終わりか…」と思うほど定着しているものだが、一方でこの除夜の鐘がうるさい!という近隣からの苦情によって、除夜の鐘を中止したり、時間を早めて行う寺が増えているのだ。

静岡県にある大澤寺では、苦情の電話があったことで、2004年に中止。しかし、檀家や住民のリクエストがあり、2014年から大晦日の昼間に鐘を突くことで復活させた。また、群馬県の宝徳寺では、2015年から鐘を突く時間を午前10時からに変更して行っている。

恒例の行事が変わってしまうのは寂しい気もするが、意外にも除夜の鐘の前倒しは、お寺にとってメリットもあるという。
一体、どんなメリットがあるのか?また、時間を早めることで煩悩を静める効果は薄れないのか?という疑問も浮かぶ。

2018年から鐘を突く時間を深夜から夕方に前倒しした福岡県、東長寺の方に詳しく話を聞いてみた。

騒音の苦情だけでなく参拝者や寺の世話人の高齢化も

――“除夜の鐘”の前倒しを始めた経緯は?

東長寺は、福岡の歓楽街・中州から徒歩10分くらいのところにあります。
市街地の中にあり、周りはマンションだらけ。田舎なら近所付き合いの手前、年に1回のことですし、許されるのかもしれませんが、ここは地元以外の人も多く住んでおり、自由に鐘を突ける場所じゃないんですね。
数年前から大晦日に鐘をついていると、若い人から苦情の電話が来るようになりました。

また、大晦日にお寺を手伝っていただく方は高齢の方が多く、深夜の作業がきつくなってきました。参拝しに来ていただける方も、高齢化により深夜より朝に来られる方が増えました。

そうしたことから、それまで夜11時半に開始していた鐘突きを、去年の大晦日から夜6時に行うようにしました。

――実際、去年の大晦日に、やってみてどうだった?

事前にお寺の掲示板で告知していたこともあり、毎年、鐘を突きに来ていただいている常連の方々にも納得いただき、特に問題はありませんでした。苦情の電話もありませんでした。

福岡県 東長寺

深夜に騒ぐ若者がいなくなるメリットも

――前倒ししたことによるメリットは?

夜11時半に開始していたころは、カウントダウンイベントを終えた若者たちも多く詰めかけ、
深夜3時まで騒がしかったのですが、そうしたことはなくなりました。

――今年は何時から行う予定?

今年も夕方6時から開始する予定です。
寺の関係者5人が鐘を突いた後、残り103回を一般の方に突いていただく予定です。

時間変更しても“効果”は変わらない?

――鐘を突くのを大晦日の深夜から夕方に変えても“効果”は変わらない?

我々の見解では、大晦日の深夜に鐘を突くのはNHKの「ゆく年、くる年」で定着したものと思われますが、深夜に鐘を突かなければいけないとルールがあるわけではありません。
除夕(じょせき)の鐘といって、夕方に突くものもあります。
夕方に鐘を突いても、問題ありません。

――一部のクレームにより、日本の伝統行事がなくなってしまうことをどう思う??

除夜の鐘は、昭和に入ってからお寺が人を集めるために始められたものだと言われており、古くから行っていたわけではありません。
先ほど話したように、高齢化で深夜に参拝する人が少なくなってきています。
このような社会の変化を受け止めて、その変化に合わせて行っていくものなのではないでしょうか。



年末の風物詩である除夜の鐘。
夜中に聞こえなくなることを嘆く声もあるが、話を聞いてみると、時代の変化に合わせてやり方を変えていくのが伝統を残す上で最善の方法なのかもしれない。