「海外でも稼いで成長できる農業へ」輸出戦略を決定

「日本では当たり前の農産品でも、海外では重宝されるものがある」

これは政府が今、農産品の海外輸出を促進するにあたっての柱としている考え方だ。政府は11月30日、こうした観点に基づき農林水産物・食品の輸出を拡大するための「実行戦略」を取りまとめ、重点的に輸出する27品目を決定した。

4月には、当時の菅官房長官の強い思いで、日本の農林水産物・食品の輸出額を、2025年に2兆円、そして2030年に今の5倍にあたる5兆円にするとの目標を打ち出している。これに向けた具体的な道筋が決定されたということだ。

(農水省資料より)
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農林水産物・食品の輸出額を倍増、さらには5倍に増やすのはたやすいことではない。それでも、菅首相は「人口減少により国内市場が縮小する中、海外でも稼いで成長できるような農業にしないといけない」という思いのもと、従来の延長線上にない戦略を各省庁に求めてきた。

「隠れた名産品」も!輸出重点品目とは

(首相官邸HPより)

国内の余剰を輸出するという発想を転換し、生産、加工、流通、販売に関わる全ての事業者が、マーケットが求めるものを作るという発想に立つべく改革を行っていく」

菅首相は30日の会議でこのように強調したうえで、27の輸出重点品目を選定したことを明らかにした。

【輸出重点品目】

(内閣官房資料より)

新たに決められた「輸出重点品目」には、海外で評価されるような強みを持つ品目が選ばれ、誰もが思い浮かべるような牛肉やイチゴのみならず、以下のような「隠れた名産品」も含まれている。

○鶏卵

 「半熟卵」が浸透する中で生食できる卵としての品質が評価され更なる輸出へ

○サツマイモ(甘藷)

 アジアで「焼き芋」が人気となる中で輸出急増

○ぶり

 脂ののった日本独自の品種で、アメリカなどに輸出増加中

○たい

 中華圏で赤色が「縁起良い」とされ好まれている

○ホタテ貝

 高品質なことから世界で高く評価され、水産物では輸出額ナンバーワン

○真珠

 真珠も輸出産品!養殖は日本発祥で国際的に高評価

このように、日本では当たり前のように生産・消費されている産品であっても、「品質」や「色」など、意外な理由で海外から評価されているものも多いのだ。

重点品目に選ばれた産品については、「輸出のターゲットとする国」、また「2025年の輸出目標額」が設定され、ターゲット国別の課題や、今後育成すべき国内産地などが示されている。

例えば牛肉では、去年297億円だった輸出額を2025年には1,600億円まで増やすとされ、香港・台湾・アメリカといったターゲットとなる国や地域に向けた販促プロモーションの強化などが課題とされた。

さらに、戦略においては、輸出向けの生産を行う産地をリスト化して重点支援することや、リスクを取って輸出にチャレンジする事業者への資金供給をしやすくする法改正を行うことなども盛り込まれ、政府一体となって輸出を後押しすることにしている。

コロナ禍での今後の課題

政府関係者は「日本で作っている物が海外にそのまま輸出できる物は少ない」と強調する。例えば、生産に使っている農薬が輸出先の基準に合致していなかったり、作物が海外への長距離・長期間の輸送に耐えられなかったりするケースが多く、輸出向けの生産に発想を転換する必要があるという。今回の輸出戦略の策定を通して、そうした発想がどれだけ現場に根付いていくか、課題と言えるだろう。

さらに、コロナ禍で外食から巣ごもりへと需要が転換する中で、海外での日本からの産品への需要が変化しているケースも多いという。例えば政府関係者によると、日本料理店に出かけることが少なくなり日本酒の需要が減る一方、自宅で日本料理を作る際に使う精米のニーズが増えているという。また、在宅が増える中、日本の粉乳も需要が増えているそうだ。内閣官房の担当者は「コロナ禍でも、日本産品の強みを生かして輸出を拡大していく」と意気込んでいる。

政府では、例えば外国政府への輸入規制緩和の働きかけは外務省、輸出に適した物流基盤整備は国交省が中心となるが、省庁横断的に課題解決に努めることにしている。そのためにも、来年度から農水省に「輸出・国際局」を新設し、農産品の輸出を政府一体となって支援する中心的役割を担わせる予定だ。

菅首相は、総裁選の出陣式に、輸出に取り組む畜産業者を招くなど、「農林水産業者の所得を上げたい」という思いを胸に抱いてきた。菅首相渾身の輸出戦略がどれだけの効果を上げ、農林水産業者を豊かに出来るか、政権の本気度が試されている。

(フジテレビ政治部 山田勇)