人間の「老い」や「認知症」、「死」をテーマに演劇を上演する岡山の劇団「OiBokkeShi(オイボッケシ)」。
新しい舞台に、94歳の男性が挑む。
劇団の看板俳優、「おかじい」こと岡田忠雄さん。またひとつ年をとり、2020年で94歳になった。

岡田忠雄さん:
人生は舞台

この記事の画像(11枚)

演劇は子どもの頃からの憧れ

演劇への憧れは、子どもの頃から。

岡田忠雄さん:
学芸会に出してくれなかったから、母親に風邪をひいて頭が痛いとウソをついて、2日休んだ。(親の)財布から(お金を)とって芝居を見に行ってた。なんか、とにかく芸術、お芝居

劇団「OiBokkeShi(オイボッケシ)」を率いる菅原直樹さんは、演出家で劇作家の平田オリザさんの劇団に所属する俳優だった。

東日本大震災を機に岡山に移り住み、介護福祉士として働いた。
その中で、「ボケは正さず演じて受け入れる」というコミュニケーションの魅力に気付いた菅原さんは、街の中を徘徊しながら演劇を上演するなど、ユニークな取り組みで、2019年 文化庁芸術選奨の新人賞を受賞した。

人間の老いを考える菅原さんのワークショップに、岡田さんがやってきたのが2人の出会い。

岡田忠雄さん:
きょう岡山放送のディレクターが監督、緊張する。

劇団OiBokkeShi主宰・菅原直樹さん:
監督、2人いますから

岡田忠雄さん:
きょうはわしの出るところは外して、他の人のにして

劇団OiBokkeShi主宰・菅原直樹さん:
いえいえ、そんな。きょうは緊張感持って、稽古しましょう

岡田さんはこの日、珍しく弱気だった。
岡田さん2020年、初めてヘルパーの手を借りなければならなくなった。

新型コロナの影響で、公演は相次いで中止。
ようやく再開できたこの芝居にかける役者たちの思いもひとしお。

劇団OiBokkeShi主宰・菅原直樹さん:
一応PCR検査を受けようと思いますので、今度の土日みんなで一緒にやります

岡田さんは、認知症の妻を介護し、後に自分も認知症になる「岡谷」という役を演じる。
人生を精一杯生きることの大切さを伝える重要な役柄となる。

妻を介護しながら演技を続ける

岡田さんは94歳になった今も、同い年の妻・郁子さんを介護している。
週に3日は、施設から戻る妻の世話を1人で続けている。

岡田忠雄さん:
「誰かわかる?」と言っても知らないと

大会議室で演技指導中の2人。

劇団OiBokkeShi主宰・菅原直樹さん:
「岡谷さん」と話しかけられるので、「お散歩ですか」と聞かれたら、「女を探している。女が消えたんよ」と言う

岡田忠雄さん:
女を探しているんだよ。女が消えたんよ

以前に比べると、なかなか台本を覚えられなくなったと岡田さんは言う。
それでも、舞台に立つと力強い芝居が始まる。

劇団OiBokkeShi主宰・菅原直樹さん:
現実生活では、できることはどんどん無くなってきている。
でもこうやって舞台稽古をしていると、どんどんできることが増えている。
今回も、岡田さんに新しい挑戦をしてもらっている。岡田さんにとって、演劇とは命に深い関わりがあるものだと思っている

劇団「OiBokkeShi(オイボッケシ)」の公演は、岡山・奈義町で幕を開ける。
演劇と出会い、命と魂を輝かせた岡田さんの人生。
劇団と「おかじい」が紡いだ奇跡の時間が訪れる。

劇団OiBokkeShの次回公演
2021年1月17日午後2時~いなべ市北勢市民会館さくらホール(三重・いなべ市)

(岡山放送)

岡山放送
岡山放送

岡山・香川の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。