国内最高齢の現役ボディビルダー・金澤利翼さん(90)が、新たな大舞台に挑む。スペインで開かれる世界選手権に出場するため、10月28日に広島を出発した。鍛え上げた肉体はもちろん、英語もユーモアもキレッキレ。90歳で世界に挑む金澤さんの素顔に迫る。
90歳で7回目の世界選手権へ
広島市内にある金澤さんのジムを訪れた岡野唯キャスター。
「このたびは、誠におめでとうございます!」
世界選手権への出場が決まった金澤さんを祝福すると、おなじみの言葉が返ってきた。
「歴史に残る快挙かもね。うれしい。サンキューベリーマッチョ!」
現役ボディビルダーの金澤さんは、2026年夏、日本マスターズ選手権に最年長で出場し、19回目の日本一に輝いた。
次なる舞台は、スペインで開かれる「IFBB世界選手権」。ボディビルの国際連盟から特別に招待を受け、50歳以上の部に出場する。世界選手権は4年ぶり7回目だ。
「招待です。それが私の“正体”。ふふふ。90歳であること、90歳で世界大会に挑む情熱とかすべて含めて金澤さんはすごいと思って選んでくれたのかな」
持ち前のユーモアを交えながら、招待された喜びを語った。
英語も「エブリシングオッケー」
世界を見据えて鍛えてきたのは、筋肉だけではない。金澤さんは英語も堪能。岡野キャスターによると、金澤さんから届く手紙は、ときどき英語で書かれているという。
これは、実際の手紙にあるメッセージだ。
「Thank you very much for coming to Gym. Wishing you good health and continued success always.」
「ジムに来てくれて本当にありがとう。健康と、これからも変わらぬ成功を願っています」という思いがつづられている。金澤さんは「書くのも、読むのも、しゃべるのも。エブリシングオッケー。ノープロブレム」と自信たっぷり。
その勉強法も独特だ。
「映画に出てくる字幕を見ずに、アメリカの実際の英語をとらえて勉強する。肉体もすごいけど、健康であることと、頭がシャープ。頭が鈍ったら世界選手権どころじゃないもん」
筋肉だけでなく、頭の働きも世界に挑むための大切な要素。90歳になっても学び続ける姿勢が、金澤さんの強さを支えている。
出場には90歳ゆえの特別な条件が…
今回の出場にあたり、ひとつ条件があった。90歳という年齢を考慮し、日本ボディビル連盟から「付き人」をつけるよう求められたのだ。そのため、日本選手団とは別にスペインへ向かうことになった。
そこで金澤さんが誘ったのが、ジムの会員でボディビルダーの宮前亜寿香さん(51)。9月に男女ペアを組んで大会に出場し、一緒にYouTube配信を行うなど、気心の知れた間柄だ。
「私、金澤さんが90歳であることを忘れているんですよ。あっ、90歳だったと」
金澤さんも「そんな感じのお友達関係で行くんですから」と笑う。
宮前さんは「金澤さんはいつも『予定通り』って言うんですけど、『予定通りいくね』って声が出るようにサポートしていきます」と意気込んだ。
世界選手権を目前に控えても、金澤さんのトレーニングはいつも通り。ダンベルを持ち上げ、真剣な表情で腕を鍛えていた。
「こんな重量でも筋肉にはよく効いている。ただしゃべるうちに、数を忘れる……」
すると、宮前さんが横から「5、6」とダンベルの回数を数える。
「筋肉を疲労させて、あとは何を食べるか。今、何回?」
「12」
「お〜、やりすぎや」
スペイン遠征、気がかりは「食事」
金澤さんが肉体づくりを語る上で、食事の話題は切り離せない。
「何を聞かれても私の食事は、玄米ご飯、納豆、みそ汁だけ。隠れて肉を食べたりなんかしませんよ」
そう言って周囲を笑わせる金澤さんだが、海外遠征で頭を悩ませることがある。
「世界大会に行って、いつも困ることが食べ物。肉や魚がふんだん。朝、卵を3つ焼いてもらい、あとはパンばかり食べた」
金澤さんは、50歳から肉や魚を一切口にしない食生活を続けている。日本食が中心のため、海外での食事は悩みの種。今回のスペインでもパンが中心になりそうだ。
一方、宮前さんには現地の食事を存分に楽しんでもらいたいと話す。
「オフコース、ドリンキングオッケー」
宮前さんも「ビアープリーズ」と英語で応じ、息の合った掛け合いを見せた。
「世界中の人を驚かせたい」
10月28日、スペインへ向けて出発の日を迎えた。大きなキャリーケースを引き、広島駅に姿を見せた2人。
「付き人の宮前さんがいるから安心ですね」
岡野キャスターが声をかけると、宮前さんは「金澤さんが気持ちよく旅行してもらえるように全力でサポートしますので、任せてください」と力強く語った。
90歳で迎える7回目の世界選手権。金澤さんが掲げる目標は明快だ。
「すばらしい体を見せて、世界中のボディビル関係の人を驚かせたい」
最後に「今日はわざわざサンキューベリーマッチョ!」とポーズを決める金澤さん。スマートフォンを改札にかざし、手を振って颯爽と旅立った。
年齢を重ねても衰えない好奇心。90歳の挑戦者は世界の舞台へと向かった。
(テレビ新広島)

