岩手県大槌町で発生し、平成以降国内2番目の規模となった山林火災から10月22日で半年を迎えた。焼失面積は1620ヘクタールに及び、被災した山林の所有者は約500人とみられている。先祖代々受け継いできた所有者たちは、経済的な損失だけではない深い喪失感を抱えながらも、次の世代へ豊かな森林を残したいという思いを胸に再生への道を見つめている。
平成以降国内2番目の規模の山林火災
大槌町の山林火災は4月22日に発生した。午後2時前に小鎚地区で、さらに午後4時半ごろには約10キロ離れた吉里吉里地区でも火の手が上がった。
消火には12都道県から駆け付けた緊急消防援助隊や自衛隊などが投入され、懸命な消火活動が続けられた。
発生から1か月余りが経過した5月29日、ようやく鎮火が宣言された。
この火災では住宅1棟を含む建物8棟が全焼。現地調査などを踏まえて確定された森林の焼失面積は1620ヘクタールに達し、平成以降では国内で2番目の規模となった。
被災した山林の所有者は500人ほどに上るとみられている。
黒く焼け焦げた先祖の山
出火場所にほど近い小鎚地区の自宅で、建築・設計事務所を営む佐々木久一さん(70)も被災した山林所有者の一人だ。
「すごかったよ火事の日は。うちの向かいはとんでもない、山が」
火災当時をそう振り返る佐々木さんは、現在も時折、自らの山林へ足を運び被害の状況を確認している。
佐々木さんは、約15ヘクタールの山林を所有しているが、約2ヘクタールが火災の被害を受けた。
この一帯は佐々木さんの両親が造林した山だが、火災によって地面の草木が焼き尽くされ、木の根元には今も焼け焦げた跡が残る。
佐々木さんは「40年位前に造林した山。草も何もないものね、焼けたから」と肩を落とす。
「すごく焼けていてびっくりした。風は強いし。火が来たとき、もうがっかりしたよ。ここは焼けないと思っていたから」と火災発生当日の様子を話す佐々木さん。
強風にあおられながら燃え広がる炎を自宅から見つめるしかなかったという。
樹齢130年超のスギ林が被災
佐々木さんの所有する山には、5代ほど前の先祖から受け継いできたエリアもある。
その中には樹齢130年以上とされるスギ林があり、長年守り続けてきた大切な財産だった。
これらのスギは50年前には木材として1本40万円ほどの価値があったとされる。しかしこれまで売却することなく守り抜いてきた。
激しい焼け方ではないものの、今後、伐採せざるを得なくなる可能性があり、佐々木さんは無念さをにじませた。
佐々木久一さん:
今はもっと安いとは思うけれど大損害、大損害だ。
長い年月をかけて育ててきた森林への思いは、金額だけでは測れない。
復旧計画への複雑な心境
大槌町は8月、被災した山林所有者を対象に森林再生事業の説明会を開いた。
計画では、山林の管理権などの権利を町へ委託した場合、伐採や植林に関する作業と費用を町が25年間にわたり担う方針が示された。
伐採した木材については森林組合が買い取り、被害面積などに応じた金額を所有者に支払うことが検討されている。
しかし、佐々木さんの胸中は複雑だ。
佐々木さんは大切な樹木を自分で管理できなくなるのは、やるせないと本音を漏らすとともに、木の買い取り後に支払われる金額にも期待が持てないと語る。
佐々木久一さん:
もう少し(木が)太くなったら切って売る考えもあった。1町歩(約1ha)で10万円から100万円と言っていた、この間の(町の)説明会では。何にもならないでしょう、そればかりでは微々たるお金だ。まあしょうがない。どうにもできないから自分だけでは。
次世代へ残す森林を
それでも佐々木さんの思いは変わらない。
先祖や両親がそうしてきたように、後の世代に資源を残せるような森林づくりを強く願っている。
佐々木久一さん:
(両親は)後に残したかったのでは。みんな山ってそうなんだと思う。2代も3代もしてから(価値ある)ものになるから。山は残した方がいい。
所有者が抱える複雑な思いーー。
町では一人一人の理解を得ながら、2027年3月までに森林再生計画を策定し、復旧事業を進めたいとしている。

