10月に愛知県で開催されたアジア大会の自転車競技で、金メダリストとなった鹿屋体育大学4年の梅澤幹太選手(22)を特集する。梅澤選手はゼミで、自分自身の走りを研究しているという。大学での学びが、世界の舞台での勝利にどうつながったのか。その歩みと今後の目標を紹介する。
風を切って走る、白いウエアのアジア王者
自転車で風を切るように走る一人の選手がいる。鹿屋体育大学自転車競技部4年の梅澤幹太選手である。身につけている白いウエアは、2026年3月のアジア選手権で優勝した証だ。チャンピオンが1年間着用するものである。

梅澤選手は、10月開催のアジア大会・自転車競技の男子オムニアムで、2位に圧倒的な差をつけて金メダルを獲得した。まぎれもないアジア王者である。

ただ、本人の受け止めは意外に落ち着いている。
「全然実感が沸かなくて、後からお祝いの言葉もらって、そこから実感湧いたって感じ」
チームメートが語る「憧れの存在」
梅澤選手について、チームメートに聞いてみた。
鹿屋体大自転車競技部のメンバーの一人は、高校時代から愛媛県で一緒だったという。「大学に入ったら頑張って追いつこうと思っていたが、なかなか追いつくことなく離される一方。憧れの存在」と語る。
別のメンバーも「競技になったら目の色変えて雰囲気がガラッと変わって。すごい。尊敬しかない」と話した。普段の姿と競技中の姿のギャップが、仲間の心をつかんでいるようだ。
優勝の要因は「ゼミ」での研究
優勝の要因を尋ねると、梅澤選手はこう答えた。
「大学でオムニアムの研究もしていて、ゼミで。自分の走りが最適化された。迷いがなかった」
オムニアムとは
梅澤選手が研究するオムニアムは、1日で4つの種目をこなし、合計ポイントで順位を決める競技である。単純にゴール順を競う種目がある一方、規定の周回で最も遅れた人が脱落していくサバイバルレースもある。4種目を通したスタミナ配分や戦術が、勝利の鍵を握る。

梅澤選手は研究の成果をこう語る。
「こういう研究をしていることで、自分の中で戦術面で、こういう時にはこういう対処をするというのが増えてきたので、イレギュラーなことが起きても次はこうすればいいというのが分かっていたのでよかった」
引き出しが増えたことで、レース中の想定外にも落ち着いて対応できたということだ。
「この子は!」監督が見抜いた才能
ゼミで指導教員を務めるのは、自転車競技部監督の山口大貴さんである。梅澤選手を鹿屋体大へ誘った人物だ。
山口さんは当時を振り返る。「この子は!って思った。いっぱい勧誘されていたのも知っていた。だけど『どうしても一緒にやれないですか?』と」

「世界で戦える選手になる」。そう直感した山口さんは、そこへ至る道のりを示す「4カ年計画」を提示した。計画は現在、順調に進んでいる。梅澤選手も目標への到達について「結構近い」と手応えを口にする。

コロナ禍で失ったチャンスが原動力に
輝かしい功績の裏で、梅澤選手は高校時代に「自分の努力ではどうにもならないこと」も経験している。
山口さんは「高校生の時はコロナウイルスが世界にまん延していた時で、ジュニアのナショナルチームには入っていたが、世界の舞台で戦えるという経験ができなかった世代」と説明する。
チャンスを失ったからこそ、貪欲に勝利を求める。持って生まれた才能と、毎日の地道な努力が、梅澤選手を世界の舞台へ押し上げた。
優勝報告会に約400人「ロス、ブリスベンへ」
21日、鹿屋体育大学でアジア大会の優勝報告会が開かれた。梅澤選手の体験談を聞こうと、同じように目標を持つ学生アスリートや教員など約400人が集まった。世界で戦う梅澤選手の言葉に、多くの人が耳を傾けた。
梅澤選手は今後の目標を次のように語った。
「今後の目標としては2028年のロスオリンピックに出場すること。その先の(2032年)ブリスベンオリンピックでメダルを獲得することを目標。長いスパンになるがそこまでしっかり走っていきたい」

在学中のオリンピック出場も
大きな野望を抱いて世界に挑む梅澤選手。鹿屋体育大学の大学院への進学を希望しているという。そのため、もしかしたら在学中にオリンピック出場がかなうかもしれない。これからも目が離せない存在である。

