福井県の子供は歯磨きが上手なのに虫歯が多い。理由は、歯磨きの方法にあった。福井の身近な疑問を解き明かし驚きを見出すローカル情報バラエティ番組「なんだー?ワンダー!」で歯科医の仕事に密着し、歯の健康を守るためのポイントを調査した。
虫歯も歯周病も生活習慣病
福井・坂井市三国町にある畑歯科医院では、3代目の畑陽子院長が約30年にわたり地域の人の歯を診てきた。
重視するのは、患者について知ること。「虫歯も歯周病も生活習慣病です。だから、患者さんの生活背景を知りたい」のだという。治療の合間に交わす会話から、虫歯になりやすい生活習慣などをさり気なく聞き出している。
以前、長く通院している患者が急に虫歯が増えた時は、会話の中から、部屋に冷蔵庫を置くようになり昼夜問わずジュースを飲んでいることが分かったという。「こうした話はリラックスした場面でなければ聞けませんから」
患者との信頼関係が、より良い治療につながるのだ。
20年来の患者は「歯磨きを少しでも手を抜くと『奥が磨けていませんよ』とすぐに見抜かれてしまう。結局は自分のためですからね」と笑う。
治療に当たっては、患者の体調も重視している。この日、虫歯治療で来院した男性は、治療前の血圧測定で高血圧が判明した。局所麻酔は血圧を上げるおそれのある成分を含むため、血圧が高い場合は使用を控えることがある。
この日は虫歯治療を延期し、食いしばり防止用マウスピースの型取りに切り替えた。
16歳で全国ワースト2位…福井の虫歯が多い理由
畑院長によると「福井県は全国と比べても虫歯が多い県」だという。3歳児の虫歯は多くないが、年齢が上がるにつれて全国との差が開き、16歳になると全国ワースト2位に達する。
その理由を畑院長はこう分析する。「福井の子供たちは歯磨きが上手で、プラーク(歯垢)を落とす能力は高い。にもかかわらず虫歯が多いのは、他県と比べてフッ化物の応用が少ないからではないか」
フッ化物=フッ素を含む化合物は、多くの市販歯磨き粉に含まれる。「歯が溶けかける初期虫歯(脱灰)を修復する効果がある」と畑院長。歯を強くし、虫歯菌を抑制する効果もある。
その効果を引き出すために畑院長が勧めるのが、歯磨きを2回に分ける「ダブルブラッシング法」だ。
歯磨きの後にしっかりとうがいをすると、フッ化物も一緒に流れ落ちてしまう。そこで、ブラッシングを2回に分け、2回目にフッ化物が入った歯磨き粉を使うことで歯に成分を残す。
手順としては、1回目はフロスや歯間ブラシで歯の間を清掃後、歯ブラシで磨く。ここで歯垢などの汚れを落とし、しっかりとうがいをして汚れを流し出す。(歯磨き粉は使っても使わなくてもOK)
2回目は、フッ化物濃度「1450ppm」の歯磨き粉(子供は年齢によって推奨される濃度・使用量が異なる)を薬を塗るように全体に行き渡らせる。さらに、うがいは大さじ1杯程度の水で1回だけ。「口の中に歯磨き粉の味が残る状態で終え、30分ほど飲食を控えれば、より効果がある」という。
2回目の歯磨きでは、フッ化物入りの洗口液を使ってもよいし、「2回も磨くのは面倒」という人は、夜の歯磨きだけに取り入れても効果が期待できる。
「歯を見せて笑えるようになった」
診療時間が終わりスタッフが帰った後も、畑院長はカルテの見直しや、翌日の予約票のチェックを続ける。
歯科医は「天職」だと語る畑院長。その根底には「患者の暮らしを豊かにしたい」という思いがある。「皆さんがおいしくご飯を食べられるようになった時や『歯を見せて笑えるようになった』と聞いた時、その一つ一つが嬉しくて、歯科医師になって良かったと思います」
そんな畑院長は、自身の健康を保つため「食事は30回は噛むようにしています。おいしく感じられるし、口腔機能の衰えも防げますから」という。「40歳くらいから筋肉衰え、50歳になって症状として出てくるので、若いうちから噛む癖をつけておくのは大事」だと噛むことの大切さを語る。
虫歯も歯周病も、生活習慣と深く関わる病気。将来の自分ために、かかりつけの歯科医に相談し、大切な歯を守ろう。

