歯周病は高齢者の病気というイメージを持つ人は多いかもしれない。しかし実際には、30代以降から患者数が急増しているという。疲れやストレスが引き金になり、気づかないうちに進行し、最終的には歯が抜けてしまうだけでなく、全身疾患を引き起こす恐れもある。歯科医に、歯周病チェックのポイントや受診の目安を聞いた。
免疫が下がっている時は要注意
歯周病について、福井県歯科医師会の畑陽子医師に話を聞いた。
歯周病菌そのものに季節性はない。しかし、疲れていると感じる時には免疫力が下がっているため、注意が必要だと畑医師は指摘する。
「夜勤明けに必ず歯茎から出血する男性もいて、聞くと『いま仕事が立て込んでいて』と言われる」(畑医師)
仕事の繁忙期でストレスがたまったり、睡眠不足が続いたりすることで口の中の状態が悪化し、歯周病を引き起こす恐れがあるという。
歯茎からの出血で“超悪玉菌”に
歯周病の最大の原因は、食べ物の残りかすに大量の細菌が増殖してできた「プラーク(歯垢)」と呼ばれる細菌の塊だ。
プラークは「本来はそれほど強い力があるわけじゃない」と畑医師。問題は、抵抗力が弱まって歯茎から出血すること、血液中の「ヘミン鉄」を歯周病菌が取り込むことだ。
こうなることで、より強力な「超悪玉菌」へと病原化し、周囲のほかの細菌まで病原化させてしまうという。
つまり「歯茎からちょっと血が出た」という小さなサインが、歯周病を加速させるスタートになりうるのだ。
放置すれば歯ぐきが赤く腫れ、口臭が悪化し、やがて歯を支えている骨が溶けて歯が抜けてしまう。さらに糖尿病・心疾患・認知症といった全身疾患のリスクも高まるため、畑医師は「歯周病を放置はしてはいけない」と強調する。
「気づいた頃にはかなり進んでいる」セルフチェックで早期発見を
歯周病の最大の怖さは、初期段階でほとんど自覚症状がないことだ。痛みがなく、じわじわと進行するため、「サイレントディジーズ」とも呼ばれている。「基本的に気づいた頃には、かなり進んでる」と畑医師も話す。
だからこそ、重要なのが日頃のセルフチェックだ。以下の項目に1つでも当てはまる場合は、要注意だ。
【歯周病セルフチェック】
* 朝起きたときに口の中がねばつく
* 歯磨きやフロスをすると出血する
* 歯肉が赤い
* 歯が長くなった気がする
* 歯が浮いた気がする
* 口臭が気になる
“歯茎の中の歯を磨く”正しいケアで予防を
治療の基本は、超悪玉菌の栄養源を断ち、細菌を取り除くこと。歯茎の出血を止めて歯垢を除去すると、歯ぐきは回復してくるという。
大切なのは、毎日の歯磨き。畑医師は「歯間ブラシ、フロス、歯ブラシを、正しく、歯と歯ぐきのすき間に当てること」が大切だとする。ポイントは「歯茎を磨くのではなく、歯茎の中の歯を磨く」意識を持つこと。
歯ブラシは歯の表面に対して45度の角度で当て、1本ずつ小刻みに、軽い力で約20回動かす。畑医師は「駆け足のイメージで」と表現する。磨くタイミングは朝・昼・晩の食後に加え、就寝前の4回が理想だ。特に睡眠中は細菌が最も増殖するため、寝る前の歯磨きは念入りに行うことが重要だという。
仕事が忙しい、疲れが続いている…そんなとき、口の中のケアは後回しになりがちだ。しかしそのタイミングこそが、歯周病菌が力を増すことになりかねない。「ちょっと血が出た」を見逃さず、早めの対処と正しいケアをすることで、歯と全身の健康を守ろう。

