社会福祉法人の理事会・評議員会には、招集の方法から決議すべき事項まで、法律で定められた細かな決まりがある。しかし実際にその準備を担っているのは、理事長を兼ねる園長や、日常業務と並行して法人事務を担当する職員1名、という法人が少なくない。
会計や処遇改善の支援を通じてその現場を見てきた株式会社幼保支援が、なぜ自らシステムを開発することになったのか。開発責任者に話を聞いた。
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▲開発責任者 施設DXアドバイザー・大田黒
「作ったはずなのに、どこにあるか分からない」
―― ココナビの開発を始めたのは2023年だと伺いました。何がきっかけだったのでしょうか。
大田黒:直接のきっかけは、行政の監査が実地に戻ってきたことでした。2023年というと、世の中ではコロナの流行が落ち着き始めた頃です。ただ、福祉施設ではまだ厳重な予防体制が続いていました。高齢の方やお子さんを預かる現場ですから、世間の空気がゆるんでも簡単に警戒は解けません。
その一方で、コロナ禍の間はデータの確認で代替されていた監査が、この頃から実地に戻り始めたんです。担当者の方が実際に法人を訪れて、書類を確認する。以前の形に戻っただけなんですが、そこで色々なものが見えてきました。
―― 具体的には。
大田黒:議事録が法律で求められている通りに作られていない。あるいは、そもそも作られていない。招集通知が無い。備え置かれている規程が古いままになっている。最新のものを求められて、「作ったはずなんだけど、パソコンのどこにあるんだろう」と探し始めてしまう。
こういう場面です。
―― 担当者の方が手を抜いていたわけではない、と。
大田黒:むしろ逆でした。そこは後でお話しします。
作った後が、見えていなかった
―― 幼保支援さんご自身の働き方も、この時期に変わったそうですね。
大田黒:はい。それまで訪問して行っていた支援に、オンラインも併用し始めました。支援の中身が変わったわけではありません。必要な書類を確認し、支援先と一緒に作る。そこまでは同じです。ただ、出来上がった書類が法人の中でどう管理されているかまでは、画面越しでは確認ができなかった。
―― 手を離れた先が見えなくなった。
大田黒:そうです。私たちの手を離れた後。その先で書類がどこに置かれて、次に必要になったときに誰が取り出せるのか。監査が実地に戻ったことで、その「先」をまとめて目にすることになった、という感覚でした。
制度を覚えて運用するのは、専属の担当者がいる前提の仕事
―― 先ほど「むしろ逆だった」とおっしゃいました。
大田黒:相談としては、以前からよく受けていたんです。
理事会や評議員会を開催するには細かいルールがありますし、決議すべき事項も法律で決まっています。規程の変更方法についても同様です。でも社会福祉法人では、理事長を兼ねている園長先生が一人で準備をしたり、事務担当者が1名で、日ごろの業務を回しながら並行して進めたりすることになる。しかも毎月決まって発生する業務ではないので、そのたびに制度を調べながら進めるしかない。時間がかかってしまう、と。
―― どういった問い合わせが多かったのでしょうか。
大田黒:多かったのは、まず招集のルールですね。決議の方法や招集の仕方によって、通知の出し方も議事録の書き方も変わってきます。それから、たまにしか議題に挙がらない事項について議事録をどう書けばいいのか。あとは、「そもそも、これをやりたいんだけれど、評議員会に諮る必要があるのか」という質問も多かったです。
この頃から、一つの課題感を持つようになりました。この制度全般を覚えて運用するというのは、専属の担当者を置ける法人を前提にした仕事になっているんじゃないか、と。置けない法人にとっては、負担が大きすぎる。
―― 同じことは他の業務でも。
大田黒:もともと担当していた会計や処遇改善、給付費のチェックでも感じていました。担当者の方が休職されたり退職されたりしたときに、後任の方へ引き継ぐのが難しい。複数人を配置できないので、どうしても属人性の高い業務になってしまうんです。
ある法人の先生からは、こう言われたことがあります。平日は通常の業務をやって、法人運営の業務は土日にやっている、と。
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最初のココナビは、Wordを、Webに載せただけだった
―― そこからシステム開発へ。
大田黒:考えたのは、これらのルールをシステム側がチェックして、準備から議事録の作成までを簡単にできないかということでした。それがココナビの出発点です。
―― 2025年5月に最初のバージョンを公開されています。どんなものでしたか。
大田黒:正直に言うと、それまでWordで作っていたものをWeb上でできるようにした、というものでした。テンプレートを用意して、決議事項を選ぶと、あらかじめ準備されている文言が議事録に反映される。一部の方には喜んでいただけました。
―― 一部の方には。
大田黒:ええ。指摘も受けました。当時はシステム側で設定したテンプレートしか選べなかったので、「うちの法人は、議事録をこう作っているんだ」「この決議事項が無いのは困る」と。要するに、小回りが利かない。
法人にはそれぞれの「いつものやり方」があって、私たちが用意した型はその一つでしかなかったんです。監査で指摘を受けないようにすることと、自法人のやり方を変えずに済むこと。どちらも譲れないものなのに、最初のココナビは後者を諦めさせる作りになっていました。
法人が決めた型を、システムが守る
―― それが2026年のVer2につながった。
大田黒:変えたのは二点です。見たままに入力ができるようにしたこと。それから、各種の項目を、その法人に最適化されたテンプレートとして保存できるようにしたこと。
これで、開催日と決議事項を選べば、通知から議事録までが出来あがるようになりました。
―― 法人ごとの型をシステムが覚える。
大田黒:私たちが型を決めるのではなく、法人が決めた型をシステムが守る。この順序を入れ替えたのがVer2でやったことです。
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▲ココ+ナビ 現行版の理事会管理画面。この画面から会議情報の確認や、招集通知・議事録などがダウンロードできる。
本部の業務へ──規程管理と職員管理
―― その後、機能が広がっていきます。
大田黒:会議の準備が形になってきたところで、法人本部の運営を効率化するための機能として、規程管理と職員管理が加わりました。
職員管理は、職員お一人に対して複数のデータを紐づけられる作りにしています。名前を検索するだけで、その方の基本情報、入職情報、履歴書や資格証、入職時に集めたファイルなどが確認できる。
福祉施設の事務には補助金の申請業務があり、職員の配置状況に応じて支給されるものが多くあります。そのため、申請書を作る前の「職員情報の確認」に時間が取られます。ここが一つの画面で済むようになったことで、業務の負担が軽くなったと喜んでいただきました。
―― 規程管理のほうは。
大田黒:最新のものが常に分かる状態になります。過去の編集履歴も、新旧対照表も自動で残ります。
これについては、時間がかなり削減できたという声に加えて、こう言っていただいたことがあります。「何より、監査の際に慌てることが無くなった」と。
―― 2023年に見た場面の、ちょうど反対側ですね。
大田黒:そうですね。「作ったはずなのに、どこにあるか分からない」という状態から、慌てなくていい状態へ。そこにたどり着けたのだと思っています。
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▲規程管理では、規程の編集や閲覧に加え運用中の規程のリストを出力することや、新旧対照表の出力も可能。
もともとやってきた業務を、システムの側へ──処遇改善オプション
―― 保育施設を運営する法人向けには、追加の機能があるそうですね。
大田黒:保育施設を運営されている法人向けに、「処遇改善オプション」をご用意しています。職員管理機能をお使いいただいていれば、追加の費用はかかりません。
処遇改善は、私たちがもともと支援業務として担ってきた領域です。計画を立てて、実際に支給して、最後に実績報告書にまとめる。この流れのどこに手間がかかるかは、分かっているつもりでした。
―― 機能としては。
大田黒:処遇改善の管理と、支給計画の立案ができます。そして、その内容を集計シートにまとめて、実績報告書へ転記できるようにしています。
報告書を作る時期になってから支給の記録を集め直すとなると、それだけで何時間もかかってしまいます。計画を立てた時点のデータと実際のデータが同じ場所にあれば、その作業はいらなくなる。
―― これも。
大田黒:ええ。結局、2023年に見たものと同じ話なんです。「作ったはずなのに、どこにあるか分からない」。
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▲処遇改善オプションでは、職員の研修管理、分配計画の立案、実績報告書へ転記できるExcelシートの出力ができる。
今年度中に、AIを
―― 今年度中にAIの実装を予定されていると伺いました。
大田黒:二つ考えています。
一つは、法人運営について質問すると答えてくれるコンシェルジュです。冒頭でお話しした「これをやりたいんだけれど、評議員会に諮る必要があるのか」という類の問い合わせ。あれに答えるものです。
―― もう一つは。
大田黒:自法人の規程データをもとに回答する、専用のAIです。産休の条件はどうなっているか、慶弔はどう扱うか、経理のこの処理はどうするか。そういったことを聞くと、根拠と合わせて回答します。
規程は法人ごとに違います。一般論として正しい答えではなく、その法人の規程ではどう定められているか。それを根拠まで示して返せるようにしたいと考えています。
―― 根拠まで示す、というのは。
大田黒:どこにそう書いてあるのかを一緒に返す、ということです。そうでないと、担当者の方は確認のために結局は規程を開くことになりますし、何より、答えが間違っていたときに気づけません。いまのAIの仕組み上、100%の精度は難しい。だからこそ、根拠を示す形にしています。
―― 福祉の現場は個人情報を扱います。AIとなると不安を持つ方もいるのでは。
大田黒:そこは設計の前提にしています。
入力されたデータをAIの学習に使用しないこと。施設ごとに分離された環境でデータを管理すること。そして、国内のサーバー上で運用すること。また、個人情報を含む職員管理の情報は、AIに渡さない設計にしています。
―― 使う側から見ると、何が変わりますか。
大田黒:これまでは、制度を調べるところから始めるしかなかった。規程のどこに書いてあるかを探すところから始めるしかなかった。そこを短くしたいんです。調べる時間ではなく、判断する時間に使っていただきたい。
※AI機能は今年度中の実装を予定しているもので、本記事公開時点では提供前です。
同じ悩みを持つ法人と、一緒に届けてくださる方へ
―― 現在の状況と、これからについて。
大田黒:いまは周知と提案を広げている段階です。理事会や評議員会の準備を一人で抱えている方、引き継ぎに苦労されている方、法人の継承を考えている方にまず使っていただきたいと考えています。
―― パートナーの募集もされているとか。
大田黒:はい。社会福祉法人を支援されている士業の方に、ぜひご一緒いただきたいと思っています。社会保険労務士の事務所、社会福祉法人会計に対応された会計事務所・税理士法人、社会福祉法人向けのコンサルティングをされている方々を想定しています。
顧問先の規程や職員情報、会議関係の書類が整理された状態になれば、支援される側の業務効率も上がるはずなんです。資料を取り寄せて、最新版がどれかを確認するところから始める必要がなくなりますから。
現在、拡販にご協力いただくパートナー様の募集にも力を入れています。条件の詳細は、お問い合わせいただいた際に個別にご説明させてください。
―― 最初に相談したい方へ、伝えたいことは。
大田黒:条件のご相談よりも先に、お願いしたいことがあります。顧問先の管理業務のどこに手間がかかっているか。どういう機能があれば解決できるのか。逆に、どういう場合なら勧められないのか。そこを教えていただく30分をいただければ、私たちにとって何より価値があります。
ココナビ自体が、「うちの法人はこう作っているんだ」と指摘を受けて形を変えてきたものですから。
―― 最後に、この記事を読んだ方へ。
大田黒:法人の方は、まず自法人の運営業務を画面で見てみてください。会議でも、規程でも、職員情報でも、一番手間がかかっているところから確認できます。士業の方は、顧問先の話を聞かせてください。どちらも同じ窓口でお受けしています。
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会社概要
株式会社幼保支援は、学校法人・社会福祉法人の会計、処遇改善、法人運営などの業務を支援しています。2026年10月時点で200施設以上の支援実績があります。また、法人運営・規程管理・職員管理をクラウド上で行うサービス「ココ+ナビ」を提供しています。
会社名:株式会社幼保支援
所在地:鹿児島県鹿児島市中央町26番4号
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