大阪にある地域の人から愛されるケーキ店や家族3人で支え合う“街中華”が閉店することになりました。
常連客からは「やめないで」という声もある中、なぜ閉店することを決めたのでしょうか。
「今のうちに食べておかないと、二度と食べられなくなる」“タイムリミットグルメ”を関西テレビ・秦令欧奈アナウンサーを調査しました。
■店主が“脱サラ”してオープン 35年の歴史を持つケーキ店
京阪電車・天満橋駅を降りてすぐの場所に、35年の歴史を持つケーキ店「サロン・ド・ガトー・アンジュ」があります。
ケーキはおよそ20種類、焼き菓子もおよそ20種類。自分へのご褒美から、仕事での手土産にまで幅広く愛用されてきたお店です。
ショーケースを覗いた秦アナは思わず、「宝石みたいですよ。めちゃくちゃきれい」と声を上げました。
店主の市本弘さんは、もともとサラリーマンとして美術品の販売に携わっていました。27歳で転職を決意し、修業と資金調達に8年をかけて、35歳のときにこのお店をオープンさせたという、異色の経歴の持ち主です。
今は2人の従業員に支えてもらいながら営業を続けていますが、2カ月前に閉店を決断しました。
■オープン当初からの定番 “林檎のシブースト”
市本さんが「一番のお気に入り」と語るのが“林檎のシブースト”です。
【市本弘さん】「一番下がリンゴの層で、キャラメリゼしたリンゴ。そこがブリュレのように、タルトの中に入ってるんです。
そして、その上のカスタードクリームをふわふわに。さらに、一番上の砂糖を焦がして、キャラメル状態にしています。外はパリパリ、中はふわふわっと」
ケーキを実食した秦アナ、目を輝かせながら言います。
【秦令欧奈アナ】「まず来るのが、ブリュレの食感。それからすごく香ばしい甘み。それを過ぎた後に、リンゴの爽やかな甘さも来る。中にカスタードが入ってるから、そのクリームがまろやかで全体をまとめてくれる。
ケーキって食べてて楽しいモノなんだなって思いました。これ“芸術”だ」
■“後継者”がいない 「元気なうちに自分で始末をつけるため」
市本さんがお店の閉店を決意した理由は、“後継者”がいないことだと言います。
ことし70歳になり、後継者がいない状況で、「急に体の調子が悪くなるとか、病気でもしたら、周りの方に迷惑掛けてしまう」と市本さんは話します。
“元気なうちに自分で始末をつけるために閉店する”道を選んだということです。
閉店の話を聞いた常連客に話を聞くと、開口一番こう言いました。
【常連客】「死活問題なんです。困るんです。大将に交渉中です。やめんとってって」
さらに、孫がこの店のケーキの大ファンだという別の常連客は、「(閉店と聞いて)ショックだったので飛んで来た」と話しました。
「サロン・ド・ガトー・アンジュ」の閉店日は11月30日。
お菓子が食べられるタイムリミットは、あとわずかです。
■53年の歴史を持つ町中華 地元の人たちから愛され続ける名店
続いては、西成区・鶴見橋商店街から徒歩1分の場所にある「ぎょうざや」。
黄色い看板に紫色の文字、赤いのれんが目印です。創業からなんと53年、地元の人たちに愛され続けてきた町中華の名店です。
親子3人で切り盛りしているこのお店。
店主谷村正紀さんの母・英子さん(79)は、今や目をつぶってでも餃子を包めるほどの腕前で、平日でも1日平均700個、日曜日には1000個以上を作り続けています。
メニューはおよそ70種類と多彩で、「どれもホッとする懐かしい味」と評判。中でも1番人気は「ぎょうざとからあげのセット」です。
ぎょうざを食べた秦アナは、「めちゃくちゃうまい。肉汁が想像していた量の倍ぐらい入ってます。中の餡の味がとにかく濃い。ご飯が進みます。おいしい」と感想を語りました。
■過去最高売上なのに、なぜやめるのか
驚くべきことに、このお店は年々売上が伸びていて、ことしは過去最高の売上になりそうだと言います。
それでもなぜ閉店を決めたのか…英子さんがその理由を静かに語ってくれました。
【谷村英子さん】「主人との約束があって、若いうちに頑張って、そして(商売が)良いときにお店を卒業しようっていう約束してたんです」
お父さんが亡くなったのは、お店を始めて15年目。息子の政紀さんが高校2年生のときでした。
それからずっと、家族だけで守り続けてきた「ぎょうざや」。その重みが、静かに伝わってきます。
40年来の常連客は「ただただ寂しい。なんか、第二のお母さんがなくなる感じ」と言葉を詰まらせました。
■閉店後は、夢だった青森へ
英子さんには、お店を閉めたらどうしても行きたい場所があるそうです。
【谷村英子さん】「子どもの頃に、(私の)お父さんに『どこに行ったらこのリンゴあるの』って聞いたら、“青森”って。だから私はリンゴは青森にしかないと思っていた」
そんな話をご主人の保さんにしたところ、「そしたら青森行こね」と約束してくれたと言います。
【谷村英子さん】「(約束してくれたけど)あっという間に(主人は)亡くなった。青森に行って、(リンゴを)ぽっと取ったり、やってみたいなと」
53年間、ひたすらに餃子を包み続けた英子さんが、ようやく夢への一歩を踏み出せる日が近づいています。
「ぎょうざや」閉店日は12月30日。中華が食べられるタイムリミットは年内に迫っています。
(関西テレビ「newsランナー」2026年10月9日放送)
