恋愛感情を利用して金銭をだまし取る「ロマンス詐欺」の被害が岩手県内で相次いでいる。2026年1月から8月までの被害総額は1億8000万円を超えた。県央部の60代男性のもとには、他界した親戚が生前に利用していた無料通信アプリ「LINE」のアカウントから不審なメッセージが届き、見知らぬ女から投資話をもちかけられる事案が発生した。男性が遭遇した巧妙な手口からロマンス詐欺の実態を取材した。
亡き親戚の名で届いた連絡
岩手県の県央部に暮らす60代の男性、田中さん(仮名)は、2026年7月、思いもよらないメッセージを受け取った。
送信元はすでに亡くなっている親戚の無料通信アプリ「LINE」のアカウントだった。
文面には『こんにちは。友だちリストにいたので連絡したのですが、どこかでお会いしましたか』と記されていた。
メッセージを送信してきた人物は「優月」と名乗る34歳の女で、田中さんの住んでいる場所など個人情報を尋ねてきた。
田中さんは、「何かなと思って、たぶん間違いで来たんだろうと思ったが、好意を持ちましたみたいに言われて、私としては正直悪い気はしなかった」と当時の心境を明かした。
『LINEくらいだったらいいです』と返信したという。
不審感を抱きつつも、田中さんは女とその日の出来事などについてやり取りを重ねていった。
「この辺で見るような感じの人ではなかった。正直下心がなかったというとウソになるが、半信半疑でやりとりはしていた」と田中さんは振り返った。
徐々に過激化する画像と投資話
「優月」と名乗る女は、田中さんとのやり取りのなかで、ジムでトレーニングをしている様子の動画や水着姿でプールに入っている写真などを送ってきた。
田中さんは違和感を強めていったという。
田中さん(仮名):
全部似ているが、だんだん露出度が高くなっていく画像が来て、なんか違うんじゃないかとだんだん思うようになった。
やり取りを始めてから1週間が経過した頃、女は『叔父さんのところで投資を勉強している。一緒に勉強しませんか』と持ちかけてきた。
さらに女は『勉強するには口座の開設が必要』だとして、口座管理の担当者にLINEで連絡するよう求めてきた。
この段階で田中さんは詐欺だと確信を持ち、口座の開設を拒否した。
すると女の態度は一変したという。
田中さん(仮名):
なんかこれは話がヤバくなってきたなと。(口座開設を)断ったら急に相手が豹変したような感じで、1回で読み切れない文章を送ってきて、これはもう絶対駄目だなと。
田中さんが『今まで送られてきた画像は別人ですよね?』と指摘したところ、返信は完全に途絶えたという。
岩手県内の被害は1億8000万円超
岩手県警生活安全企画課にこのやりとりを見てもらったところ、恋愛感情を利用して金銭をだまし取る“ロマンス詐欺”の手口であると指摘した。
親戚の携帯電話が解約された後、何らかの形でその番号が犯行グループに渡り、LINEアカウントが作成された可能性が高いと分析している。
県警生活安全企画課の佐藤和正特殊詐欺対策係長は「LINEアカウントを勝手に作ったうえで、友だちリストの人に手あたり次第、こういった運命の出会いを装ったメッセージを送るということもあるので(連絡が)知らない人から急に来たら注意してもらえれば」と話す。

県警によると、2026年1月から8月までに県内で確認された“ロマンス詐欺”の被害は31件、被害総額は1億8000万円余りに上っている。
佐藤係長は「うまい話には絶対に裏があると思ってもらえれば。あなたが被害者になる可能性がある。思いとどまってほしい」と強調した。
県警ではSNSで投資を勧誘する詐欺や、警察官を名乗る詐欺など、様々な特殊詐欺の被害が相次いでいるとして、他人事と思わずに警戒するよう呼びかけている。

