中国の王毅外相が先日訪日し、菅総理への表敬、茂木外務大臣との日中外相会談を行った。しかし王毅外相は連日尖閣諸島に関し強硬な発言を行い、友好のムードが高まったとはいえない。中国の対日姿勢、そしてTPPへの参加表明などの外交戦略にはどのような狙いがあるのか。今回の放送ではスタジオに国会議員・識者を招き、日本が中国に対し取るべき姿勢と今後の日中関係について掘り下げた。

王毅外相の尖閣発言で一気に雰囲気が悪くなった

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竹内友佳キャスター:
先日行われた茂木外務大臣と王毅外相との会談では、日中最大の懸案事項のひとつ、尖閣諸島をめぐる問題が取り上げられました。茂木外務大臣が尖閣諸島周辺への中国公船侵入などについて中国側に前向きな行動を強く求めたのに対して、王毅外相は中国の主権を守る、事態を複雑化することを防ぐと反論。王毅外相の話をどのように受け止めますか。

薗浦健太郎 自民党 副幹事長:
話にならんでしょう。あそこは日本の領土、領海。それがはっきりしているところで「お互いに」とは、そもそも話の土台が間違っている。嘘も1万回言えばなんとやら、とならないように、我々は毅然と反論しなければいけない。

反町理キャスター:
東京の夏季・北京の冬季でそれぞれコロナ対策を協力し、両方のオリンピックを成功させようという話。またコロナ禍での渡航制限緩和の話、福島県産の農水産物の話など前向きな話が多くあっても、最後は必ず尖閣諸島の話になる。中国の対日姿勢をどう見ればよいか。

薗浦健太郎 自民党 副幹事長:
アメリカをはじめ多くの国と問題を抱える中国からすると、対日外交では成果を強調したいはず。しかしどんな成果物があっても、尖閣の話が出た瞬間に日本の国民感情の改善は全部パーになるどころか逆に悪化する。これを理解していないのではないか。

興梠一郎 神田外語大学 教授:
「新時代の中国国防」という中国の国防白書にはっきりと尖閣のことも書かれており、パトロールして法に従って国家主権を行使する、とある。王毅外相はその教科書通り喋っている。そこが日本と全くずれている。2006年ごろから日本の実効支配を崩そうという中国の戦略が始まり、現状を変更したのは中国側で、装備もどんどん軍隊並みにしていると日本は認識している。
仲良くしに来たのならば外交官としてもう少し上手い言い方もあったはずだが、王毅外相は一挙に雰囲気を悪くしてしまった。

王毅 中国外相

朱建栄 東洋学園大学 教授:
今回は日本社会に中国の立場も説明し、これから双方の努力で乗り越えていこうというメッセージを発したと思う。
中国の公船が定期的に入るようになったのは、日本による国有化への反応。その後両国間に4項目の合意ができた。今回日本側に言ったのは、第一に、両者ともその合意に戻ろうということ。第二に、今回問題を複雑化したのは中国ではなく、去年5月に領海に入り、中国の公船が追い払った漁船だということ。実際、尖閣/釣魚島周辺の沖は良い漁場だが、領海内は非常に波風が高く漁業に向いていないから、その船は政治的な目的を持って入ってきた。それを王毅外相は言っている。

興梠一郎 神田外語大学 教授:
2010年に中国の漁船が海上保安庁の船にぶつかってきた。あれは漁をやっていたんじゃないんですか。ということは、あの中国の船は何の船なの、となる。

薗浦健太郎 自民党 副幹事長:
共同で平和の海にしましょうと言うが、そもそもここは日本の領海なので、その話に我々が乗っかることはない。

朱建栄 東洋学園大学 教授

朱建栄 東洋学園大学 教授:
1970年代に日中間で何度も実際この話をして、暗黙の了解で棚上げとするに至った。その後棚上げは完全に認めないという姿勢に日本が変わった。中国が変わったのではない。

薗浦健太郎 自民党 副幹事長:
尖閣は古来日本領で、戦前の中国の地図にも日本領として載っている。戦後も平和的に日本が実効支配をしてきたところに、1970年前後に国連があの海域に海底資源が眠っている可能性があると言ったところで、今の朱さんの話が始まる。長い歴史の中でいきなりあそこはうちの領土だと言い始めたのは中国。これが事実だと世界中に知ってもらう。

尖閣発言を発信しない中国

薗浦健太郎 自民党 副幹事長

反町理キャスター:
中国は徹底的に尖閣にこだわっているのに、中国外交部のホームページの日中外相会談の記事には記者発表における王毅外相の尖閣発言が書かれていない。なかったことになっている。これをどう見ればよいか。

薗浦健太郎 自民党 副幹事長:
この発言は、日中関係の改善という成果を明らかに損ねている。とすると、習近平指導部が次の五中全会(中国共産党の全体会議)に向けて準備を進めている現在、国内でナショナリズムに火がついて抑えが利かなくなることを恐れたのかと。

興梠一郎 神田外語大学 教授

興梠一郎 神田外語大学 教授:
中国の外交部の発表は全部経済の話。オリンピック、青年交流、日中韓でFTA(自由貿易協定)をやりましょうとか。尖閣のせの字も出てこない、釣魚島という文字は書いていない。

反町理キャスター:
記者会見の王毅外相の話では、延々経済的な成果を挙げたあと「最後にここも言っておかなくちゃいけないんだけど」と尖閣の話が出てきた。

興梠一郎 神田外語大学 教授:
日中関係には傷がつくわけですが、彼の立場として言わないとまずかったのでは。北京に帰ったとき責められる。言い方も言い訳っぽく聞こえる。推測ですが。

朱建栄 東洋学園大学 教授:
領土問題の係争のことになると絶対にナショナリズムに火がつく。今の中国では、やはり互いにこの問題を善処しようとして、他の共通点の協力を強化しようというスタンス。

TPP検討の狙いは経済的覇権のためか

竹内友佳キャスター:
習近平国家主席は「我々は地域経済の一体化を引き続き促進させ、早期にアジア太平洋の自由貿易圏を構築する必要がある」と述べました。RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の署名に続いて、今度はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加検討の表明です。どんな狙いがあるのでしょう。

興梠一郎 神田外語大学 教授:
経済の問題もありますが、やはり安全保障の観点で、アメリカの同盟国と対話のプラットフォームができる。ただ日本側としてはRCEPとTPPは違います。

竹内友佳キャスター:
TPPの主なルールとして、投資先の国が投資企業に対し技術移転などを要求することの禁止、国有企業に関しては非商業援助により他の締約国の利益に悪影響を及ぼすことの禁止などがあります。

薗浦健太郎 自民党 副幹事長:
中国外務省外交部のホームページを見ると、アジア太平洋地域の協力を共に推進するという文言がある。RCEPやTPPを包括するFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の話があり、今後この主導権を握りたいという意図が見える。
そのうえ、重要産品を自国のサプライチェーンで完結させた次には、中国の人口と生産力で諸外国を引きつけて、中国のサプライチェーンが他国にとってなくてはならないものにしていこうと書いてある。中国は経済協定を結んで他国の中国への経済的な依存を強めていくと宣言しているわけです。

反町理キャスター:
軍事力ではなく経済力による覇権を目指すという理解でよろしいですか。

薗浦健太郎 自民党 副幹事長:
軍事力でも目指し、経済力でも縛って中国の主張を受け入れさせる。いわゆる主権の問題などで、国際舞台において中国側に投票させる。今も世界中でやっている。

朱建栄 東洋学園大学 教授:
習近平主席の表明には私もびっくりした。TPPの高い基準を現時点で中国は満たしておらず、この基準をもって改革を進めていくのでしょう。
中国が覇権を求めていくと見える部分があるかもしれないが、中国から見ればアメリカが中国を切り離し孤立させようとしている。いろんな枠組みに入っていくことで孤立を防ぎたい

竹内友佳キャスター:
中国がTPP参加検討を表明したことに対して、西村経済再生担当大臣は、TPP参加には高水準の貿易自由化が求められる、と指摘したうえで、ルールを満たす用意があるかしっかり見極めを、と賛否を明らかにせず。日本のとるべき対応は。

薗浦健太郎 自民党 副幹事長:
大臣の話の通り。これは交渉するものではなく、入ろうとする国がすでに出来上がっている基準を満たしているかどうかというだけの話。その上で、全加盟国がOKしなければ入れない。現時点で、中国は基準をクリアできません。

興梠一郎 神田外語大学 教授:
国有企業の問題が必ずひっかかる。習近平主席は、国有企業は中国の特色ある社会主義の重要な物質的基礎・政治的基礎であり、これは必ず強く大きくしなければいけないと述べている。TPPに入るならば、自らの路線を否定しなければならなくなる。

BSフジLIVE「プライムニュース」11月25日放送