富山県内の高校で、女子生徒の上履きから「中敷き」だけを狙った窃盗被害が後を絶たない。被害は少なくとも14校・36件にのぼり、なかには接着剤や糸で固定された中敷きを無理やりはぎ取られたケースも確認されている。専門家は「特定の人物を所有・支配したかのような感覚を得ることが目的」と指摘しており、警察が防犯カメラの映像を解析するなどして捜査を進めている。

被害は県西部から富山市へ、14校・36件以上に拡大

被害が確認されているのは、県西部6市と富山市の合わせて14の高校だ。昨年度から県西部の学校で被害が相次ぎ始め、今年度に入ると富山市内の高校でも確認されるようになった。BBTのまとめによると、被害件数は少なくとも36件にのぼる。

なかでも高岡南高校では、今年5月と6月だけで10人ほどの生徒が被害にあった。いずれの生徒も月曜日に登校した際に被害に気付いており、犯行は土日に行われたとみられている。学校が休みの日を狙って侵入し、誰もいない校内で中敷きだけを抜き取るという手口だ。

被害は上履きにとどまらない。体育の授業で使う運動靴の中敷きを盗まれたと話す生徒もおり、「(運動靴は)教室の前とか、廊下とかにかけてある。盗られたのが運動靴の人もいれば、内履きの人もいる」と証言している。
縫い付けられた中敷きも「むしり取られた」
この窃盗事件で際立つのは、犯人の執拗な手口だ。
高岡南高校の上履きは一般の靴と同様に中敷きを簡単に取り外せる構造になっているが、高岡高校の上履きは中敷きが靴に縫い付けられており、道具なしには取り外せない仕様だった。それでも犯人は縫い付けられた中敷きをむしり取っていった。

実際に被害にあった生徒はその惨状をこう語る。

「今年の1学期に(被害にあった)。ぐちゃぐちゃになって中敷きが無くなっていた。手でガリガリとはぎ取っていった感じ。盗られただけでなく、ものを壊された状態。新しく自分でお金を出して買わなければならない。本当に腹が立つ」
この生徒は、所属する部活動で賞を受け、その結果とともに氏名がインターネット上に掲載されていたという。
被害者の多くは「ネットで名前が出ていた生徒」

学校関係者によると、被害にあった生徒には一つの共通点がある。部活動で活躍したり、テレビに出演したりするなどして名前がインターネット上に掲載されていた生徒が多いというのだ。

被害にあった別の生徒も「同じクラスの生徒が(中敷きを)縫い付けられてるのに盗られた。片方だけ」と話している。

被害が広がるなかで、学校内にも緊張が走っている。ある生徒は「先生から、他の人の中敷きが盗まれたらしい、自分の中敷きが盗まれないようにチェックしてと言われた」と明かした。また別の生徒は「自分が(被害に)あっても嫌だし、友達があっても嫌だ」と不安を口にした。

専門家「特定の人物を支配したかのような感覚が目的」
なぜ、中敷きだけが狙われるのか。明星大学心理学部の藤井靖教授はその動機についてこう分析する。

「犯人からすると被害者は一方的に知っている。"ある種の特別な存在"なわけですよね。ネットとか画面を通して一方的に知っている、特定の人物の所有物を自分の手元に置くことで、あたかもその相手を所有したり支配したかのような感覚。それを目的にした犯行だと思う」
さらに、固定されている中敷きをあえて狙う点についても藤井教授は指摘する。

「通常、窃盗というのは時間がかかると発覚リスクが高まるのでそれを嫌がって諦める。だから固定されているその困難を突破してでも手に入れたいという強い欲求とか支配力みたいなものを感じるというのは異質ですね」
特定の人物の所有物にこだわり、リスクを冒してでも手に入れようとする強い執着。専門家の言葉は、この事件の異様さを改めて浮き彫りにしている。
被害は高校だけでなく中学校にも

被害は高校にとどまらず、小矢部市、射水市、南砺市の中学校と高岡市でも同様の被害が確認されている。県全体に広がりを見せており、富山県教育委員会は盗難や不審者に注意するよう各校に呼びかけている。

各学校では、出入口の制限や防犯カメラの増設といった対策を進めるとともに、上履きを家に持って帰るよう生徒に呼びかけている学校もある。多くの学校がすでに警察へ被害届を提出しており、警察は学校の防犯カメラ映像の解析などを通じて捜査を続けている。
学校に安心して通える環境を取り戻すためにも、一刻も早い事件解決が求められている。
(富山テレビ放送)

