静岡市の中心市街地、通称“おまち”で深刻なオフィス不足が続いている。企業が新たな事業拠点を設けようとしても、希望の条件に合致する広い物件が見当たらず、市外への転出や進出断念につながる懸念が高まっている。こうした中、既存のビルを改修して、新たなオフィス空間を生み出す取り組みが始まっている。
広いオフィスがなく企業が進出できない
2025年12月、静岡市の難波市長は会見でこう訴えた。「いま静岡市にほしいのはオフィス。新しいオフィスが供給されていない。それが静岡市の経済活性化の大きな課題となっている」
静岡市葵区の中心市街地では、利便性の高い場所にあるオフィス需要が堅調に推移する一方、供給不足が慢性化している。JR静岡駅前の葵タワーをはじめ、利便性があって広いスペースのあるオフィスはほぼ空きがなく、広いオフィスを求める企業が物件を確保できていない。
静岡市によると「空きオフィス」として市に情報提供があった約70件のうち6割ほどは40坪以下のオフィスだった。企業に好まれる60坪以上の広い空きオフィスは2割ほどにとどまっている。
人口減少に悩む静岡市は、若者の定住を進めるカギとして企業の誘致を進めているが、中心市街地のオフィス不足が障壁となっている。物件の枯渇は企業の事業展開を停滞させるだけでなく、雇用の受け皿が減ることにもつながる。
古いビルを改修して広いオフィス確保へ
静岡市葵区の中心市街地にある呉服町通りは、“おまち”として、県民に親しまれている。その通りに立つのが「静岡呉服町ビル」だ。地上4階建てで、静岡伊勢丹の南側から青葉通りの間のおよそ60mにわたる。1階には飲食店や衣料品店などさまざまな店舗が並んでいるが、2階や3階に何があるのか知らない人も多い。
1958年に完成し、70年近くが経とうとしている呉服町ビルは、レトロな雰囲気が漂うのが特徴だ。ビルの3階にあるのは、学校の教室のようなそれぞれ15坪ほどの6部屋。かつては、全て埋まっていたが、今は商店街組合など2つの団体が利用しているのみ。
静岡呉服町ビル協同組合の中村陽史代表理事は「レトロな雰囲気は若者に評価されているものの、10年以上空いている状態が続いていた」と打ち明けた。静岡市によると、企業に好まれるのは60坪以上の広いオフィスで、15坪では狭すぎるという。
このため、呉服町ビルは2025年6月、組合員からの提案を受けて総工費1億円以上をかけてオフィスフロアの改修計画を打ち出した。壁を全て取り払った上で、1部屋70坪程度の部屋を8部屋つくり、窓から商店街を眺められる開放的なオフィスに改修。外壁も塗り替え、「今どき」のデザインに刷新する。組合で検討を重ね、ようやく2027年1月の完成を目指して工事が始まった。
改修工事がにぎわいをもたらす起爆剤に
ビルのある呉服町通りも空き店舗が増えているという。静岡呉服町ビル協同組合の中村陽史代表理事は「改修工事が起爆剤となって、にぎわいのある商店街になればいい」と期待を寄せた。
静岡市への企業の進出を阻んできたオフィス不足。改修工事が解消の一手として期待されている。
(テレビ静岡)

