すでに払ったコストへのこだわり
もうひとつ有名な実験では、架空の航空機開発を題材にしています。サンクコスト条件では、こう問いかけます。
「総額1000万ドルのレーダー回避機の開発プロジェクトで、その9割、つまり900万ドルをすでに使い終わった。ところがライバル社が、もっと優れたレーダー回避機を市場に出そうとしている。残りの100万ドルを使って完成させますか」。
一方の対照条件では、サンクコストの話を消して、「新しく100万ドルを投資して、ライバル社より劣るレーダー回避機を作りますか」と問います。決めることは「これから100万ドルを使うかどうか」で、まったく同じです。
それなのに、サンクコスト条件では多くの人が「続ける」を選び、対照条件ではほんの一部の人しか投資を選びませんでした。
これから先の同じ判断なのに、過去の出費に触れるだけで、続ける人の割合がおよそ17%から85%へと、5倍以上にはね上がったのです。サンクコスト効果がどれほど強いか、よく伝わる数字です。
才能探しに与える歪み2種類
才能を見つける話に置きかえると、サンクコスト効果は2つの方向から人を苦しめます。
1つ目は 「向いていないかもしれない場所に、必要以上に居続けてしまう」 こと。これまでかけた時間や学費が惜しくて、いろいろなデータが「合っていない」と教えてくれているのに、やめられないパターンです。
2つ目は、その反動として出てくる 「早すぎる撤退」。過去にサンクコストで痛い目にあった人は、新しい挑戦で少しでも違和感を覚えると、「今度こそ早く引き返さないと損する」と、急にハンドルを切ってしまうのです。
どちらも、過去にかけた重みに未来の判断が引きずられて起きることです。

