北海道・札幌を本社に、釧路・函館の3拠点で足場・仮設資材のリース事業を営む早川商事株式会社。SAAPを活用した基幹システムとWebポータルの導入により、受発注・配車・請求に残っていた「人手依存」を一つずつ解消してきました。今回はその歩みと狙いを、代表取締役の山本様と、業務を担う旅家様、加藤様に伺いました。
取材・文:A-ZiPマーケティング担当(2026年7月)
「電話とFAXの朝」から、誰でも回せる現場へ
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かつて早川商事の朝は、大量のFAXから始まっていました。
出社して複合機の前に立つと、注文のFAXが束のように積み上がっている。その一枚一枚を、担当者が基幹システムへ手で打ち込んでいく。
仮設・足場のリースは、ひとつの注文が何百というパーツの組み合わせで成り立つ業態です。品番も数量も膨大で、入力にかかる負担は決して小さくありませんでした。
現在、その景色は大きく変わりました。受発注はWebオーダーへ、配車管理はホワイトボードから画面へ、請求業務はより少ない人数で対応できる体制へ。
売上が伸びても人手を増やさずに業務を回せる会社へと、早川商事は着実に姿を変えてきました。
その背景には、A-ZiPと積み重ねてきた10年以上の伴走開発があります。「機能を入れたら会社が変わる」のではなく、「人がやらなくてよいことを、人がやらないようにする」。その一点を、両社は同じ目線で追いかけてきました。
足場リースという、少し特殊な商売
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早川商事の本業は、足場・仮設資材のリースです。
拠点は、札幌市・釧路市・函館市の道内3拠点です。
建設現場に足場や仮設材を貸し出し、回収し、メンテナンスして、また次の現場へ送り出す。
物を仕入れて売るだけではなく、貸し出し、返却、整備を繰り返す循環型の業務に加え、それにひもづく煩雑な請求の仕組みが、この事業の難しさです。
「ただ物を仕入れて売るだけじゃなくて、レンタルだったり、請求の仕組みがすごく煩雑なんですよね」
と山本様は言います。
ひとつの注文に数百のパーツがぶら下がり、契約の形も、その場で金額が決まる小口のものから、工事単位で受託する大型のものまで幅広い。
この「業態の特殊さ」こそが、のちにパートナー選びの決め手にもなっていきます。
早川商事がSAAPで構築・運用しているのは、仮設資材リースの基幹システムと得意先向けのWebポータル、そして配車・運行管理の仕組みです。
「業務で使うシステムは、ほぼすべて作っていただいています」
山本様はそう語ります。
束になったFAXと、消えない伝票
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システム化が進む前、早川商事の現場は徹底してアナログでした。
「システムで管理する前は、大量のFAXが送られてきていました。朝、出社すると、複合機に注文のFAXが束のように届いている。そこから一日が始まるんです。ほかにも、口頭での電話注文や、電話による配車リクエストがありました。現在もゼロになったわけではありませんが、そこにWebオーダーが加わり、徐々に移行が進んでいます」(山本様)
最大の負担は、二重入力でした。
FAXや電話、紙や口頭で受けた注文を、あらためて基幹システムへ「出庫指示」として打ち込み直す。
件数が少なければ数分で済むかもしれません。
しかし、早川商事の注文は、ひとつあたり何百というパーツの組み合わせ。
品番も数量も、業態的に桁違いに多いのです。
「慣れているスタッフでも、注文内容が多い場合は1件あたり10〜15分かかります。1人あたり月200件弱を入力していましたから、すべてを合計すると相当な時間になります。
『9』に見えたけど実は『7』だった、『1』に見えたけど『7』だった、というような間違いも昔はちょこちょこありました。口頭の注文だと、お客様とうちのフロントスタッフで『言った・言わない』の問題も起きる」
山本様は、当時をそう振り返ります。
運行管理も同じでした。運行予定を紙に書き、ホワイトボードにマグネットで貼りつける。
「あの伝票がどこに行った」
「こっちにある・ない」
アナログゆえの属人的な仕事が、日々の現場を消耗させていました。
そんな状況の転機は、思いがけないところから訪れました。
「一番最初にご相談したのは、Microsoftのパートナー企業紹介の記事を見たときでした。配車の運行管理システムの紹介があって、『すごく面白いアプリを開発されているな』と。そのホームページの問い合わせフォームから連絡したのが始まりです」(山本様)
積極的にシステム化を進めていた時期だったわけではありません。
「同じ基幹システムを19年も使い倒していたくらいで、あまり予算もかけてきませんでした」
と山本様は振り返ります。
それでも、偶然目にした一本の記事が会社を動かしました。
「本当に偶然目にした紹介記事がきっかけなので、ああいう記事も意外と大事なのだと思いました」
遠く離れた札幌と関西。
まだ一度も取引のない相手に「札幌まで来てよ」とも言いづらい。
そこで山本様が口にしたのは、少し愉快なひと言でした。
「『この運行ソフトを買ったら来てくれるの? もう買うから来てよ』と伝えました」
こうして配車・運行管理システムの導入が先行しました。
実際に使って「やはり便利だ」と実感したことをきっかけに、取り組みはSAAPによる基幹システムの構築へと一気に広がっていきました。
SAAP導入の決め手と、現場に根付くまでの苦悩
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早川商事がSAAPとA-ZiPを選んだ理由は、価格や機能の派手さではありませんでした。
1つは、A-ZiPに仮設・レンタル業向けシステムの開発実績があったことです。大阪の同業企業向けに開発したシステムを土台に、
「これを早川商事向けに改良していきませんか」
という提案がありました。
業態を理解した仕組みをベースに、早川商事の業務に合わせてカスタマイズできる点が、SAAP導入の決め手になりました。
そしてもうひとつが、「言葉が通じる」ことでした。
「当社は少し特殊な業態ですが、業界の言葉がそのままSEの方に通じるんです。商売のロジックを一から覚えてもらう必要がないので、本当に助かりました。当然、開発期間も短くなり、スピードも上がります」(山本様)
さらに山本様が繰り返し口にしたのが、
「相談すると、多くの場合、実現方法を一緒に考えてくれる」
という点でした。
A-ZiPに
「こういうものは作れますか」
と尋ねると、A-ZiPは
「おそらく作れます」
と返ってくる。
建設業には物理的に実現できることと、できないことがありますが、システムに関する相談では、多くの場合、実現に向けた方法を一緒に考えてもらえたといいます。
そのため、依頼をためらうことなく、アイデアが浮かぶたびに相談できたと山本様は振り返ります。
このやり取りが成立した背景には、早川商事側の「システムに強い体質」もありました。
相談は「AIでパッと何とかして」といった曖昧なものではなく、山本様自身が仕様書に近い企画書、いわば「逆プレゼン」の資料を用意して持ち込むこともありました。これに対してA-ZiPは、持ち込まれた意図を的確に捉え、プロの視点からさらに現実的な運用へとブラッシュアップしていきました。
運用を論理的に整理し、人の頑張りだけに頼るのではなく、仕組みで課題を解こうとする文化が早川商事にはあります。
だからこそA-ZiPは、単なる「機能」ではなく「運用」を見てSAAPを設計でき、両社の歩みは長く続くものになりました。
もっとも、システムを作ればすぐに全部が変わる、というわけではありません。
「配車も、最初はすぐには切り替わりませんでした。新旧どちらも並行しないといけないので、入力が大変な時期もありました」(山本様)
フロントのスタッフのように、デモの段階から積極的に触ってくれたメンバーは、導入後の問題点に気づくのも早い。
一方で、機械が得意でないスタッフや、外回り中心でデモに参加しづらい営業は、いきなり本番に入ると戸惑いも大きい。
デモへの参加度合いによって、運用が立ち上がるスピードに違いが出ることを実感したといいます。
対策はシンプルでした。
変更点を、言葉ではなく直感的に分かる資料に噛み砕いて事前に配る。
「営業系の外回りは言葉で説明しても伝わりにくいので、見て分かる資料を作って周知しています」
派手な仕掛けではなく、こうした地道な工夫の積み重ねが、SAAPを現場に根付かせていきました。
数字が語る、変化のかたち
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積み重ねの成果は、いくつもの「数字」と「手応え」に表れています。
■ 請求:売上が約2倍になっても、担当は減った
もっとも象徴的なのが、請求業務です。
「SAAPの導入前は、請求書の発行担当者が多いときで6人ほどいました。現在は4人で対応しています。その間に売上は約2倍になっているため、少ない人数でより多くの請求業務に対応できるようになりました。大幅な省力化につながっています」(山本様)
あわせてWeb請求書も早期に導入し、紙の請求書を封筒に入れて郵送する運用は、すでに廃止しています。
「人手がかからない会社になったな、という印象です」
現場の業務を担う加藤様は、「仮締め」の機能を挙げます。
「営業から『仮締めをしたい』という依頼がよく来ます。以前は私たち業務担当が締め処理を行い、請求内容を営業へ伝えていました。現在はSAAPに仮締め機能が追加され、営業が自分で確認できるようになったため、大幅な時間短縮につながりました」
と加藤様は話します。
■ 配車:可視化が、車の回転率を押し上げた
配車では、「見えるようになったこと」が大きな変化を生みました。
かつては配車係からの電話連絡だけが頼りで、どの車両が手配済みなのか、何件の依頼が入っているのかを、本社側で把握することが困難でした。
現在は、SAAPの画面上で配車状況を一覧できるようになり、営業担当者も外出先からスマートフォンで自分の運行予定をリアルタイムに確認できます。
「自社でチャーター車を抱えていますが、その回転率はここ数年で大きく向上しています。配車状況が可視化され、配車係も予定を組みやすくなりました。チャーター車の売上回転率は、以前と比べて約1.5倍になったと聞いています」(山本様)
配車状況の可視化により、割り当てられていない車両を見つけやすくなり、限られた車両をより効率的に運用できるようになりました。
■ 停電の夜の実体験
一方で、クラウドへの移行には、当初ためらいもありました。
「外にデータを出してしまうこと自体に、最初は抵抗感がありました」
その不安を、ある出来事が塗り替えます。2018年9月、北海道胆振東部地震に伴って発生した大規模停電です。
「地震のあった日、道路が隆起するくらいの状況で、現場がどうなっているかも分からない。そんな中で、携帯で動く配車システムだけが動いていて、今日トラックが何をやる予定なのかが分かったんです。営業が一斉に現場へ電話して『本当に行っていいんですか』と確認できた。あれがなかったら、本当にやばかった」(山本様)
停電のさなかでもスマートフォンから運行予定を確認できた経験は、「クラウド上にデータを持つこと」への見方を変える出来事になりました。
■ BI:海外からも経営状況を把握
経営数字の見える化も進みました。以前は毎月、締めデータをExcelで集約し、経営陣向けの資料に加工してメールで送っていました。
「それがすごく嫌だよね、という話になって、システムの中に閉じ込められないか、というのがBIの始まりだったんです」
現在はリアルタイムで数字が表示され、海外に滞在している会長も頻繁にBIを確認するほど、経営判断に欠かせない仕組みになっています。
「誰の現場で何が起きて、それが何本で、値引きが何%か。以前はそんなこと、シンプルにできなかった。十数年蓄積してきたデータがあるからこそ、それを最大限に生かせるようになったのは本当に良かった」
と山本様は語ります。
「すべてをWeb」にはしない――人を活かすDXと今後の展望
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一方、得意先向けのWebオーダーについて、山本様は冷静に捉えています。
運用開始から2年目を迎えた2026年時点で、全注文に占めるWebオーダーの比率は一桁台です。今期は、その比率を倍にすることを目標に、利用促進を進めています。
ただし、「すべてをWebに」とは考えていません。
同業企業の社長から
「人手が足りないから、注文をすべてWebに移行しよう。一緒に取り組みませんか」
と誘われたとき、山本様は「嫌だ」と答えたそうです。
「すべてがWebになってしまうと、当社のアイデンティティはどこにあるのか、という話になります。結局は在庫とデリバリーの勝負になり、人が介在しなくなる。しかし、最後にトラブルを解決するのは営業担当者です。当社はその道をたどりません。Webオーダーは、何かあったときに備える一つの選択肢として位置づけています」(山本様)
「機能を入れたら会社が変わる」のではない。
「人を置き換える」のでもない。人がやらなくていいことを効率化し、それを使う主役はあくまで人であり続ける。
この考え方は、早川商事とA-ZiPが当初から共有してきたものでした。
これから建設業では、人口減少が一段と進みます。足場・仮設など、建設現場を支える領域の担い手を確保することは、ますます難しくなります。
だからこそ、早川商事が見据える目標は明快です。
「目標は、5〜10年のうちに、現在の売上を維持したまま、今の半分程度の人数でも業務を回せる会社にすることです。人員を削減するという意味ではなく、新たな採用を加速しなくても回る仕組みを社内に整えたい、ということです。人がやらなくてよいことは、人がやらない。これを徹底したいと考えています」(山本様)
その先では、設計図のPDFを読み込み、見積もりを自動作成する仕組みなど、新たな挑戦も始まっています。蓄積してきた十数年分の業務データは、AI時代に向けたかけがえのない土台でもあります。
山本様が掲げるキャッチフレーズは、
「誰でも回る現場にしよう」
「私自身、仕事が属人化し、身動きが取れなくなった経験があるからこそ、これではいけないと思うんです。誰が対応しても一定水準で現場が回る。それが、これからの時代に最も大切なことだと考えています」
同じ悩みを持つ会社へ
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最後に、同じ業界で同じような課題を抱える企業へ、メッセージをいただきました。
「仮設屋の取引で一番難しいのは、数量の注文を正しく入れることなんです。そこをうちはシステムとして実装した。注文をいただいて、出すところまでを、いかに誰でもできるようにするか。まずはそこだと思っています。仕組みで、レンタルのいろんな業務を『日本一だね』と言われるようにしたい。それが目標です」(山本様)
派手なDXではなく、目の前の業務を一つずつ「誰でも回る」形に変えていくこと。北海道の足場リース企業が続ける静かな挑戦は、同じ悩みを抱える多くの現場に、改善へのヒントを示しています。
本事例で導入した「SAAP」について
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早川商事では、A-ZiPが提供するローコード業務システム開発プラットフォーム「SAAP(サープ)」を導入し、仮設資材リースの基幹システムと得意先向けWebポータルを構築・運用しています。標準化された土台を活用しながら、受発注・配車・請求など、早川商事固有の業務に合わせて継続的に機能を改善してきました。
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