いま都市部で目撃情報が相次いでいるのが、かわいい見た目に反して”害獣”に指定されたアライグマです。
取材をすすめると、その姿は大阪の玄関口・新大阪駅のすぐ近くでも確認されました。
噛まれると致死率100%ともいわれる狂犬病などの感染症リスク、全国でおよそ7億円にのぼる農作物被害、そして神戸では高校生までもが捕獲活動に乗り出すという異例の事態。
関西テレビ「newsランナー」の取材班が、都市部に”進撃”するアライグマの脅威と実態を徹底取材しました。
■テレビアニメで人気に そして“害獣”へ
しましまのシッポに、目の周りの特徴的な黒い模様。テレビアニメ「ラスカル」でおなじみのアライグマは、水辺で何かを洗っているように見える仕草で知られています。
【神戸どうぶつ王国飼育スタッフ 神代哲さん】「目が少し悪い代わりに、手先がすごく発達していて、手先で物を探ることで何かを確かめる。洗っているように見えたということでアライグマと言われ出した」
来園者からは「アライグマ大好き」「かわいい」という声が相次ぎ、その愛くるしい姿は多くの人を魅了します。
しかし飼育スタッフの神代さんは同時に、「人に対してもかみついたり、わっと襲ったりすることもあると聞いています。日本では”特定外来生物”として指定されています」と語ります。
■かわいい見た目とは裏腹に性格は凶暴 さらに致死率100%の狂犬病のリスクも
アライグマが日本に大量に持ち込まれたのは、1977年に放送された人気アニメがきっかけです。北米からペットとして輸入されましたが。
しかしかわいい見た目とは裏腹に性格は凶暴で、扱いかねた飼い主が野外に捨てるケースが急増。やがて野生化し、2005年には特定外来生物に指定されました。
噛まれた被害者は「この子の足にかみつきながら、私の足にもかんで、あちこちかみつく」と証言しています。
狂犬病など致死率100%ともいわれる感染症のリスクを伴うだけでなく、農作物への被害も深刻です。
その被害額はおととし全国でおよそ7億円と過去最悪を更新し、およそ20年間で20倍近くにまで膨れ上がっています。
■高校生も捕獲に参戦 神戸「バスターズ」結成
こうした状況を受け、神戸市ではことし7月、民間の力でアライグマの捕獲を行う「KOBEアライグマバスターズ」が結成されました。
参加したのは講習などを受けた20団体。そのうちの一つが、神戸高校の部活動「自然科学研究会」です。数年前からアライグマが校内に出没し、フンを撒き散らすなどの被害が続いていたといいます。
【神戸高校・自然科学研究会・生物班リーダー 播さん】「ここで先週、捕まえました。放課後、授業が終わって見にきたところ、わなが閉まっていて中にアライグマがいました」
7月にもすでに1頭を捕獲していて、今後も生態調査を兼ねて活動を続けます。
副リーダーの石川さんは「生徒たちの安全を守るという面でも、この活動は絶対に大切なものだと思っています」と力を込めました。
■アライグマとの知恵比べ 手先が器用でおりを開けて逃走
一方で、捕獲は一筋縄ではいきません。神戸市北区の道場町ではブドウなどが食べられる被害が発生。
わなを仕掛けていますが、バスターズの小池将太さんは「手先が器用なので、(扉を)開けて逃げて行くことが多々ある」と明かします。
一度捕まえたアライグマが、目を離した隙に自らおりを開けて逃走したというのです。
さらにおりの前に設置したカメラには、夜間にエサだけが持ち出され、肝心のアライグマはわなにかかっていない様子が記録されていました。
バスターズの梶原ひろみさんは「本当にかからない、エサだけが…」と頭を抱えます。
【KOBEアライグマバスターズ道場チーム 小池将太さん】「『アライグマとの知恵比べ』と地元の猟師さんは言っていて、どっちが上回るかで捕れる・捕れないが決まると教えられています」
■なぜここまで増えたのか「一番は天敵がいないこと」
そもそも、なぜアライグマはここまで増えてしまったのでしょうか。
大阪府立生物多様性センターの石塚譲主任研究員は「一番は天敵がいないことです。例えば北米であればコヨーテとかが天敵だったりするが、日本にはコヨーテいない。クマも大きいけどアライグマを襲ってという話は聞かない」と説明します。
天敵のいない環境で、アライグマの個体数は増加の一途をたどっています。
■新大阪駅から徒歩5分 住宅街にも6頭が出没
大阪府内ではここ20年で捕獲数が急増し、その捕獲場所はどんどん大阪市の方へと近づいています。去年、大阪市内では目撃情報などが397件寄せられました。
取材班が向かったのは、新大阪駅からすぐ近くの東淀川区の住宅街。2週間前にアライグマを目撃したという男性は、「手前に3頭いて、僕の足元に来て、カメラを向けるともう3頭いた」と証言します。
【アライグマを目撃した人】「人間を怖がらない。ここ新大阪駅から徒歩5〜6分ですよ。新幹線も止まる場所ですよ。そんなところにアライグマいるんだ。大阪市内で40年ぐらい住んでいるけど、初めて見ましたアライグマ」
近くに住む別の男性は、家庭菜園で育てていたブドウをアライグマに食べられました。
【育てたブドウが食べられた人】「30房ぐらいあった。実だけ取られて」。
3年前にも同様の被害を受けており、「ことし一番(被害が)ひどい」と対策に頭を悩ませています。
■大阪市此花区でも被害が続出 取材班が遭遇
取材を進める中で新たな情報が入りました。大阪市此花区でもアライグマが複数目撃されているというのです。
取材班が住民に聞き込みをすると、「メダカを食べられた。全部倒れてぐちゃぐちゃになってました。10〜20匹は食べられたと思います」「塀に2頭、下にも2、3頭おった」など、被害が相次いでいることが判明しました。
別の住民の防犯カメラには、アライグマのような生き物がはっきりと映っていました。さらに「結構大きな丸っとしたアライグマが4頭。きのうの夕方4時ぐらい」という前日の目撃情報も。
取材班は2日にわたり合計8時間の捜索を実施。ネコと見間違える場面もありながら、ついに暗がりの中で動く生き物を発見しました。
大阪府立生物多様性センターの石塚主任研究員に動画を確認してもらうと、「アライグマですね。顔がとがっている、背筋が曲がっているとか、手前にネコがいると思うんですが、手の付き方が違う」と断言しました。
■もし街中で遭遇したら
都市部にまさに“進撃”する勢いで迫るアライグマ。もし街中で遭遇した場合、どう対処すべきなのか。
石塚主任研究員は「知らんぷりするのが一番。『見かけた』、『あそこの空き家にいそう』とか、一報は(自治体に)入れていただきたい」とアドバイスします。
エサをやることについては「それはもってのほか。人がエサを持っていると認識されると、どういうことが起こるか分からない。絶対にエサやりはやめていただきたい」と強く警告しました。
(関西テレビ「newsランナー」2026年9月9日放送)
