日本で暮らす外国人が増える中、刑務所に収容される外国人の割合は増加傾向にある。
外国人受刑者が集中する府中刑務所
今回、「4人に1人が外国人だ」という東京・府中刑務所の内部にFNNのカメラが入った。調理場を取材すると、多様化する食事メニューと職員たちの試行錯誤が見えてきた。

慣れた手つきでミシンを使うのは、外国人受刑者。大鍋で食事を作るのも、外国人だ。

ここは、受刑者の「4人に1人が外国人」の東京・府中刑務所。多国籍化が進む“塀の中”を取材すると、外国人受刑者の対応に追われる職員たちの奮闘が見えてきた。

午前7時半、刑務所の1日が始まる。

刑務官:
進め!

刑務官に先導され刑務作業に向かう受刑者が歩いてくる。
全国の刑務所の中でも最大規模の敷地を持つ東京・府中刑務所。1735人が収容されている。

外国人受刑者の人数は、日本の刑務所で最多。61の国と地域から合わせて467人がいて、全受刑者の4人に1人を占めている。

通訳職員:
なぜ犯罪をしてしまったのか?
コカイン密輸で懲役6年・ブラジル人受刑者:
お金が必要だったのでやりました。

全国の刑務所など74カ所のうち、外国人向けの専門部署(国際対策室)があるのは、ここ府中刑務所を入れて5カ所しかない。
そのため、「4人に1人」が外国人受刑者という高い割合になっている。
外国人の特性踏まえた処遇の難しさ
小野田外国人共生大臣:
(府中刑務所では)受刑者の約4人に1人が外国人という状況の中で、言語や文化、風習の違いから受刑者の特性を踏まえた処遇の難しさなど、貴重な現場の声をお伺いし、外国人犯罪への厳格な対応の必要性を再認識した。

そんな「外国人受刑者の特性を踏まえた処遇」の1つが、外国人受刑者専用の居室棟だ。
小溝茜里記者:
こちらが外国人受刑者専用の居室棟です。文化の違いでトラブルが起こりやすいということで、一人一人分けられて部屋が設けられていますね。

約200人分の個室が設けられた外国人専用の収容施設。

一般的に受刑者が入るのは相部屋で「畳に敷布団」。一方、外国人受刑者棟は原則個室で「フローリングにベッド」。

過去に複数の外国人が逃走を計画し実行したことから、原則個室となったという。

また一部の部屋の前には、見慣れない「豚禁食」という文字が貼られていた。「豚禁食」とは、宗教上の理由などで豚肉を食べない人のために作られる食事のことだ。

受刑者それぞれにあわせたメニューを提供する調理場に記者が向かうと…
宗教上の禁食に対応した別メニューも
小溝茜里記者:
こちらが炊場、調理場です。

ここでは、模範的な受刑者ら36人が、日本人・外国人あわせて1700人分の食事を作っていた。
この日、大鍋で作られていた夕食のメインのおかずは「豚肉のスタミナ焼き」。

「豚禁食」の受刑者のため、包丁などの刃物も厳重に管理されているほか、受刑者が直接飲むのを防ぐため、料理酒やみりんは一切使用しない。

一方、もう一つの鍋では別メニューを調理中。
小溝茜里記者:
これお肉使っていないんですよね。良い香りがしますね。

食材は豚肉ではなく、「高野豆腐」だ。先ほど部屋の前に貼られていた「豚禁食」の受刑者のためのメニューだ。
小溝茜里記者:
「豚禁」とあります。豚肉禁止のフタがずらっと並んでいますね。

コカイン密輸で懲役6年・ブラジル人受刑者:
宗教的なことで食べられません。豚肉だけ食べられない。

この日は、約40人の受刑者に「豚禁食」が提供された。
覚醒剤使用で懲役3年2カ月・炊場担当の日本人受刑者:
今日は特に『豚禁』のメニューなので、けっこう(作業)量が多い。ある意味イベントみたいな感じで大変だなと。

他にもベジタリアン食やコメをパンに変えるなど、宗教や食文化に合わせたメニューが提供されている。
刑務所での食事について、外国人受刑者はどう思っているのだろうか?
覚醒剤密輸で懲役12年・イラン人受刑者:
(日本食はどう?)食事?大丈夫大丈夫、ご飯大丈夫。ご飯作る人大変でしょ、(外国人用の)別々。おいしいご飯あれば私すごくうれしい。

覚醒剤密輸で懲役9年・中国人受刑者:
(食生活)けっこう違う。最初慣れない。(日本食)香港にいっぱいない、慣れない。納豆はないね。
外国人にも食べやすい日本食を検討
こうした受刑者の食事のメニューを決める重要な場が、毎月開かれる「献立会議」だ。

今回、FNNのカメラが初めてこの会議を取材。管理栄養士が作った献立表をもとに、細かな確認が行われていた。
府中刑務所・用度課長:
それでは8月9月の献立について栄養士の方から説明をお願いいたします。

府中刑務所・第四区区長:
ゴーヤーは切ってあるんですか?
府中刑務所・用度課長補佐:
苦いとかの反応はあまりない?
食材ごとに、外国人などの受刑者が食べやすいかなど話し合っているほか、食事についてのアンケートを外国人向けに28カ国語で用意するなど、試行錯誤を重ねている。

一方、これら受刑者の食費はすべて税金。1人あたりの食費は、1日3食で592.22円と定められている。

しかし物価高の影響で、限られた予算でのやりくりは大変だという。
府中刑務所・渡邊正彦用度課長:
肉類が特に、昨年度より1.5倍くらいに上がっているので、予算はかなり逼迫(ひっぱく)しています。(外国人用の食事など)基本的には全ての要望に応えられればいいんですけど、そこはやはり日本の刑務所であるので、日本食を食べてもらいたいと思います。全て聞いていると、とてもじゃないけど間に合わないので、我々が。

また、過去にはフルーツの大きさや調理方法が原因で受刑者同士のトラブルに発展。トラブルを未然に防ぐためにも、食事には細心の注意が払われている。

府中刑務所・渡邊正彦用度課長:
外国人だけ好き勝手やっていたら、今の日本人の被収容者が不満に思うところもあると思うので。気持ちが安定すればいいなとか、衆情(感情)が落ち着いてくれればいいなという思いで献立は作っています。
増加傾向にある外国人受刑者にどう向き合うのか?
刑務所はいま、新たな時代の課題に直面している。
(イット!9月8日放送より)

