10月17日、18日の2日間、東京国際フォーラムで開催されているマーケティングの国際カンファレンス「アドテック東京 2017」。1日目の最終セッションはほぼ日の糸井重里氏とJR九州の唐池恒二会長による対談。「楽しいがすべてを超える」というテーマで、それぞれの「メディアの作り方」を語り合った。

糸井重里氏(左)、唐池恒二氏(右)
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メディアは作るもの

九州を走る豪華列車「ななつ星」。ある番組の企画で同乗し、糸井氏が「やけに板についた(ななつ星の)説明だなあ」と思ったその人が、JR九州の唐池会長だったと言う。

糸井氏は「メディアと言えば、いわゆる3大メディア、5大メディア、なんて言われたりしますが、メディアっていうものは、僕は、作るものじゃないかと思うんです」と切り出し、ほぼ日が主催する「生活のたのしみ展」の事例を紹介した。

糸井:
「これは、展覧会という形をした臨時の街づくり。最初は雑貨を集めようと思い始まったが、モノだけでなく、生活の中で"たのしみ"と呼ばれるものはみんなここに参加すればいい、と。」「もともと無かった所に"メディア"を作ったんです。するとそこにコンテンツが集まってくる。」

たとえば、普段は登山・アウトドア用品ブランドの「モンベル」は、「小さな折りたたみ傘」だけを集めたお店を出店。そのサイズ・軽さ・丈夫さは生活の"たのしみ"としてお客様にも喜ばれた。

「この媒体だから、こういう事ができます」と編集し直してもってくる。その場所をメディアと言ってもいいし、プラットフォームと呼んでもいい。

糸井氏は「いつかこの展覧会に働くことのシンボル「軽トラック」が飾られるのを夢見ています。ポートランドの小商いのような」と付け加え「これがメディアを作っていく時の、僕のやり方です。」と話した。

「ななつ星」は、走る「生活」

続いて会場では、九州を走る豪華寝台列車「ななつ星」の映像が紹介された。JR九州の唐池会長はプライベートで湯布院の有名旅館を訪れた際、そこでは「非日常」では無く「こんな日常があったらいいな」が提供されていることに気づいた。「ななつ星」もまさにそうだと言う。

唐池:
「ななつ星は走る生活。走る街。」「江戸時代の長屋に近いんじゃないかと。」

糸井:
「夢の国に行きませんか?という楽しみもあるとは思うんですけど、日々のハレとケで言うと、ケの部分が一番嬉しいものでありますようにって言うのが、生活の一番たどり着きたい場所ですよね。」

糸井:
「1981年だと思うんですけど、西武百貨店との打ち合わせに、今は亡くなった堤清二さん(セゾングループ創業者)がいつも来てくれて、ごはんをご馳走してくれるんです。それが、普通に美味しく炊いたごはんと、普通のみそ汁と、普通の干物と。気の利いた旅館の朝ごはんみたいなもので。」

唐池:
「究極の楽しみ、喜びは、生活にあるんじゃないかと思いますよね。」

手間をかければ感動してもらえる?


糸井氏は「ななつ星」を「本来、離れた場所に何かを運ぶ役割の列車が、3日間かけて元来た場所に戻ってくるだけ。それはメディアになっている。」と話した。そして、無駄なものを何でも自動化しようとする今の時代に、手間をかけた所に人が集まってきていると指摘する。



最後に会場からの質問。

ーー「手間をかければ必ず感動してもらえる」という訳ではないと思うのですが、そこにある差分、秘密を教えてください。

糸井:
「僕は、わりと単純に考えるのですが、珍しさが無いものは、人はやっぱり通り過ぎちゃいます。手間をかけない時代なので、手間をかける事が、まず珍しいんですよ。で、「なんでだろう?」って思わせる。そして、そのまま真面目にやり続けてると「なんでだろう?」から、もっと近づいて来るんです。それで「あぁなるほどね」という共感が生まれる。珍しさと共感が両立した時には(感動が)成立する事が、たくさんありますね。」