仙台市出身のフィギュアスケーター、佐藤駿と千葉百音。ミラノ・コルティナオリンピックで日本中を沸かせた2人が、初めて対談の場を設けた。団体で銀、男子シングルで銅メダルを獲得した佐藤と、女子シングルで4位入賞を果たした千葉。その対談は、競技の話だけにとどまらなかった。
小学生から知っている、という関係性
2人の出会いは、小学校低学年のころにさかのぼる。同じ宮城のリンクで練習を積んできた、いわば「同じ氷の上で育った」仲間だ。2人は互いの印象をこう語る。
佐藤駿
「昔からずっと本当にもうスケート一筋というか、練習熱心で朝から晩まで練習しているイメージがあって。ノービスの頃から、ジャンプがすごく上手で自主練習の鬼みたいな感じで黙々とやっていたのが凄い印象に残っています」
千葉百音
「ちっちゃい頃からずっと性格とか人柄とか全然、いい意味で変わってないなって思いますし。駿くんがいると場が和む感じがするので、結構和みキャラって感じです」
佐藤駿
「嬉しいです」
並んで話すと、2人の関係性が自然と浮かんでくる。互いをよく知っているからこそ滲み出る、飾らない言葉。初対談というのが意外に思えるほど、普段は「競技仲間」として当たり前のように影響し合っているということだろう。
仙台人ならではの地元トーク

対談中盤、質問箱から引いたテーマは「宮城に帰ってきたらすること&よく行くお店」。ここから2人のトークは一気に熱を帯びた。
千葉百音
「近所のスーパーとかにお刺身とか買いに行って、すごくおいしいので、海鮮の食べ物が。必ずお刺身を食べますし。よく行くお店でいうと、七北田のパン屋さんがあって。大納言の小豆とかがたくさん詰まったパンがあって、それがすごいお気に入りで」
佐藤駿
「実家の近くに、よく行っていた“つかさ屋”っていうスーパーがあるんですけど、そこが結構お気に入りで」
千葉百音
「私もつかさ屋とか、タピオの(笑)。タピオよく行きます」(※つかさ屋 泉パークタウンタピオ店は2026年6月30日に閉店)

佐藤駿
「あとは喜久水庵の喜久福が好きなので、今日も買って帰ろうかなと思っています。抹茶が好きなので」
千葉百音
「私、喜久福食べたことない」
佐藤駿
「え!?もったいない」
オリンピックメダリストとして世界を飛び回る2人も、仙台に帰れば普通の若者だ。地元のスーパー、地元のパン屋、地元の銘菓。そういうものに帰属感を持つ感覚は、スケートの技術とはまったく別のところにある。
フィギュア以外の2人の“個性”

次の質問は、フィギュア以外の得意なこと。
佐藤駿
「フィギュアの男子みんなでゲームとかをすることが多いんですけど、自分だけめっちゃハマっちゃうっていう。みんなはもうブーム終わっている頃に、自分がすごいブームになっているっていう。1度ハマったら止まらないっていうか」
千葉百音
「指先使うような刺繍とか結構得意というか、没頂してずっとやっちゃうので。楽しかったのはピアス作りです。試合とかで着けるってなると、ちょっと耳に負担がかかっちゃって着けるのを断念したんですけど。でもすごく楽しかったです。かわいく作れましたし」
何かにのめり込む佐藤と、細かい手仕事に没頭する千葉。どちらも「一度始めたら徹底的に」という共通の気質が透けて見える。それは、ひたむきに練習に打ち込んできた、2人のスケーターとしての姿勢と、根っこでつながっているのかもしれない。
夢舞台の重さと、楽しむ覚悟

対談後半、話題はオリンピックへと移った。
佐藤駿
「会場に入った時から、オリンピックならではの重圧というか、そういったものを感じてはいたんですけど、このオリンピックを最大限楽しむというふうな目標を掲げていたので。団体戦があったからこそのメダルだったのかなと思います」
千葉百音
「将来の夢に掲げてたオリンピックの舞台で滑れているっていうのに、すごく嬉しさを感じながら滑れてましたし。結果としてはメダルに一歩届かなかったっていう悔しさも残ったんですけど、それも全部ひっくるめて、すごく有意義な試合だったなと思います」

互いの演技を客席から見ていた2人は、その時何を感じていたのか。
佐藤駿
「(女子の)ショートプログラムは練習拠点にいてテレビでしか見ることができなかったんですけど、フリーは現地で応援できました。見ていて胸が熱くなりましたし、特に日本の女子の3選手とも最終グループで自分のベストな演技をしていて、本当にすごいなと改めて感動しました」
千葉百音
「(男子フリーの会場は)ジャンプが決まるたびの歓声とかが地響きのように凄くて。(佐藤選手の)火の鳥と言えば、ノーミスの火の鳥しか記憶に残ってないぐらい素晴らしい完成度だったので、団体戦のフリーも個人戦のフリーも両方すごく感動しました」
佐藤駿
「ありがとうございます。嬉しいです」
次の氷上へ

新シーズンに向けた目標を聞くと、2人はそれぞれ迷いなく答えた。
佐藤駿
「引っ張っていかなければならない立場なのは自分でも分かっていますし、先輩方からたくさん刺激をもらっていた分、やっぱりそういった選手になりたいというふうな思いが今ものすごく強い。全日本選手権で優勝することは目標として頑張っていきたいと思っています」

千葉百音
「女子は本当にさらにトップレベルの選手がたくさんシニアに上がって、さらに熾烈な戦いになると思うので。トップで戦える実力をさらにさらに上を目指して身につけていかないといけないなというふうに強く感じているので、しっかり自分のやるべきことを試合で一つ一つ発揮していけたらと思います」
2人の言葉は、オリンピックを経てさらに先を見据えていた。
同じリンクで育ち、同じ夢舞台に立ち、そして同じ方向へ歩き続ける2人。その関係は、ライバルであり、戦友であり、仙台という土地が結んだ縁でもある。次の氷上で2人が見せる演技を、楽しみに待ちたい。

