熊本地震から1カ月がたとうとしています。真夏に起こった今回の震災では、多くの人が酷暑の環境下での避難生活を余儀なくされています。避難している人の健康を害さないため、どのように避難所を整備していくべきか調査しました。
◆冷房なしの体育館は“蒸し風呂”
災害の際、地区で最初に開く指定避難所になっている、福井市の松本小学校。
「うわー暑いですねー…」
松本小学校の体育館を訪れたのは、防災士の飛田幸平さんです。
8月中旬のこの日の福井市の気温は、午前11時の時点で30度。冷房が効いていない体育館の中は、まるで蒸し風呂です。
「天井からの輻射(ふくしゃ)熱、壁からの熱があり、風通しも悪くて熱がこもる」と、飛田さんは真夏の体育館の状況を説明します。
体育館の冷房を付けると、10分程度で涼しくなってきました。
「25度になったので、さっきとは全然違う。これなら過ごしやすいですね」(飛田さん)
◆避難所となる体育館への空調整備率、福井は7.7%
7月28日、真夏に起きた今回の熊本地震では、猛暑から避難者をどう守るのかがクローズアップされました。
文部科学省の調査によりますと、熊本県の公立小中学校で、避難所に指定されている体育館の空調の整備率は今年5月1日時点で20.9%となっていて、全国平均の33.1%を下回っています。
福井県内はというと、同じ調査で、県内の整備率はわずか7.7%にとどまっています。
県内で最も小中学校が多い福井市は―
西行茂市長は定例会見で「酷暑の時期に空調が必要だと、まざまざと見せつけられた」と述べました。
実は福井市は、2024年の能登半島地震を機に、避難所となっている市内47校の体育館の空調の整備に乗り出しました。今年度中に20校に整備され、3年後までに47校すべてで整備を終えるとしています。
県内の他の多くの市町でもここ数年で避難所の空調の整備に着手し、整備率は今後、飛躍的に上がるとみられます。
◆10年前の熊本地震では災害関連死が直接死の4倍以上
ただ、空調の整備だけで熱中症のリスクがなくなるわけではありません。
「ここに200~300人集まるとそれぞれ体から発熱するし、現在の温度からまた上がってくる」
飛田さんは避難者に水分補給を促したり、送風機で空気を循環させたりと、対策を組み合わせる必要性を強調します。
一方、避難所の環境整備だけでは十分とは言えません。避難が長引くほどに浮かび上がってくるのが「災害関連死」です。
災害看護を専門とする福井大学の酒井明子名誉教授は「避難生活での余震などでの不安など精神的な面があり、睡眠不足で疲労が溜まってくると健康リスクが高くなる」と指摘します。
10年前の熊本地震での死者は278人。このうち地震による直接死は50人なのに対し、災害関連死は228人と4倍以上になります。
2年前の能登半島地震でも、直接死が228人であるのに対し、災害関連死は倍以上の527人となっています。
酒井名誉教授は「疲れや睡眠不足は非常に体力を奪うので、これから災害関連死のリスクが高まってくる」と警鐘を鳴らします。「ハコモノがあってそこに避難すれば大丈夫だけではなく、健康管理もしていかなければならない」
◆高齢者や妊産婦ら受け入れる「福祉避難所」
そこで酒井氏が提唱するのは「福祉避難所」の活用です。いまある福祉施設などを避難所に指定し、高齢者や障害者、妊産婦らを受け入れ、看護師や保健師などの専門職員がケアに当たるというものです。
2年前の能登半島地震では、勝山市の施設が輪島市から高齢者を受け入れた実績があります。
県内では老人ホームなどの福祉施設を中心に、2025年10月時点で326カ所の福祉避難所を確保しています。
「自分の命は自分で守るのが鉄則。優先度の高い、自分で動けなくて避難できない人をちゃんと守る」と酒井名誉教授。
大地震といった災害そのもののリスクに加え「災害関連死」を減らすため、厳しい気候変動の中で避難者の健康をどう守っていくのか。高齢化社会が進む日本に、新たな防災対策が求められています。
