去年は歴史的豊漁で1匹300円程度まで下がり、多くの人がお手頃価格でサンマを楽しんだ記憶は、まだ新しいはずだ。
しかしことしは状況が一変。8月10日に大型船によるサンマ漁が解禁されたばかりだが、早くも“高級魚”化が現実のものとなりつつある。
関西テレビ「newsランナー」では、田中友梨奈アナウンサーが大阪・心斎橋にある「焼き魚屋直井」から中継し、魚焼き名人の店主・直井芹奈さんとともに、ことしのサンマ事情をリポートした。
■初物サンマが店頭に並ぶも500円超えに客も躊躇
大阪府内の鮮魚店には19日朝、市場から150匹ほどの初物サンマが入荷した。
日本シーマートの森本泰博社長は「サイズも大きくて、鮮度もよくて、脂のりも良くて、食べるなら出始めの今がチャンス」と太鼓判を押す。
新鮮なサンマを見極めるポイントについて、「くちばしが黄色いのがとれたての証拠。澄んだ目と、背中に丸みがあるものが脂ののったいいサンマ」ということだ。
しかし、気になるお値段は1匹税込み500円超え。来店客からは「いや、まだちょっと早いかな。高いかな」「250円ぐらいなら」という声も聞かれた。
それでも初物を求めて購入した客もいて、3人家族で2匹を買い「3枚におろして焼いて、大根おろしをかけて」と工夫して分け合うということだ。

■来遊量の予想は過去最低 2003年以来の衝撃データ
なぜここまで価格が上がっているのか。その背景にあるのが深刻な不漁の見通しだ。
水産教育機構の調査によると、サンマの漁場となる北西太平洋のことしの来遊量は、去年と比べ6割以上少ない42万9000トンとみられている。これは2003年に調査を開始して以来、最も少ない予想だ。
水産研究・教育機構 冨士泰期さん:サンマが来遊しても、日本の近くまでは到達しない。日本の沖側を南下していくようなイメージになる。
来年以降の見通しについても「まだ何も立たない」という厳しい状況だ。

■1973年には1匹2円 価格乱高下の歴史
サンマの価格は大きく上下してきた歴史がある。
北海道では1973年に大漁となり、1匹2円まで暴落。無料でプレゼントされたこともあった。その後も不漁と豊漁を繰り返しながら、そのたびに価格は大きく変動してきた。
関西のある百貨店では、今まさにその乱高下を象徴する光景が広がっている。
北海道産の新物は1匹1480円で販売される一方、去年とれて冷凍していたものは300円。その差はなんと1000円以上だ。
買い物客からは「1500円は昔の3倍だね」「新物食べたいけど、高すぎる」という声が相次いだ。
株式会社北辰水産 福本智店長:ことしは水揚げが少ないと言われてますので、値段の方も下がってこないのでは。サンマは売れないと困りますし、おいしい時期なので食べていただきたい。

■店内に漂う香ばしい匂い 仕入れ値は去年の約3倍
炭火でじっくりと焼かれるサンマ。表面はカリッと黒く焦げ、ジューッという音とともに食欲をそそる香りが店内に充満する。
田中アナウンサーが中継先の「焼き魚屋直井」で塩焼きを口にすると、「皮がパリパリで、香ばしくて、脂のってますよ。しかも上品な脂」と目を細めた。酢をキュッと絞ったひと口は「白米がほしいですね」と思わず声が出るほどのおいしさだったという。
店主の直井芹奈さんによると、今年の仕入れ値は1尾あたり700円ほど。去年の同じ時期は250円程度だったと言い、「結構高いですよ」と率直に話した。
質については「9月頃にまた脂がのってくると思うので、まだまだ期待できます」とのことで、価格は高くても味の水準は保たれているようだ。

■塩焼きだけじゃない 新鮮サンマのお造りをいただく
「焼き魚屋直井」では、塩焼き以外にも新鮮なサンマをお造りとして楽しめる。
田中アナウンサーがサンマのお造りを口にすると、「ぷりっぷりで、あっさりしていて、臭みもなく本当に食べやすい。これは衝撃ですね」と驚いた様子を伝えた。直井さんも「新鮮な状態でないと食べられないので、新鮮なうちに出しています」と説明した。
サンマのお造りはどこでも食べられるものではなく、新鮮さが命の一品だ。
大阪・心斎橋の「焼き魚屋直井」では、来週からサンマ料理がメニューに加わる予定とのことだ。

■価格の問題だけではない
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、ことしの価格高騰にとどまらない、より大きな問題も指摘した。
鈴木哲夫氏:一喜一憂している話じゃないと思う。もっと深刻で、海水温がどんどん上がって、魚の生態が変わっている。
冷たい海域を好む魚はどんどん北へ移動しており、漁場の新規開拓や漁獲制限、養殖技術の開発など、対応策が模索されています。しかしいずれも1年や2年でできる話ではない。
「サンマといえば大衆魚」
その立ち位置が変わりつつあることへの危機感は、漁業関係者だけでなく、消費者にも共有されるべき問題といえる。
ことしのサンマは、価格だけを見ても去年とは大きく異なることになりそうだ。来遊量が過去最低水準とされる中、新物の旬の味を楽しめる機会は例年以上に貴重だ。
(関西テレビ「newsランナー」2026年8月19日放送)


