岐阜県北方町の学校で、違う学年の子供たちが同じ教室に集まる、新しいスタイルの授業が始まりました。「異学年の学び合い」、その効果とは?
■知事の肝いり!? 岐阜で「異学年の学び合い」
北方町の町立学校「北学園」。この学校で2026年春から始まったのが、“違う学年の子供が同じ教室で一緒に授業を受ける”という、全国でも珍しい取り組みです。
同じ教材を使い、子供たちがお互いに教え合う。この「異学年の学び合い」は、見学に訪れていた江崎禎英(えさき・よしひで)岐阜県知事の肝いりです。

岐阜県の江崎知事:
「『あの子に教えなきゃ』と上級生は自然と復習ができるとか、そういう学び方は素晴らしいと思いますので、できれば県内・全国に広げていきたいと思っています」
■“中1”が“小1”に算数を…「学び合い」とは何?
2023年に開校した北方町立「南学園」も、北学園とともに県内で5校選ばれた「異学年の学び合い」推進校の1つ。小中一貫の義務教育学校で、全校およそ500人が、1年生から9年生までの9年間を過ごします。

月に一度、「1年・4年・7年」など、3学年ずつ離れた組み合わせのグループに分かれ、算数・数学と国語の問題集に取り組みます。
7年生:「ここ足し算だから、3+7。難しい?分かる?」
1年生:「…10」
7年生:「そう!」

ようやく少し学校に慣れてきた1年生が、隣に座った中1にあたる7年生に、算数の問題の解き方を教えてもらっていました。
異学年授業の特徴が、こうした子供同士の教え合いです。
上級生にとっては、復習の機会と、リーダーとしての意識や低学年への思いやりの気持ちが高まる期待が。下級生にとっては、普段の授業よりも分からないことを気軽に質問でき、学習意欲の向上につながるといいます。

先生たちは子供たちの様子を見守り、時々声をかけて手助けをします。
教員:
「お兄さんお姉さんに教えてもらえるというところが、教員から教えてもらうよりも関係が近いので、より気軽に聞けているのかなと思います。勉強が嫌いというよりも、『教えてもらって楽しく学べた時間』になるといいなと思っています」
■問題集は全学年共通 “どこを解いても自由”なワケ
使っている問題集は、1年生から9年生まで共通の特別版で、先生が指示するページを解くのではなく、どの順番でどの問題を解いてもOK。7年生に教えてもらっていた1年生も、2年生レベルの問題にチャレンジしていました。

問題集を作成した植田教頭:
「各学年10枚ずつ、算数・数学で90枚、国語で90枚、あわせて180枚のプリント集を作りました。答えはあえて作っていなくて、グループで上の学年の子たちと一緒に正解を導き出す。できるまでやる、できるまで教える、と考えて作りました」
ベテランの先生たちが、半年かけてつくった問題集。低学年には難しい漢字も使われていますが、フリガナはありません。『分からなければ、隣の仲間に聞いてほしい』という狙いを込めたといいます。

岐阜県の教育委員会は、「異学年の学び合い」が、人の役に立つという経験から来る自己肯定感や、コミュニケーション力の向上にもつながると考えていて、県内5校で3年間、効果を検証することにしています。
■社会の変化で…異学年の交流「貴重に」
縦割り学級の効果などを研究している、香川大学教育学部の岡田涼(おかだ・りょう)准教授は…。
香川大学教育学部の岡田涼准教授:
「継続的に、特に教科に関するところを異学年でやっていこうというのは、新しい取り組みかなと思います。(これまで)どういった面で利点があるか、きちんと検証していくような実践的な研究は少なかった」

岐阜県での取り組みに注目しているとしたうえで、社会の変化で年齢が違う子供同士の交流の機会が減り、学校という場の重要性が増していると指摘します。
香川大学教育学部の岡田涼准教授:
「従来でいけば、放課後に違う年齢の子が集まって遊ぶみたいなことがよくあった。今はなかなか社会的に少なくなってきています。自然に違う学年の子から、多様な相手から学んでいたことが消滅してきているので、学校の中でもう一度取り戻そうという発想があるのかなと思います」
■異学年で遊びの時間 授業以外も“生きる力”に
合掌造り集落で知られる白川村でも、学年を超えた学び合いに力を入れています。
2017年、少子化による統合で村唯一の学校として誕生した「白川郷学園」。1年生から9年生まで約120人が通っていますが、給食や掃除といった授業以外のほとんどの場面が異学年合同です。

オニ役の生徒:
「だるまさんがころんだ!」
約20人ずつの6班に分かれて、それぞれで過ごし方を考える「遊びの時間」。この日は「だるまさんがころんだ」を楽しんでいましたが…。

オニ役に挑戦した1年生の男の子。みんなの視線を一気に集め、緊張から固まってしまいました。
そこに、「どうした?」と駆け寄ったのが、最年長の9年生。困っている様子を見て、一緒に楽しく遊べるように声をかけると、オニ役の1年生にも笑顔が戻りました。

9年生:
「ふれあい方は、何となく分かってきたなと思っています。小さい子が苦手な時もあったけど、今は楽しく話せている」
子供の数が少ない地域だからこそ進んだ、異学年での交流。校長は、生きていく上で必要な力を身につける重要な機会になっていると話します。

白川郷学園の川瀬秀樹校長:
「子供たちが出ていく社会は、ほぼ縦割りの社会といわれ、高い年齢の方から若年層まで、幅広い世代の中で共生しながら活躍することになると思います。学校で縦割りの活動を入れることによって、上級生は憧れや目標の対象となりえますし、下級生は上級生にとってみれば、優しさや思いやりの対象になることができると考えています」
■“教える面白さ”も実感…岐阜から広がる?「異学年授業」
北方町の南学園。異学年の合同授業は4回目。初めはぎこちなさもありましたが…。
9年生:
「そうそうそうそう!めっちゃすごいやん!」

問題が解けた下級生を、上級生が手を叩いて褒める一幕も…。心の距離もだんだん縮まり、積極的に学び合う姿勢が出てきているようです。
2年生:
「どんどん仲良くなれば、話しかけやすくなるなと思って、勇気をもって話しかけた」
9年生:
「最初の頃は、教え合いするのはめんどくさいな、みたいに思っていたんですけど、やっていくうちに教えることの面白さとか、やりがいみたいなものを感じるようになって、最近はいいかもなって」
学年を越えた授業は、子供たちにどんな学びをもたらすのでしょうか。

