教師の行き過ぎた指導を巡った指導死訴訟

女性(26)が札幌市中央区で会見し、集まった記者たちの前で「顧問の指導が不適切だったと、当たり前のことを認めてもらえるまで何年もかかった。やっと悠太に報告できます」
と話し、涙した。

2013年3月、北海道立高校に通っていた、2歳年下の弟の悠太さん(当時16)が自殺したのは、所属していた吹奏楽部の顧問の不適切な指導が原因だったとして、母親(53)が北海道を相手取り損害賠償を求めた訴訟。

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11月13日の控訴審判決で、札幌高裁は請求を棄却しながらも「指導は不適切だった」と認定した。
同席した母親も安どした様子で、カメラ越しに北海道教育委員会に訴えた。

悠太さんの母親:
棄却になってしまったが、裁判官が悠太の気持ちを丁寧にくみ取って事実認定してくれた。北海道教育委員会には判決で示されたことを検証してほしい

判決によると、悠太さんは札幌の北海道立高校に通い吹奏楽部に所属していたが、2013年1月にメールのやりとりをめぐり部員同士でトラブルになった。

同年3月には部員への発言をめぐり、顧問の男性教諭が悠太さんを呼び出し、「世の中では立派な犯罪だ」「名誉毀損で訴える」と叱責。
部活を続ける条件として、他の部員とのメールや会話も禁止された。

母親は、悠太さんの様子が普段とは明らかに違っていたことを鮮明に覚えていた。

悠太さんの母親:
暗い顔で、食事も進みませんでした。「なぜ怒られたのかわからないけど、怖くて言えなかった」と話していました。「部活休もう」と言っても「これ以上休んだら退部になるから…」と追い詰められた様子でした

翌日の3月3日悠太さんは、部活に向かうことなく、地下鉄のホームに飛び降り、自ら命を絶った。
亡くなる4分前に友人に送信したメールには「ネット中傷、名誉棄損などなど色々言われた。正直に言う。全く心当たりがない」と前日に顧問から叱責を受けた内容が残されていた。

母親は2016年3月、高校を管理する北海道を相手取り札幌地裁に提訴。「自殺の原因は顧問の一方的な叱責が原因だ」と主張してきた。

しかし、2019年4月の判決は「指導は必要性が認められ、違法ではない」として、学校側の責任を認めず、高校の教頭が自殺の原因調査のための全校アンケートを廃棄したのは違法だとして、110万円の支払いを命じた。

母親は不服として翌5月に控訴。
控訴審では和解協議が設けられ、母親は顧問の指導などの検証などを求めたが、道側は「一審を上回る条件の和解は難しい」として決裂した。

高裁 控訴棄却するも"指導は不適切"

2020年11月13日、札幌高裁で開かれた控訴審判決で、長谷川恭弘裁判長は自殺前日の顧問の指導を「丁寧な事実確認がなく、メールを禁止した理由も判然としない。指導方法は適切とはいえず、かえって生徒を混乱させた」と不適切を認定。
「組織的な対応をすれば自殺は回避できた」と指摘した。
だが、顧問の責任は「自殺の兆候が多くみられたとは言えず、予測は困難だった」とし、一審に続き認めなかった。

札幌高裁  長谷川裁判長​:
児童生徒の自殺という悲しい出来事が繰り返されないように、教育現場で専門家と連携した対応がされるよう願っています

裁判長は判決を読み上げた後、こう締めくくった。
北海道教育庁の池野敦総務政策局長は「主張は認められたものであると考えているが、判決は厳粛に受け止めたい」とコメントしている。

母親、道双方ともに上告するかは未定だという。

(北海道文化放送)