秋の行楽シーズンを迎え、旅の選択肢が広がっている。愛犬と一緒に泊まれるホテルに、ぬいぐるみと過ごす宿泊プラン。さらに、持ち主に代わってぬいぐるみが旅をするサービスも登場している。
1日1部屋限定、愛犬と泊まれるホテル
広島市南区のグランドプリンスホテル広島に9月、誕生した新プラン。これまでペットNGだった客室で、犬が自由に走り回り、飼い主とじゃれ合っている。
「わ!ワンちゃんがお出迎えしてくれましたよ」と中西敦子アナウンサー。
実はここ、犬と一緒に宿泊できる「ドッグフレンドリールーム」だ。部屋の窓には犬のシルエットをかたどったシールが並び、奥には犬用のケージを用意。ペットベッドやトイレシートなど、ペット用品も充実している。
ペットと宿泊できるホテルのニーズが急速に高まっていることを背景に、広島市街地を望む広めの角部屋を改装。ペットと滞在できる空間へとリニューアルし、入口には飛び出し防止用のフェンスゲートも設置した。
グランドプリンスホテル広島の長原雪乃さんは、「どんなお客様も取りこぼさない」という視点から新たなプランを考えたと話す。
「ペットも家族の一員ですので、そこで選択肢がそがれないように」
ドッグフレンドリールームステイプランは、朝食ルームサービス付きで1泊・1万8730円~(1日1部屋限定で10日前までの予約制)。すでに何件か予約が入っているという。
ホテルの前からは宮島行きの高速船が出ていて、犬と一緒に船で宮島へ向かう楽しみ方もできる。
小さなベッド、おそろいのナイトウェア
一方、広島市中区にも旅の新たなスタイルを提案しているホテルがある。
「枕と掛け布団は、実際の掛け布団と同じ生地で作っています」と話すのは、東横INN広島平和大通の吉野旭江支配人。
小さく再現された客室ベッドに、部屋で着るナイトウェアのレンタルも用意。普段は男性のビジネス利用が多い東横INNだが、このプランがターゲットとするのは、ぬいぐるみを持ち歩き、パートナーや推しのように愛でる“ぬい活”をする人だ。
そこで、テレビ新広島の新キャラクター「ハンザキさん」のぬいぐるみで体験。
「ハンザキさんには、Mサイズのガウンがちょうどいいかと思います」
吉野支配人に小さなガウンを着せてもらったハンザキさんはベッドへ。さらに布団をかけてもらい、「おやすみなさいませ」と、まるで宿泊客のようにホテルステイを楽しんだ。
女性や若い世代の宿泊客を増やしたいと考案された「ぬいと一緒にお泊り会プラン」は、事前予約がなくても、当日のチェックイン時に在庫があれば宿泊料金にプラス300円で利用可能。海外からも予約が入っているという。
日本で広まった“ぬい活”と旅の相性は
今、ぬいぐるみ業界は特需に沸いている。
東京商工リサーチの調査では、ぬいぐるみ業界の売上高は2021年の504億円から2025年には849億円へと増加。右肩上がりで、“ぬい活”の勢いは止まらない。
そこで、ぬいぐるみと旅の相性について、JR広島駅で新幹線を利用する人たちの話を聞いてみることに。まずは、大きなぬいぐるみを抱えた広島県民に尋ねた。
ーーぬいぐるみを家に残しておくより、一緒にいたい?
「そうですね。安心感があるし、心強いので」
ーーまわりの大学生や同世代も、ぬいぐるみと一緒に旅行する?
「結構、しています」
広島に4泊するという韓国人観光客にも聞いてみた。
ーー2人で旅行?それとも、ぬいぐるみも?
「ぬいぐるみ、います!プロセカの彰人くんです」
旅先では、記念にぬいぐるみの写真を撮るという。飛行機の窓から青空を眺める“彰人くん”の写真を見せてくれた。
ーー“ぬい活”を日本の文化と捉えている?
「日本で有名になった文化ですね」
京都からの観光客は、3体のぬいぐるみを連れていた。バッグに入りきらないため、抱えてやって来たという。
ーーぬいぐるみはどんな存在?
「友達みたいな感じ」
ーーどういうふうに写真を撮る?
「端っこにちょっとぬいぐるみの顔を出して撮ったりする」
ーー自分も一緒に写る?
「写りません」
ぬいぐるみを主役に景色や食事などを撮影する「ぬい撮り」。旅の楽しみの一つとして、老若男女を問わず広がりを見せている。
ぬいぐるみが自分の代わりに旅?
そうした中、ぬいぐるみを預かり、各地を旅させているNPO法人もある。
「ワンワンガウガウうるさい子たちで、一緒にカフェだとかおしゃれなところにお出かけするのもちょっと無理だったので、じゃあ、ぬいぐるみをどこかに旅させてみたら面白いかなと思って始めたんです」
そう話すのは、NPO法人日本ぬいぐるみ協会の小塚晴美さん。自身の愛犬2匹をめぐる経験から生まれたのが、全国各地のホストファミリーがぬいぐるみを預かり、旅をさせるサービスだ。
国内旅行の費用は、ぬいぐるみ1つにつき3300円と送料。旅先で撮影した写真は、オンラインアルバムなどで共有される。
「高齢の母親に思い出の地を見せたい」という依頼や、「子どものぬいぐるみが本当に旅に出かけちゃったことにしたい」という依頼もあったという。
小塚さんは、「ぬいぐるみの旅」の魅力をこう語る。
「自分が行ったことのない場所をぬいぐるみが見てるっていう感覚は本当に不思議で楽しい」
広島への旅行も需要があり、この夏は台湾からのぬいぐるみが広島城や被爆建物などを訪れた。
「ぬい旅」ホストファミリーと広島観光
広島で「ぬいぐるみの旅」のホストファミリーを引き受けているのが、木野崇さんだ。
待ち合わせ場所は広島市の平和公園。
「今日はいい天気ですね」と声をかけると、「絶好のぬい旅日和ですね」と笑顔で迎えてくれた。
早速、ぬいぐるみのハンザキさんを預け、普段の様子を見せてもらう。
「広島市内の場合は、平和公園と広島城に行くことが多いんですよね」
巡るスポットや順番は木野さんに任せられているという。
平和公園では、まず慰霊碑の参拝からスタート。
「被爆遺構や震災遺構に背を向けることが失礼にあたるんじゃないかという考えがあって…」
一緒に来られない依頼者に代わり、失礼のないよう撮影する。だから、慰霊碑を参拝するハンザキさんの写真は後ろ姿だ。
人が多い場所での撮影は、「ほかの人がなるべく写らないように」と配慮している。
一方で、「ぬいぐるみだから撮れる場所がある」と話す。例えば、植え込みの上。低い植え込みの葉の上にハンザキさんを置き、原爆ドームを背景にパシャリ。木野さんは、ぬいぐるみの視点で依頼者に景色や体験を届けている。
「行きたいけど行けないからご自身のぬいぐるみを預けてくれて、私が代わりに撮影し、お役に立てていることが光栄です。広島に親近感を持ってもらって、周りの人に広島のことを伝えてもらえたらうれしいなと思います」
愛するペットや推しのぬいぐるみと一緒に旅行。あるいは、自分の代わりにぬいぐるみを旅に送り出す。旅の楽しみ方は、少しずつ広がっている。
(テレビ新広島)

