能登半島地震で被災した高畠正成さんが、石川県金沢市の郊外で平飼い養鶏を再開し、卵かけご飯専門店「すずらん」をオープンさせた。築50年の古民家を改修した農家民宿「ととのや」の一角で、1日10食限定の特別な一杯を提供する。約300羽の鶏が産む新鮮な卵を、最も美味しい状態で味わってほしいという高畠さん。その一杯には、珠洲への想いと、金沢で出会った人々への感謝が込められている。

金沢の古民家味わう1日10食限定の卵かけご飯

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金沢市北部に位置する福畠町。森本駅から車で約10分、セミの声が響く自然豊かな里山に、農家民宿「ととのや」はある。

2021年、築50年の古民家を改築してオープンしたこの宿は、訪れる人をどこか懐かしい気持ちにさせる温かい空間だ。宿を営むのは、宿守の深谷司さんと女将の香代さん夫妻。この宿で、ある男性の再起をかけた新たな挑戦が始まろうとしていた。

店の名は「すずらん」。店主の高畠正成さんは、元々珠洲市に移住し、鶏を飼っていた。しかし、能登半島地震で被災。その後、縁あって「ととのや」の深谷さん夫妻と出会い、現在は宿の近くで約300羽の鶏を平飼いで育てている。彼の鶏にかける誠実な思いと人柄から、深谷さん夫妻は親しみを込めて“卵王子”と呼ぶそうだ。その高畠さんが、自身が育てる鶏の卵を使った卵かけご飯専門店を「ととのや」の中でオープンさせることになったのだ。

店のコンセプトは「新鮮な命を食べていただく」。高畠さんの養鶏場から「ととのや」まではわずか700m。産みたての新鮮な卵が、すぐに店へ届けられる。

提供される「平飼い養鶏の卵かけご飯セット」(1620円)は、羽釜で炊き上げた自然栽培米のご飯に、“茶色い卵”と「アローカナ」という鶏が産む“青みがかった卵”の計4つが添えられる。

まずは、卵を割り、そのまま一口。醤油をかける前に、卵本来の濃厚な味わいと甘みをじっくりと感じるのがおすすめだ。

おすすめは“塩” 卵の味がより引き立つ

高畠さんが特におすすめする食べ方は、塩をかけることだという。「卵の味がより引き立ちます」との言葉通り、塩をパラパラと振りかけると、濃厚な黄身の甘みが一層際立ち、格別の味わいへと変化する。

セットには、高畠家で代々受け継がれるぬか床でつけた漬物や、畑でとれた野菜を使った菜の物、福光屋の湧き水を使った味噌汁も並ぶ。一つ一つに、安心・安全で健康的なものを味わってほしいという想いが込められている。

この店では、食後にもユニークな体験が待っている。食べ終わった卵の殻を、庭先で飼われている鶏にエサとして与えることができるのだ。

毎日卵を産む鶏は、自身の体から失われるカルシウムを補給する必要があり、卵の殻は貴重な栄養源となる。高畠さんは「鶏の糞を肥料にして野菜を作っていますし、本来捨てられていたおからなどをニワトリのエサにしています。このカラもニワトリにとって重要な栄養源ですので、ゴミを出すことなく循環できることも知ってほしいです」と語る。命の循環を肌で感じられる、食育の場ともなっている。

「奥能登を諦めない」 金沢から発信する復興への想い

「すずらん」は、土・日・月・火曜の昼のみ営業で、1日10食の完全予約制だ。使い切らなかった卵は、専用パックで持ち帰ることもできる。プリンとドリンクがついた「満足セット」(2000円)も用意されている。

高畠さんは、金沢で支えてくれた人々への感謝を述べるとともに、未来への強い決意を語った。「奥能登に2号店を出すということを未だ諦めずに心の中にずっと持ち続けて今日まで経営をしてきております。是非奥能登の皆様、私は諦めておりませんのでこれから先も、ご指導と応援と共によろしくお願いいたします」

彼が作る一杯の卵かけご飯は、単なる食事ではない。被災を乗り越え、新たな地で踏み出した再起の一歩であり、故郷・奥能登への変わらぬ想いが詰まった、未来への希望そのものだ。

卵かけご飯専門店 すずらん
営業日:土・日・月・火
営業時間:午前11時半~午後2時半
※1日10食限定・完全予約制
予約電話番号:080-3743-3631

(石川テレビ・8月6日放送)

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