北海道胆振地方の安平町のこども園に2025年、65歳以上の高齢者が通うクラスが開設されました。
声を弾ませる子どもたちに目を細めるじぃじとばぁば。
異色の世代間交流の現場をのぞいてみました。
安平町早来地区にある「はやきた子ども園」。
0歳から小学校入学前の子ども、約160人が通っています。
7月22日は1学期の終業式。
夏休みを前に子どもたちはワクワクが抑えきれないようですが、その横でおじいちゃんとおばあちゃんがほほ笑んでいます。
実は子どもたちの祖父母ではなく、このこども園に週1回通っている町内の高齢者。
2025年8月に開設された65歳以上のクラス「えんじょい組」に在籍しています。
「はい、シールありますよ」(えんじょい組の高齢者)
登園すると、「えんじょい組」の高齢者はシール帳に出席シールを貼って、血圧を測定します。
活動は午前10時から午後1時までで、何をするかは自分たちで決めます。
時には子どもたちと一緒にシャボン玉を作ったり、魚つかみをしたり…
「いいですか?はい、いただきます」(えんじょい組の高齢者)
「いただきまーす」(園児)
一緒に給食を食べたりと、童心にかえった生活を送っています。
「(Q:どうですか?)楽しい!楽しい!」(4歳児クラスの園児)
「(Q:楽しい?)うん!うん!うん!うん!」(4歳児クラスの園児)
「えんじょい組」に通う93歳の笹島孝子さん。
「若返るわ。子どもたちがねなんか言ってくるでしょう。『ばあちゃん、しわがいっぱいあるね』とかさ、そんなこと言うんだ」(笹島孝子さん)
「(Q:笹島さんはなんて子どもに答えるんですか?)『ばあちゃんになったらしわがいっぱいできるの』って。なんて言っていいのかわかんないしさ」(笹島さん)
3日後に開かれる夏祭りに向けて盆踊りの練習です。
「えんじょい組」の定員は10人ですが、現在15人が在籍する人気ぶり。
開設のきっかけは胆振東部地震でした。
「(当時は)お泊り保育中に被災したんですよね。子どもたちもいたんですけど、地域の人が7世帯ぐらい避難してきて、その時にこども園が頼られる存在であるんだっていうのをまず感じて」(はやきた子ども園 福田剛園長)
2018年、震度6強の激しい揺れに襲われた安平町。
復興する中で、こども園と地域のつながりを意識するようになりました。
「何かこども園でもできることがないかっていうことで、その中で老人クラブとの交流を通して、きょういた稲垣さんとかが『私たちの園をつくってよ』って。難しいかなと思ったんですけど、クラスだったらできるかなと思って」(はやきた子ども園 福田園長)
発案者の稲垣英子さん。
約40年抱いていた思いがありました。
「30代のときホームヘルパーをしていて、独居高齢者のとことか行ってお掃除とかするんだけど、家から外に出ないとね楽しくないっていうのはずっと思っていたんですよね」(稲垣英子さん)
2020年に実施された国勢調査によりますと、北海道内で1人で生活する65歳以上の高齢者は36万人あまりです。
「えんじょい組」最高齢、96歳の諏訪幸子さんです。
2025年3月、夫の照久さんが老衰のため亡くなりました。
「厳しい時は厳しかったけれども優しさもずっとありましたね。苫小牧市に月1回病院に行くんですけれども『おいしいものを食べて帰っておいで』って『お金あげるかい?』って」(諏訪幸子さん)
後悔が、ありました。
「『じいちゃん、ゴミ出しに行ってくるからね』とか、外に出かけるときは、必ず声かけていたの。その日に限ってこう見たら、掛け布団が動いていたの。『あっ大丈夫』と思って10分ぐらいですね。(その時に)こうやって顔見たらね、どこも悪くない。すっきりしたね、きれいな顔だった。『じいちゃん』ってこうしたけどね、今度ちょっとティッシュ持ってきたら(息が)ない。お医者さんにも来てもらって、そんな感じの、だから一言も『ありがとう』も言わないで、逝っちゃったんです。看取れなかったのは残念だった」(諏訪さん)
息子や孫はほかの町で暮らしていて、今は1人暮らしをしている諏訪さん。
募る寂しさ。
その気持ちを前向きにしてくれたのが「えんじょい組」でした。
「(年齢が)一番上ですからね。優しく声をかけてくださるし、園児たちも廊下があって私が一番端に座っていると手を振ってくれて、タッチすればもうニコニコしてそこを通っていくんですよ。本当にかわいくてね」(諏訪さん)
7月25日に開かれた夏祭り。
はやきた子ども園に明るい声が響きます。
「孤食の問題だったり孤立。安平町では高齢者が1人でいることが多いっていうのがわかったので、これはぜひ『えんじょい組』をやらなきゃいけない。子どもたちにとってもすごくいい、刺激っていうか、関係性というか。お互いの学び、遊びにとって良い状態になっているなというのはすごく感じます」(はやきた子ども園 福田園長)
「(Q:盆踊りするのって何年ぶりぐらい?)80年ぐらいしていない。楽しいですね、こういうこともあったのかなと思ったり、ちっちゃい子見てね。そんなこと思っています」(諏訪さん)
