【中原 理菜 アナウンサー】
『高校の授業料無償化』について考えます。
これは国の制度で、目的は家庭の教育費の負担を軽減し、子どもが行きたい学校を選べるようにすることです。段階的に所得制限が撤廃され、この春からは私立の高校でも無償化がスタートしました。私立も無償となったことで、〈公立重視〉といわれている熊本に、どんな変化が起きたのでしょうか。
4月、私立の高校の入学式では、生徒や保護者からこのような声が聞かれました。
【新入生】
「物価も高いので、私立に通えるのはうれしい」
「公立重視といわれていたが、授業料無償化の話を聞いて、『私立もいいよ』と言われた」
【保護者】
「選択の範囲が広がってよかった。とてもいい環境で勉強ができると期待している」
これまでの所得制限が撤廃され、私立高校でも無償化がスタート。熊本マリスト学園高校では、今年度の入試の受験者は764人と前の年度の1.5倍に増加。全体の倍率も2.6倍から4.1倍に上がりました。
【熊本マリスト学園 光永 幸生 校長】
「専願もかなり増え、奨学、一般入試も増えて驚いた。そういう意味からすると、合格ラインも変わらざるを得なかった。選択肢が広がった分、受験生が増えたということ」
しかし、私立高校の経営状況にとって、プラスというわけではないようです。
【熊本マリスト学園 光永 幸生 校長】
「本当はたくさん来てほしいが、補助金の問題もあり、定数管理は非常にシビアな問題」
私学では定員を1割超えると補助金が減額されるため、受験生が増えても、定員を簡単に増やせるわけではないのです。
では、今年度の高校入試では、どのような変化が起きていたのでしょうか。『総合学習塾 英進館』は「一部の私立高校の難易度が上がった」と分析しています。
【英進館 執行役員 奥畑 健太郎 熊本ブロック長】
「私立高校がことしは難しかったので、一番大きいところで偏差値が4上がっている学校もある。熊本の中でも上位4校くらいは偏差値が上がっている」
一方で、『上位の県立高校の難易度に大きな変化はなく、人気は健在』と分析。しかし、今後については・・・。
【英進館 執行役員 奥畑 健太郎 熊本ブロック長】
「今後、無償が根付くと、特に来年は定員を削減する県立高校もあり、そうすると倍率が上がるので、選択肢として、私立を入れておくというのが家庭の方針として、ピタッとくるかもしれない。公立や私立で説明会もあるし、自分に合うところを探して、本当に行きたい学校のために勉強するのが大事」
【中原 理菜 アナウンサー】
英進館の分析では「私立を第一志望する受験生は前の年度と比べると、明らかに増えた」ということです。
【尾谷 いずみ キャスター】
選択肢が増えるのはいいですが、私立高校の場合、授業料は無償でもそれ以外にも必要な費用があるのでしょうか。
【中原 理菜 アナウンサー】
はい、私学の場合、『施設充実費』などが必要な場合があり、学校によって異なりますので、事前に十分調べることが大切です。ここまで私立高校の変化を見てきましたが、続いては県立高校です。
今年度の後期選抜試験の倍率は熊高、済々黌、第二、第一は高倍率ですが、全日制の平均倍率は0.88倍で50校のうち39校で定員割れでした。
このような状況の中、『地域密着』をキーワードに魅力化を進める県立高校があります。
葦北郡内唯一の高校、熊本県立芦北高校です。林業科の生徒たちが向かったのは近くの海。魚の産卵や成育の場となるアマモの苗を育てて、海に植え付ける活動を行っています。
漁獲量の減少がきっかけで2003年、地元の漁協からアマモの再生を依頼され、プロジェクトを発足。ことしで24年目です。
中には、熊本市から通っている生徒も・・・。
【熊本市から通学 芦北高校 林業科3年 アマモ班 北岡 統世 班長】
「進路を調べている中で、芦北高校のアマモ班の活動を知り、興味がわいて、芦北高校に進学した」
【芦北高校 林業科3年 土屋 藍莉さん】
「発表会や展示のときに地域や研究者と話し、芦北の魅力とかアマモの魅力、芦北高校の魅力を伝えられることがいい」
3つの専門学科がある芦北高校。中でも林業科の今年度の入試倍率は1.85倍でした。
【林業科 前島 和也 教諭】
「アマモの保全に取り組みたい、研究したいという生徒が県外からも、熊本の遠方からも本校に入学を決意してくれる」
【芦北漁協芦北支所 上塚 末博 支所長】
「若い子が頑張ってくれていて、自分たちも頑張らないといけない」子どもたちが将来の夢を描き、同時に、地域の未来も描けるように。県立高校に期待される役割は大きいようです。
独自の取り組みで魅力化を進める芦北高校はアマモの再生活動などが評価され、天草高校の科学部とともに、7月20日に海洋立国推進功労者として、内閣総理大臣賞を受賞しました。地域とのつながりの深さは県立高校の魅力の1つですね。
県は、県立高校の魅力化を進めるため高校教育改革のモデルケースとなる拠点校として4校を申請。菊池農業高校、天草工業高校、熊本高校が採択されました。
公立、私立のそれぞれの動きについてお伝えしましたが、熊本県の高校改革推進室の久多見 長久 室長は「公立も私立も公の教育を担う主体としては変わりはない。公私が協調して熊本の未来を拓く人材を育成していければ」としています。
少子化が進む中、子どもたちをいかに社会に羽ばたかせるか。社会全体で考えるべき課題と感じました。変化のときを迎える高校についてお伝えしました。。
