新潟市が26年度に本格的な検討に着手した中央区・白山エリアのスポーツ施設再編事業。その核となるのが新潟アリーナの新設だ。いったい、アリーナとはどのような施設なのか、そして事業成功のカギを取材した。
■スポーツ施設老朽化…多目的利用できる“アリーナ”新設を検討
6月に開かれた新潟市議会の文教経済常任委員会。
スポーツ振興課の大阪一男課長から新潟市中央区・白山エリアのスポーツ施設再編事業の進捗について「白山エリアにおけるエンタメ、文化、スポーツの情報発信拠点の形成と、交流人口の拡大、街づくりとの連動による街のにぎわい創出に向け、引き続き取り組みを進めていく」との報告が発表された。
白山エリアには『新潟市体育館』や『新潟市陸上競技場』といった市のスポーツ施設が集積している。
ともに1964年の新潟国体を機に整備されたもので、老朽化への対応が課題になっていた。
そこで新潟市は、数十年後も見据えた県都・政令市にふさわしいスポーツ施設のあり方について検討を開始。
専門家会議からは、白山エリアには“観るスポーツ”の臨場感を味わうことができる『球技専用スタジアム』や『アリーナ』とともに、公共施設や商業施設、賃貸オフィスなど、複合的な機能を併せ持つ施設を新設することが提案されていた。
市内の企業や市議からアリーナ建設の要望を複数受ける中、新潟市は今年度、アリーナの新設を核とした白山エリアのスポーツ施設再編について本格的な検討に着手。
そのアリーナは単なる体育館ではない。
新潟市の中原八一市長は「プロスポーツやコンサート、展示会、各種大会などが開催でき、若者からお年寄りまで幅広い世代が観る臨場感を味わえる多目的施設だ」と説明する。
スポーツ以外にも多目的に活用することで、新潟市は街のにぎわいや経済の活性化につなげたいとしている。
■佐賀県のアリーナ視察
先行事例として新潟市が視察したというのが、国民スポーツ大会を機に整備された佐賀県の『SAGAアリーナ』だ。
地上4階建てで観客席は約8400席。通常の席のほかにもグループやペアシートなどの観客席が用意されている。
中原市長は新潟市のアリーナについて「デザインや規模、8000人前後になるかと思われるが、そうしたことについては今後、事業者と相談しながら最終的に決定していくことになる」と話す。
■財政難の中“利益生む仕組み”が不可欠に…アリーナ成功のカギは?
ただ、SAGAアリーナの総工費は約257億円。
新潟市は民間事業者の資金を活用する考えを示しているが、財政難が続く中でさらなる負担の増加が予想される。
このため、アリーナの実現には利益を生む仕組みが不可欠となる。
スポーツ・エンターテインメント分野でのコンサルティングなどを行う企業・パワーボイスの関篤代表は「スポーツチームの成功なくして、アリーナの成功もないくらいの状況。バスケとバレーというインドアスポーツ2軸でスポーツ・エンターテインメントが各50日ずつ会場を抑えると100日稼働できる」と語る。
■“Bプレミア参入”を目指すアルビBB「ありがたく心強い」
アリーナを活用できるプロスポーツをめぐっては、県内ではバスケットボールBリーグの新潟アルビレックスBBが活動している。
「新潟市の方でアリーナ建設の動きを進めてもらっているというのは、ものすごくありがたいことだし、心強いかぎり」とアルビBBの糸満社長が期待を口にするのには、ある背景があった。
26年9月に再編された新リーグが開幕するBリーグ。
トップカテゴリーであるBプレミアに参入するためには『入場者』『売上』『アリーナ』という3つの基準を満たさなければいけない。
しかし、アルビBBのホーム・アオーレ長岡は、座席数やスイートルームの設置といった部分で、その条件をクリアしていないのだ。
アオーレ長岡を管理する長岡市とはトップリーグ入りのために必要な条件について情報を共有しているというアルビBB。
アリーナの整備はチーム単独ではできないため、今後は長岡市・新潟市双方とコミュニケーションを取りながら、動きを注視していきたいという。
糸満社長は「新潟市は現時点で、まだ計画が確実性の高いものになっていないと思う。我々は自助努力でできることを磨き上げていく。アリーナができた時のためにやっぱりより良い興行を届けられるようにクオリティを上げていく」と決意を語る。
■県内にプロチームがないバレーボール「移転の可能性も」
一方、パワーボイスの関代表がもう1つの軸と話していたバレーボールについては、新潟県内にプロチームがないのが現状だ。
しかし「アリーナができるところにSVリーグがないのだったら『じゃあ、うちが移転しようか』というチームも絶対ある」と話す関代表。
実際、福島県郡山市では24年、体育館の改築などに伴いバレーボールSVリーグのデンソーエアリービーズが他地域から本拠地を移転した。
その上で関代表は「市内に工場を誘致した上で、その企業が持っているSVリーグのチームを『新潟市のアリーナでどうですか』と誘致運動をすれば、可能性は多いに上がる」と話す。
工場の誘致による経済の活性化だけでなく、プロのバレーボールの試合を気軽に観戦できる機会が生まれるかもしれない。
■「競技始めるきっかけに」五輪メダリストを生んだ“アイスアリーナ”
公共のスポーツ施設としては、直近では2014年にアイスアリーナを開設した新潟市。
ここで幼少期に研さんを積んでいたのが26年2月の冬季オリンピック・フィギュアスケート女子で銅メダルを獲得した中井亜美選手だ。
もしアイスアリーナができていなかったらどうしていたかという質問に対して「たぶん何もやっていなかった。普通の高校生になっていたと思う」と話す中井選手。
今回のアリーナ建設でこれまでできなかった体験を提供することができれば、若い世代の可能性が広がることも期待される。
アイスアリーナで開かれた新潟市スポーツ大賞の授賞式後の取材では「私がフィギュアスケートを始めたきっかけにもなった場所なので、この施設をつくってくださって心から感謝している」と語った。
数字では表せない価値を秘めた壮大なプロジェクト。
多額の費用がかかることが予想されるだけに、建設した後、いかに活用していくのか、その道筋を描き出すことが重要だ。
