暑い夏、食欲をかき立てる一皿といえばカレーだ。富山県内には、独自のこだわりと物語を持つカレーの名店が存在する。南砺市井波の古民家カフェ「くろねこ3」と、射水市の「カレー工房 仁」。暑い夏に食べたい個性的なカレーを提供する2軒を取材した。
猫の街・井波で出合う、胃にやさしいカレー


南砺市井波は、瑞泉寺の門前町として栄えた歴史ある街だ。木彫刻の伝統が息づくこの街では、路地のあちこちに隠された猫の彫刻が潜んでいて、散策しながら猫を探す街歩きが楽しめる。そんな井波の中心部にあるのが、古民家を改装した「くろねこ3」だ。



ご飯はかわいい猫の形になっている。店主の中村友美さんは「せっかく井波でお店するなら猫にあやかろうと」と笑顔で話す。

カレーそのものにも、中村さんのこだわりが凝縮されている。使用するのはカシューナッツ、牛乳、ヨーグルト。小麦粉は一切使用せず、油も極力抑えた仕上がりだ。「胃に優しいカレーを目指して作っている」という言葉通り、口にするとまろやかなコクの中にヨーグルト由来のほのかな酸味が感じられ、後味が軽い。


もうひとつ、このカレーを特別にしているのが副菜の存在だ。地元の野菜を使った副菜が皿を彩り、食べ進めながらカレーに混ぜたり、単体で味わったりと変化を楽しめる。「いっぱいあると嬉しいじゃないですか、女の人は特に。飽きてきたら混ぜて、いろんな組み合わせで食べ飽きないように」と中村さん。ワンプレートは食べる人への細やかな気遣いから生まれている。

店では4種類のカレーを提供しており、中でも「こがしバター香るカルダモンキーマカレー」は、複数のスパイスが層をなして広がる香り高い一皿だ。「スパイスって漢方とおなじような感じで、食べて自分で健康維持する」という中村さんの言葉には、料理を通じた健康への想いが込められている。

失敗が生んだ名物ホタテカレー 5種類を一皿で


射水市の「アル・プラザ小杉」そばの住宅街に構える「カレー工房 仁」は、少し違うアプローチでカレーファンを魅了している。看板メニューは、店で提供する5種類のカレーすべてを一度に味わえる「5種がけ全部乗せカレー」だ。

このメニューが誕生した背景には、ユニークなエピソードがある。店主の東林陣さんの父親がカレー屋を営んでおり、東林さんはそこで初めてバターチキンカレーを食べ、「何だこの美味しいカレーは!」と衝撃を受けた。その後、妻がスパイスから手作りしたスパイスチキンカレーもまた絶品だった。「大切な二人が作ったカレーを一皿で」という発想から、2種類を同時に提供するスタイルが生まれ、現在は5種類へと発展している。


5種類の顔ぶれも個性豊かだ。生クリームとミルクをふんだんに使った「バターチキンカレー」は甘みがあり子供にも人気。温泉卵とバーナーで焦がしたチーズをのせた「キーマカレー」、ピリッとした辛さが特徴の「24種のスパイスチキンカレー」、そして5種類の中でも特に印象的なのが、ホタテのカレーだ。

「パウダースパイスを入れ忘れた失敗だったんです」と東林さんは打ち明ける。ところが食べてみると「めちゃめちゃおいしかった」。失敗が名物を生んだという逸話が、カレー作りの奥深さを物語っている。ホタテの旨味エキスがストレートに感じられるクリーミーな一皿は、今やこの店を代表するカレーのひとつとなっている。

さらに魅力的なのが「本日の限定カレー」の存在だ。約10日ごとに内容が変わり、取材時は「ミラノ風イカとアサリのイタリアンカレー」を提供中だった。FIFAワールドカップ期間中は世界各国の料理をカレーにアレンジするという試みも行っており、現在は「タイ風シーフードレッドカレー」が楽しめるという。「カレーのパターンは1兆パターンある」と話す東林さん。日々考え続け、次々と新しい味を生み出す姿勢が、この店の限定カレーを特別なものにしている。

なお、「全部乗せ5種カレー」はハーフサイズも用意されており、少食の人やはじめて訪れる人にもおすすめだ。

富山の夏をカレーで乗り切る
「くろねこ3」のやさしくまろやかなスパイスカレーと、「カレー工房 仁」の大胆でバラエティ豊かな5種がけカレー。共通しているのは、作り手の食べる人への真摯な想い。富山の夏、この2軒のカレーとともに乗り切ってみてはいかがだろうか。
(富山テレビ放送)

