食べると嘔吐や腹痛を引き起こす毒キノコが、大阪の公園に大量に姿を現している。
専門家は気候変動を原因として挙げ、都市部での発生が今後も続く可能性に懸念を示す。
一方で、毒キノコを新薬開発に生かそうという新たな動きも出ていた。
■都会に生える毒キノコ「オオシロカラカサタケ」
大阪市西区にある靭公園。周囲にはオフィスやマンションが建ち並ぶ、都心の憩いの場だ。
ここで今、公園の管理者が手作業で除去を続けているのが「オオシロカラカサタケ」と呼ばれる毒キノコだ。
靭公園の統括責任者・多田弘美さん:食べられたらいいけど、全部毒やからね。
オオシロカラカサタケは、食べると嘔吐や下痢を引き起こし、場合によっては頭痛や激しい胃腸障害にまで至る毒を持っている。
大阪では過去に、このキノコによる食中毒が複数確認されている。
50代の男性は、近くの公園で採取したオオシロカラカサタケを調理して食べたところ、およそ2時間後に嘔吐と腹痛が出た。
男性は「しばらく家で眺めていましたが、あまりに立派なキノコだったので食べたくなって、我慢できなくなって食べてしまった」のだそうだ。

■「怖い」「どうやって自生したのか」住民も困惑
取材班が靭公園を少し見て回っただけでも、オオシロカラカサタケは公園のいたるところに点在していた。
さらに大阪城公園でも、同種とみられるキノコが確認されている。
近隣住民からは「怖いですよね。なんで生えるんでしょうね、こんな真ん中で…」「どうやって自生したのか気になりますね。どこから菌きたのか」と戸惑いの声が聞かれた。
公園の管理者によると、毎年この時期に発生は見られるものの、ことしは特に目立っているという。

■大量発生の原因は「雨が多かった」ということしの梅雨
なぜ都心の公園に、これほど大量の毒キノコが現れるようになったのか。
キノコの生態に詳しい近畿大学農学部の白坂憲章教授は、現地でキノコの発生を確認した上でこう説明する。
近畿大学農学部 白坂憲章教授:特にオオシロカラカサタケは、マッシュルームとかと同じタイプのキノコ。腐葉土が入っているところとかから出やすい。街中で出る量は、ここ10年くらいで少しずつ増えてきたと言われている。気候の変動でしょうね。
オオシロカラカサタケはもともと暖かい地域に多いキノコだ。近年、温暖化の影響で大阪の街中の公園や花壇でも見られるケースが増えているとされている。
ことしの発生が特に目立つ理由については、降雨量との関係が指摘されている。
近畿大学農学部 白坂憲章教授:ここ数年、空梅雨という感じで全然雨が降らなかった。ことしすごく雨が多かったので、目立った感じで出てくるのかなという気はします。

■毒キノコの根絶は「無理でしょうね」と白坂教授
では、このキノコを公園から完全に取り除くことはできないのだろうか。
白坂教授は「無理でしょうね」と明言する。
近畿大学農学部 白坂憲章教授:傘が開いた状態になると胞子をまき散らしていますので、その胞子がまた発芽して、また来年出てくる形になってくる。
根絶が難しい状況を受け、大阪府も注意を呼びかけている。
大阪府 食の安全推進課 監視指導グループ統括主査の安井宏幸氏は「食用のキノコと確実に判断できないキノコは、絶対に取らない、食べない、売らない、人にあげないでください」と話す。

■毒キノコに「夢がある」 がん治療薬への可能性
こうした毒キノコを有効活用できないかと研究を続けている専門家がいる。
滋賀県草津市にある立命館大学薬学部の井之上浩一教授だ。
井之上教授は、キャンパス内で毒キノコを見つけると「何かこう、新しいものを見つけたみたいな感じがします」と表情を輝かせる。
教授が取り組んでいるのは、毒キノコの成分をがん治療薬の開発に役立てるという研究だ。
立命館大学薬学部 井之上浩一教授:ツキヨタケというキノコを粉にしたもの。がん細胞にまいて、がんの細胞を壊したりして、がんに効くかどうかを研究してます。肝臓と大腸と血液のがんをターゲットにしています。
数百種類あるともいわれる毒キノコの毒を分析し、がん細胞に反応するかを確認するという、根気のいる作業の連続だ。
それでも研究を続けるのは、「やっぱり夢があるんですよね」という思いがあるからだと、教授は言う。
立命館大学薬学部 井之上浩一教授:がん患者で困っている方のところに、(薬が)毒キノコからできるというのは非常に夢があると思いますので、また毒が薬になるということも昔から言われてます。

■「新しいスポットライトを当てて、人類に貢献する薬を」
井之上教授は、毒キノコへの社会的な見方を変えたいとも考えている。
立命館大学薬学部 井之上浩一教授:いろんな公園とかで普段生えてるキノコ、みんなが意識しない、みんな毒キノコは嫌だという感じなんですけど、そこからもし薬が見つかったと言ったら、みんなが興味をもってくれると思うので…。
「新しいスポットライトを当てて、人類に貢献する薬を見つけられたら」という言葉に、研究への静かな熱意がにじむ。
気候変動によって生息域を広げ、都市の公園にも当たり前のように姿を現すようになった毒キノコ。
もし公園で見かけたとしても、おいしそうに見えたとしても、絶対に食べないでください。
(関西テレビ「newsランナー」2026年7月10日放送)


