近年、和牛業界に異変が起きている。

かつては希少で高価なものとして知られてきた最高ランク「A5」の和牛が、今や市場の7割以上を占めるまでになった。

スーパーの棚にも並び、特別感が薄れつつある一方で、A4以下のランクの肉はかえって手に入りにくくなるという逆転現象も生じている。

消費者にとって「おいしい肉を手軽に」という恩恵がある半面、本当においしい肉を見極める難しさという新たな課題も浮上している。

■7割、8割くらいがA5等級に

日本食肉格付協会のデータでは、15年前には約2割にとどまっていた「A5」肉の割合が、現在は7割以上に達し「過去最高」を記録した。

京都の卸売市場でも、その変化は如実に現れている。

京都食肉市場 中村良彦部長:7割、8割くらいがA5等級になっています。

競りに参加した精肉店関係者も、「A5の特別感はないですね。当たり前」と言い切るほどだ。

「A5」肉の割合7割以上に達した
「A5」肉の割合7割以上に達した
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■そもそも「A5」とは「味」の保証ではない

「A5」という格付けは、一般的には「最もおいしい肉」というイメージで広まっている。しかし実態は異なる。

牛肉の評価基準は2段階に分かれている。

まず「どれだけ無駄なく肉が取れるか」をA・B・Cの3段階で判定する。

次に「肉の光沢や色など外観」を1から5の5段階で評価する。

この両方で最高評価を得たものが「A5」とされるのだ。

つまり、A5の格付けは「味」を直接評価したものではないということだ。

中村部長も「A5だからおいしいとか、A4だからおいしくないとかではなく、見た目の評価」と明言している。

市場の業者たちは、格付けとは別に、実際に目で見て検品し、競りで買い付けを行っているのだ。

「A5」とは「味」の保証ではない
「A5」とは「味」の保証ではない

■「エサをマニュアル通りにやると100%、A5が出ます」

なぜ「A5」肉がここまで増えたのだろうか。

滋賀県竜王町にある澤井牧場では、現在2000頭以上の牛を飼育している。

代表取締役の澤井隆男さんは、「今の血統の牛だと、エサをマニュアル通りにやると100%、A5が出ます」と話した。

その背景にあるのが、「ビタミンコントロール」と呼ばれる技術だ。

いわゆる「サシ」は、筋肉の中に入り込んだ脂肪のこと。ビタミンAなどの栄養素の量を細かく調整することで、美しい霜降りを意図的に作り出す技術が、和牛業界ではすでに確立されている。

さらに澤井牧場では3年ほど前から「A5システム」と呼ばれるデータ管理ツールを導入している。

牛ごとに番号を入力すると、食事の内容、病歴、血統といった詳細な情報が一覧表示される。

澤井隆男さん:牧場にあった仕入れ方法、産地であったり血統、このかけあわせていいか悪いか、データをとりながら判断していく。

澤井隆男さん「100%、A5が出ます」
澤井隆男さん「100%、A5が出ます」

■もはや「A5」であるだけでは消費者から選ばれない

A5が「当たり前」になる中で、業界の競争軸も変わりつつある。

澤井牧場では現在、もなかの切れ端など栄養価の高い食材をエサとして活用するなど、新たな飼育手法にも取り組んでいる。

澤井隆男さん:消費者の求めるものも作っていかないといけない。肉量や(ランクは)は変わらないけど、うま味成分も追及する。究極の世界になっている。

市場では別の変化も起きている。

A5肉が大量に流通する一方、A3やA4といった下位ランクの肉は逆に仕入れにくくなり、価格差が縮まっているというのだ。

精肉店関係者は「下(のランク)が高くなってきている、我々の感じ」と現状を説明した。

もはや「A5」であるだけでは消費者から選ばれない
もはや「A5」であるだけでは消費者から選ばれない

■プロの見極め方「脂がちょっと触っただけで、これだけ溶ける」

それでは、消費者はどうやって本当においしいA5を選べばいいのだろうか。

創業120年以上の老舗、神戸牛専門店「辰屋」の4代目・辰己真一店主は、「霜降り一辺倒、”霜降り第一主義”でいったらあかんわ」と語る。

辰己さんが用意したのは、2枚のA5ステーキ肉だ。

1枚はスーパーで購入した100グラム1944円の「A5」、もう1枚はお店で販売している100グラム6048円の神戸牛。

見分けるポイントの1つ目は、「霜降りの入り方」だ。

スーパーの「A5」も一見すると美しい霜降りが入っている。しかし辰己さんは「よく見て、霜降りの大きさ厚さ、太さ、全然違うでしょ」と指摘した。

霜降りが太く入っている肉は、食べたときに筋張った食感が残りやすいという。

2枚のA5ステーキ肉
2枚のA5ステーキ肉

2つ目のポイントは「脂の質」だ。

辰己真一店主:一番は脂やね。脂が味を決めるから。

最高級の「A5」肉に触れると、脂がすぐに溶け始める。

辰己真一店主:脂がやわらかいでしょう。もたれないし、食べやすい。ぱっと見て脂が、てかってたら良い脂。

消費者へのアドバイスとして辰己さんが挙げたのは、こうした点を意識することに加え、信頼できる店を見つけることだ。

辰己真一店主:それぞれ自分がおいしいと思う、生産者の牛を仕入れている。だからそれを見つけること。いつもおいしいなと思ったら、そんなぶれることないと思う。

A5ランクの格付けが「当たり前」になった今、その先にある「本当においしい肉」を選ぶ目を、消費者一人ひとりが問われる時代になっている。

(関西テレビ「newsランナー」2026年7月9日放送)

最高級の「A5」肉は脂がすぐに溶ける
最高級の「A5」肉は脂がすぐに溶ける
関西テレビ
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