出張や終業が遅くなったときの味方といえば、カプセルホテル。安価に宿泊できる上にサウナなどが併設されていることもあり、愛好家も多いはずだ。
しかし、新型コロナウイルスの影響で業界は厳しい状況に置かれている。一般的に、カプセルホテルは小さなカプセルでの宿泊が基本で、トイレやシャワーなどの設備は他の利用者と共用になるため、敬遠されてもおかしくはない環境だからだ。
実際、2020年には大手カプセルホテルチェーンが破産申請する事態もあった。
カプセルホテルが驚きの変貌
そんな逆境を逆手に取り、カプセルホテルの可能性を見出した施設が11月6日、東京・新宿にオープンした。その施設内を見てみると…。なんと、宿泊用のカプセルを上下に隔てる仕切りがなく、代わりに机と椅子が置かれているではないか!

驚きの変貌を遂げたのは「パセラのコワーク新宿南口駅前店」。以前はビル全体をカプセルホテル「安心お宿新宿店」として運営していたが、このうち4階のフロア部分を全てコワーキングスペースとして改装したものだという。

フロア全てを改装するとは思い切った決断だが、なぜ、カプセルホテルをコワーキングスペースにしようと思ったのだろう。施設を運営する企業「サンザ」の担当者に聞いた。
コロナ禍で「来館数や宿泊数は激減」
ーーなぜ、カプセルホテルをコワーキングスペースに改装した?
弊社はもともと「パセラのコワーク」というコワーキング施設も運営していました。新型コロナウイルスの影響もあり、宿泊施設の稼働状況が厳しい中だったので、カプセルとコワーキングの融合という、新しいチャレンジができるのではないかと考え、改装をしました。
ーーコロナ禍でどんな影響を受けている?
数字での回答はできませんが、来館数や宿泊数は激減しているに近い状況です。理由としては出張などの需要が減ったこと、インバウンドによる海外からのお客が来なくなったこと、ライブなどのイベントが軒並み中止になった影響が出ていると考えられます。

ーー改装による具体的な変更点を教えて
カプセルの上下段の仕切りをなくし、2個のカプセルを1部屋のコワーキングスペースとして改装しています。具体的には、計34個のカプセルを17席の部屋にしています。テレビや空気清浄機など、カプセル内の設備はそのまま生かしているので、充実した環境を提供しております。このほか、スタッフルームであった個室は会議室として利用可能です。

隠れ家のような個室で「集中」できる
ーー施設ならではの特徴はある?
建物内には大浴場があり、カプセルホテル(安心お宿新宿店)の宿泊者は無料ですが、コワーキングスペースの利用者も500円で入浴できます。また、仮眠スペースも用意しています。JR新宿駅の近くと立地もよいので、急な会議のときなどにもお役に立てると思います。

ーー改装による影響・効果は出ている?
コワーキングスペースの利用後にお風呂を利用をされるなど、今まで開拓できていなかった層の来客につながっています。客数自体は激増しているわけではありませんが、ツイッターでの露出も増えているので、興味は持っていただいていると思います。
ーーどんなときに利用してほしい?
実際にご利用いただくと体感できるのですが、とにかく「集中」できます。周囲に余計な情報が何もないため、隠れ家のような個室での作業が可能です。普段はカプセルホテルをご利用されない方も、この機会にご来館いただければと考えております。

ーー利用者からどんな反応が出ている?
カプセルの名残である、入口のロールカーテンを閉めることで個室感も十分出ますので、その点は評価をいただくことが多いです。アラーム機能のついたナイトパネルも好評です。
利用時には感染予防の配慮を
ーー利用時に注意してほしいことは?
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、各階に設置されているアルコールでの消毒や館内でのマスク着用、共用部を利用する際は3密を避けた行動を心がけていただきたいです。マスクをしていないお客さまには、無料でマスクの提供もしています。
当施設には、24時間巡回清掃のスタッフがおり、アルコール消毒をメインに感染対策はしておりますが、お客さま同士でも感染予防のご配慮をいただければと願います。
ーーコワーキングスペースの今後の展望はある?
新宿店にて、引き続き高評価をいただき、順調にお客さまも増えていくようであれば、新橋や秋葉原など含めて、他の「安心お宿」の店舗でも導入を検討すると思います。これからも新しいチャレンジを常に続けて進化してまいります。

「パセラのコワーク新宿南口駅前店」の営業時間は、9:00~24:00。利用料金は1時間500円で、3000円で1日利用可能。追加で500円支払うと、建物内の大浴場も利用できる。
不特定多数の人が訪れる施設は、コロナ禍だと厳しい状況になりがちだ。サンザのように既存施設の活用も考えてみるべき時期がきているかもしれない。
(画像提供:サンザ)
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