「訓練が厳しそう」「スマホが使えなさそう」——多くの人が抱くそんなイメージとは裏腹に、長崎県警察学校は今、大きな変化の波の中にある。1日体験入校を通じて、警察官養成の現場を取材した。
規律の中に宿る、一つの事案を解決する力
長崎市小江原にある長崎県警察学校では18歳から30歳までの初任科生約90人が寮生活を送っている。期間は半年から10カ月で、一般教養や法律、柔道・剣道など警察官として必要な知識と技能を幅広く学ぶ。(取材当時)
体験入校でまず挑んだのは「教練」だ。整列や行進など集団行動を通じて警察官としての規律を身につける訓練で、事件・事故・災害の現場で連携が求められる場面に備え、統率ある行動を確実にできるよう繰り返す。
実際にやってみると、その難しさは想像以上だった。右向け右の姿勢からどちらの足を踏み出すか、角度は正確か——細部まで徹底して問われる。
授業は1時間20分。正しい姿勢を長時間保つには体力も集中力も必要だ。吉田清司巡査(28)は「一つの事件・事案等に集団で解決していくという部分のみんなでの頭揃いや行動が一つ一つ基礎となっていくと思う」と語った。(年齢は取材当時)
元看護師も飛び込んだ、やりがいある仕事への憧れ
昼食は全員揃ってとる。この日のメニューは一番人気の牛すじカレーだ。箸を動かしながら、学生たちは警察官を目指した理由を打ち明けた。
迎藍子巡査(26)は看護師を約5年間経験した後、学生のころから憧れはあったけど体力的に自信がなくて踏み出せずにいたと振り返る。年齢制限もあり、もう1回頑張ってみようと思ったら受かることができた——その言葉には、決断の重さがにじんでいる。訓練の中で何かあるたびにもう無理かもと感じながらも、一緒に支えてくれる友達がいるから続けられると語った。
楽しく強くなろう 笑顔がのぞく逮捕術の訓練
午後は逮捕術の授業だ。
凶器を持った犯人をより安全に取り押さえる警察独自の格闘技で、ひじやひざでミットに打ち込む打撃訓練が繰り広げられた。打ち込むのも痛いが、受けるのも痛い——。
しかし、格闘技の授業でありながら学生たちの顔には笑顔がのぞく場面もあった。2人1組で瞬発力を鍛えるゲーム感覚の訓練も採り入れられており、福田一浩校長補佐(59)は「モチベーションを上げるために楽しく強くなろうというのが基本にある」と説明する。
林田佳穂巡査(19)も「厳しいと思っていたけど、入ってみたら教官たちもすごくやさしく教えてくれて、仲間とも声を掛け合って楽しくてギャップを感じた」と話した。
志望者6割減が促した、校則緩和という大転換
こうした雰囲気の変化には明確な背景がある。採用試験への応募者数は10年前の742人から2025年度は319人へと、6割近くも減少した。
厳しさが先行する若い世代の警察学校へのイメージを変える必要があるとして、2026年度からはスマートフォンの管理を使用時間を含めて個人に任せるなど校則を大幅に緩和した。
髪型についても、重松賢校長補佐(44)によれば、2025年からは端正な髪型ということである程度自由になり、訓練の時に支障がない髪型であれば短くないと不可という基準はないという。
重松校長補佐はいたずらに厳しい訓練をやっているわけではないと強調しつつ、厳しいという面は実際はあるけど、それ以上に警察にしかできない仕事があってやりがいがあるので、ぜひ入っていただいて県民の生命・財産を守って、治安を良くしていけたらと語った。
学生たちそれぞれが高い志を抱いてこの門をくぐっている。
平川楓翔巡査(18)は「父親のような県民の方の力になれる警察官になりたい」と語った。
宮田真伍巡査(19)は「やさしくて県民の方に信頼されるような警察官を目指して頑張っている」と話した。
迎巡査も「被疑者が女性だったら女性警察官が対応していくと思うし、DV被害なども年々増加傾向にあるので、被害者の方に寄り添って親身に対応できる警察官になりたい」と決意を語った。
県民の命と安全を守るために厳しい訓練と向き合い続ける学生たちの姿は、変わりゆくなかでも変わらないものをしっかりと受け継ぐ警察学校の今を力強く体現していた。
(テレビ長崎)

