6月、現状の総事業費が最大1230億円と明らかにされた熊本市の新庁舎整備について、29日までの市議会、そして元・市幹部職員による問題提起も交え、改めて議論のポイントを整理します。
【6月12日 熊本市議会本会議 大西 一史 熊本市長】
「現時点の『概算事業費』は約1100億円から約1200億円と見込んでいる」
29日まで開かれた6月議会で、熊本市は新庁舎整備の概算が最大1230億円と明らかにしました。
熊本市は、議会棟を含む本庁舎をNTT桜町の敷地に。そして、現在本庁舎内にある中央区役所を花畑町別館跡地に移転・建て替えとする計画です。
6月に示された1230億円は、2年前の基本構想時の約2倍です。
内訳を見ますと、『工事費』が885億円、『現庁舎の解体費』が最大で210億円に。本庁舎の移転先となるNTT桜町の『土地取得費』は、2年前70億円としていたものが95億円となるなど、ほとんどの項目が増大しています。労務単価や資材の高騰がその要因です。
【6月17日 市議会特別委員会 大西市長】
「そのまま受け入れるつもりはない。市民から預かった税金を使う以上本当に必要な機能は何か、規模は適切か、コスト縮減の余地はないか、厳しく検証する必要がある」
【落水 清弘 委員(自民)】
「究極の選択の一つとして、本庁舎と中央区役所の合築も検討する必要性があるのではないか」
【山本 浩之 委員(熊本自民)】
「期待の声もたくさんあるが、財政負担への不安の声もある」
【吉田 健一 委員(公明)】
「確実に減額されない限り、同意しかねる」
【西岡 誠也 委員(市民連合)】
「この議論を始めて7年。できるだけ早く進めてほしい」
【上野 美恵子 委員(共産)】
「いったん立ち止まるべきだ」
【高本 一臣 委員(創生熊本)】※「高」は「はしごだか」
「アクセルを踏むのでなく、ブレーキをかけて状況を見極める選択が必要ではないか」
6月7日、市民団体が開いた講演会です。100人余りの聴衆を前に、演台に立った古庄 修治さんは熊本市で2019年度までの4年間、政策局長を務めました。
古庄さんは元担当者の立場として、「当時、概算工事費は四百数十億円で収まり、合併推進債を活用できるこの時期に建て替えた方が長期的に考えて有利だという判断があった」と説明。その後、現在2倍近くに膨らんでいる工事費について、こう述べました。
【6月7日 元熊本市政策局長 古庄 修治さん】
「『じゃあ建て替えようか』となったかというと、当然そうはなっていないと思う。私自身は今いったん立ち止まって、再検討すべきではないかというのが個人的な思いだ」
古庄さんが政策局長を務めていた当時から判断のポイントとされていたのが『合併推進債』です。
市は6月17日の市議会特別委員会で、財政負担に関する二つの金額を公表しました。
一つ目は『合併推進債』を活用して新庁舎を1230億円で整備する場合の額で、現庁舎の売却益を135億円として試算すると、市の負担額は528億円に。
二つ目は現庁舎を耐用年数の築70年まで使い続ける場合の財政負担額で、設備改修費や行政サービス提供のため、必要な民間ビルの賃借料を含め、530億円かかるとしました。
さらに市は、この場合、改修完了から20年後には建て替えが必要となるが、合併推進債は活用できないため、財政負担は1000億円となり、合わせると1530億円になると説明しました。
【6月17日 市議会特別委員会 大西 市長】
「建設コストが上昇を続ける中、合併推進債などの有利な財源を活用できる期間には限りがある」
最大1230億円に上っている事業費をめぐって、大西 市長は新たな『検証委員会』の設置議案を提出。29日に行われた採決の結果、可決されました。
【6月29日 議会後の会見 大西 市長】
「(検証委員会には)このまま進めていいのかどうなのか、今の状況を踏まえて検証してもらえるものと考えている。どういう結果が出されるかは分からないが、検証結果は真摯に受け止めて判断したい」
整備内容や工事費、工期の妥当性や財政への影響などについて近く、第三者委員5人程による検証が始まるほか、必要な床面積については、今ある基本計画検討分科会で精査することになりました。
今後、検証のポイントとなるのが市の負担額です。
新庁舎を今の計画のまま整備する場合は528億円。事業費1230億円から合併推進債や現庁舎跡地の売却益などを引いた額です。
そして、築45年目の今の庁舎を改修して、耐用年数70年まで使い続ける場合で530億円です。これは改修にかかる350億円と今も支出している民間ビルの賃借料を合わせた額となります。
また、市はこの場合、その後、建て替える際には合併推進債が使えないため、合わせると1530億円の負担が必要になるとしています。
こうした数字をどうとらえるか。熊本地震後に始まった庁舎整備をめぐる議論、11月15日投開票と決まった市長選挙の論点となることが想定される中、近く検証委員会による議論・検証が始まります。
