秋田市の国際教養大学では世界各国の学生がともに学んでいます。キャンパスがあるのは雄和地区。JR秋田駅からは直線で約11キロ離れていて、移動や買い物には交通手段が欠かせませんが、学生が簡単に車を持てるわけではありません。
学生に学びと秋田での生活を充実させてほしいとの思いで、6月1日に公共交通の空白地帯を埋める無料バスの運行が再開されました。手がけるのは東京のIT企業。代表は秋田市出身の男性です。自身を育てたふるさとに恩返ししようと挑戦を続けています。
秋田市の国際教養大学は、自然豊かな雄和地区で学びを提供しています。
しかしJR秋田駅まで直通の路線バスはなく、公共交通機関を使って市街地に出るには、イオンモール秋田やJR和田駅でバスを乗り継ぐ必要があり、1時間半から2時間かかります。
この課題を解決しようと2025年4月、東京のソフトウエア関係の会社が、大学とJR秋田駅を結ぶ無料バスの運行を始めましたが、2026年3月に約1年で撤退しました。
学生は「秋田駅から大学までの移動は、和田駅まで電車で行ったり、6時間に1本くらいのバスダイヤで和田駅まで行って、和田駅から大学に行く、みたいな。自分のスケジュールをなんとか合わせないと秋田駅まで行けない形だった」と、移動手段が限られていた当時を振り返ります。
事業を引き継ぐ形で6月1日に運行が始まったのが、学生と教職員向けの無料バス「ABE!BUS(あべ・バス)」です。
「あべ」は、秋田弁で「一緒に行こう」という意味を持ち、学生に仲間を誘って市街地に出かけてほしい、という思いが込められています。
太田碧アナウンサー:
「ABE!BUSは、デザインも一新され、車両の左側には秋田駅周辺の街並みが描かれています。そして反対側もデザインが変わっていて、大学周辺の山並みがデザインされています」
バスは完全予約制で運行され、大学とJR秋田駅を月~木曜は4往復、金曜を含む週末と祝日は6往復します。
学生は運賃がかからず、バスの運行にかかる費用は車内の広告費や企業からの協賛金を充てます。
19日にはバスの運行開始を記念したイベントが開かれ、沼谷市長がバスの復活を歓迎しました。
秋田市・沼谷純市長:
「せっかく4年間とか6年間秋田市で暮らしてもらっても、秋田市のことをあまりよく分からないとか、秋田市の地域のこと、企業のことをあまり分からないな、という生活をしながら卒業してしまう学生もたくさんいるので、ぜひこのABE!BUSもそうだが、この機会に秋田のことを色々知ってもらいたい」
学生は「ABE!BUSがないと、秋田駅へ行くモチベーションというか、そもそも行こうという意欲があまり湧かなくなってしまう。お金がかかってしまうので。どこにも止まらずに秋田駅に直で行けるのがすごく魅力的」「市街地は千秋公園の景色を見たり、商業施設もたくさんあって楽しそうなので、もっと秋田市の魅力をABE!BUSを使えば、より楽に回れるかなと思う」と無料バスの復活を喜びます。
公共交通の空白地帯を埋める取り組みに、大学も期待を寄せます。
国際教養大学・竹内和彦学生課長:
「国際教養大学の学生は、すごく活動的で色々なアイデアを持っている。移動の足の問題で思ったように活動できない、ということは前からあった。これはもったいない話なので、学生の足の利便性が増えるのであれば、とても歓迎すべきことだと思う」
一度廃止された無料バスの運行を引き継いだのは、東京のIT企業「インターグ」です。
インターグ・那須剛社長:
「AIUの学生はほとんどキャンパスの周辺に住んでいて、ほとんどの学生がキャンパスから外に出ずに4年間を過ごす。ほとんど秋田との接点を持たないまま卒業してしまうことを聞いて、それはすごくもったいない、という思いもあった。なので、AIUと秋田の市街地を結ぶことで、AIU生が秋田のことを知るきっかけをつくれたらいいなという思いもあった」
インターグの那須剛社長は秋田市出身。大学卒業後、公認会計士として大手監査法人に勤務し、上場企業や外資系企業の監査を手がけた経験を持ちます。
2017年にインターグを立ち上げ、クレジットカードや住宅ローンなどの比較メディアを運営しています。
事業は順調ながら、那須社長の活動はこれだけにとどまりません。
那須剛社長:
「自分が生まれてから高校まで秋田で過ごして、秋田の人や土地に育ててもらったという思いがあるので、何かしら自分が恩返しというか、役に立てることがあればやりたいなという思い」
プロバスケットボールチーム「秋田ノーザンハピネッツ」のホームゲームに子供たちを招待するなど、ふるさとを応援する活動に精力的に取り組んでいます。
2026年3月には結婚・子育て支援に役立ててもらおうと、企業版ふるさと納税を活用して秋田市に150万円寄付しました。
那須剛社長:
「秋田でデジタルマーケティングの会社が少なくて、そういった仕事に就きたい若者が就けないという話も聞いている。将来的には、例えば弊社が秋田に拠点を作って、マーケティングなどの仕事に携わりたい若者の職場づくりで貢献できたらいいなという思いもある」
多くの人の便利さを追求しながら、ふるさと秋田をより良くしたい。那須社長とインターグの挑戦は始まったばかりです。
バスの運行が継続できれば、他の地域や大学での運行も検討するということです。全国で公共交通機関の持続が課題となるなか、ABE!BUSが事業モデルとなれるか、注目です。
