東京・北区の小学校で起きた火災から、26日で1週間です。
音楽室から「ひさし」に児童を避難させ命を守ることができた一方で、避難器具の使用方法について見直す動きが広がっています。
「イット!」では、救助袋と呼ばれる避難器具に注目。
東京23区に対し緊急アンケートを行ったところ、救助袋を使った訓練の推奨を行っている自治体がゼロであることが判明しました。
校舎の4階部分から噴き出す大量の黒煙。
校舎にいた児童は「怖かった。泣いている子もたくさんいた」と語ります。
19日に東京・北区の滝野川第三小学校で、児童ら11人がけがをした火災から26日で1週間。
保護者:
今の校舎で通うことができないと登校先もどこになるのか分からない、友達もバラバラになると。他の子と同じような学校生活は送れない。
区は23日の会見で、3年生以上の児童を近隣の学校へ分散登校させる方針を明らかにしました。
さらに、火事の原因も徐々に明らかに。
警視庁によりますと、火元となった4階の音楽準備室にあった電気ストーブを調べた結果、繊維片のようなものが付着していたことが判明。
また、音楽の授業を担当していた女性教員は「電気ストーブの近くで洗濯物を乾かしていた」といった趣旨の話をしているといいます。
当時、廊下に火の手が迫っていたことから、子どもたちを窓の外の「ひさし」へと避難させた2人の教員。
「ひさし」にいた児童:
担任の先生が一人一人降ろしていたけど、早く降りようとしてそこから滑り落ちちゃって…。
児童1人と女性教員が骨折するけがをしたものの、子どもたちは無事に救出されました。
保護者:
そこ(ひさし)に気がついたのがすごいなと思うのと、ちゃんと自分たちで生き残る方法を考えてくださってよかったなと思います。
この時、教員が取った避難行動について、元東京消防庁の坂口隆夫氏は「犠牲者が1人も出なかったということを考えると、結果的には判断は正しかったのかなと」と避難時の行動を評価した一方で、「(もし火災現場に)「ひさし」がなかったら、「救助袋」を使わなければいけなかった」と語りました。
坂口氏が指摘する「救助袋」とは、高い場所から地上に避難するための器具。
火災があった滝野川第三小学校でも救助袋は設置されていましたが、その場に駆け付けた男性教員は「(救助袋を)使用しようとしたもののうまくいかず、黒煙も充満してきたため別の避難方法を考えた」などと説明しているということです。
では、避難器具である救助袋はどういったものなのか。
東京・文京区で避難器具の製造・販売を行う会社で見せてもらいました。
北区の小学校に設置されていたものと同じ滑り台型の救助袋。
使い方は、格納箱から袋本体を取り出し地上へと下ろすと、入り口となる金具を押し上げます。
地上では受け取った袋のロープをフックで固定。
左右の長さを均等にし、たるみがないことを確認すると救助袋の設置が完了です。
その高さは小学校で火元となった4階部分に相当する約10メートル。
実際に体験したディレクターは「スピードもそこまでなく、恐怖感はなかったです」と語りました。
消防設備士の資格を持ち、避難器具の取り扱いに詳しい生貝英樹さんは「避難器具はやはり使い方が難しいという方がいて、この救助袋が設置されている部屋を管理されている方、この方は装置(救助袋の操作)を分かっていていただきたい」と話します。
学校では救助袋を使った訓練は行われているのか。
豊島区の池袋小学校を訪れるとこの日、行われていたのは地震を想定した訓練です。
先週の火災を受け、教員は児童に「もしここで火事が起きたらどうするかを考えてください。“いる場所からどう逃げるか”考えてください」と呼びかけました。
一方、救助袋については「(Q.避難訓練で救助袋は開ける?)全くしません(開けません)。(開いたら)このような形になっているんだなと思いました」と話します。
池袋小学校では救助袋が2つ設置されていますが、これまで児童と一緒に救助袋を使っての避難訓練は一度も行っていないといいます。
他の避難経路があることや、一度設置した救助袋を元に戻すのに専門業者の立ち合いが必要になることなどがこれまでハードルだったといいますが、今回の火災を受け、救助袋を使った訓練を今後検討するといいます。
池袋小学校・梅津恵美子副校長:
いざという時に教員が「救助袋」を使えるように、ぜひ避難訓練の一環として教員と共有したいと思っております。
他の学校でも行われていなかったという救助袋を使った訓練。
今回の火災についての会見で、北区も「シューター(救助袋)の中で今までもけがした子どももいます。かなり高い所から降りるので怖くてできないというのもあって、ここ数年は(避難訓練で)義務には全くなっていない」と、救助袋訓練は義務ではないと明かしました。
そこで今回、取材班は東京23区に対し、緊急アンケートを実施。
東京都は公立小学校などに対し、年11回以上の避難訓練をするよう義務付けています。
その際、救助袋を使用した訓練をするよう義務付けているかと質問すると、23区全てが「義務付けていない」と回答。
さらに、通知や推奨しているのかとの質問には「積極的実施の推奨は行っていない」「救助袋の避難訓練は特に通知、推奨はしていない。学校から離れた場所にいる際の避難訓練を優先的に通知、推奨している」など、回答があった21の区全てで、救助袋を使用した避難訓練についての通知や推奨を現在は行っていないといいます。
しかし、北区の小学校で火災が起きたことから今後、対応を変更するという自治体も。
5つの区が、救助袋を使った訓練をするよう「実施する」または「検討する」などとコメントしました。
今回の火災で、学校の避難訓練が変わる可能性があることが判明したのです。
こうした動きは全国各地でも。
救助袋など、避難器具の管理方法のチェックが行われ、防災対策の見直しが広がっています。
元東京消防庁 麻布消防署長・坂口隆夫氏:
一度もやったことがなければこれは全く使えません。年に1回でもいいと思います。学校に設置されている設備の使用訓練をやるべき。
火災から子どもたちを守るため、訓練の在り方が問われています。
