日本の「三大マグロ」と言えば一般的に、大間(青森)・戸井(北海道函館市)・三崎(神奈川三浦市)の3つのブランドマグロをさす。いずれも最高級の天然本マグロ(クロマグロ)として知られているが、ことしは山形庄内沖でもクロマグロが豊漁で、2025年の3倍近い水揚げ量となっている。燃料高騰など漁業を取り巻く環境が厳しさを増す中、関係者は庄内浜産のクロマグロの需要拡大に期待を寄せている。
前年比3倍のクロマグロ水揚げ
12日午前9時半。
鶴岡市・由良(ゆら)の港に、前日に出発した船が続々と戻ってきた。
次々に水揚げされるのは、大きな「クロマグロ」。
別名「本マグロ」とも呼ばれる、言わずと知れた高級魚。

例年と比べて、半月ほど早く始まった庄内沖のクロマグロ漁はいつになく豊漁で、県全体で2025年の同じ時期の2.7倍にあたる62トンが水揚げされている。

海生丸・五十嵐健生船長:
去年は100キロ近いマグロがたまに1~2本だったのが、今年は100キロが当たり前。
こんな年はないかもね。

県漁業協同組合指導課・佐藤悠太郎課長は、「庄内沿岸域にイワシが押し寄せていて、定置網でもたくさん獲れている。おそらく沿岸に寄せてきたイワシを食べるため、それを追いかけてきたマグロが獲れている」とみている。
庄内浜は“水産物の宝庫”
県の西側、日本海に面する遊佐町から鼠ヶ関まで続く庄内浜は、全長約135キロと全国で2番目に短く、漁獲量・漁獲高・漁業者数も下位。
一見、漁場が狭く不利な条件にも見えるが、暖流と寒流が交差する豊かな海域と鳥海山からのミネラル豊富な湧き水により、年間130種以上の多様な魚介類が水揚げされる“天然の魚の宝庫”なのだ。

旬の移り変わりが明確で、四季折々のおいしい魚を楽しめるのが庄内浜の最大の特徴ともいえる。

全国でも知られる庄内浜の自慢のブランド魚として「寒ダラ」「紅えび」「岩ガキ」があり、近年「庄内おばこサワラ」「トラフグ」「ズワイガニ」も庄内浜のブランドとして首都圏の市場で高い評価を得ている。
豊漁と資源管理・漁獲枠のはざまで
この日の由良漁港でも、100キロ近いクロマグロが数多く水揚げされた。
しかし漁業関係者は、豊漁だからと手放しで喜んでばかりもいられない。

それというのも、国が資源管理のため「30キロ未満の小型のクロマグロ」と「30キロを超える大型のクロマグロ」について、都道府県ごとに1年間の漁獲枠を厳格に定めているからだ。

県内の“大型”の年間の漁獲枠は83.5トンだが、現在すでに62トンと上限に迫りつつある。
豊漁だからといって“好きなだけ勝手に獲ることはできない”。
県漁業協同組合指導課・佐藤悠太郎課長:
現在、クロマグロの漁獲枠は70%超の消化率になっていて、枠が足りなくなっていると心配している。

資材・燃料高騰に単価下落でトリプルパンチ
関係者の頭をさらに悩ませているのは、漁業関連資材や燃料の価格高騰。
県漁協によると、2026年は発泡スチロールや漁具・燃料など、漁業に欠かせない資材が2025年より3割も値上がりしている。
また、海生丸の五十嵐船長によると、燃料も相当高くなっているという。

一方で、クロマグロは豊漁によって単価が下がっている。
2025年と2026年のクロマグロの単価を比べると、2025年春の1キロ当たりの平均単価2532円なのに対し、2026年春の平均単価は1872円と660円も下落している。

本来はうれしいはずの豊漁も、漁業者の心境は複雑だ。
ブランド化に向け認知度向上・消費拡大
「庄内沖のマグロ皆さんおいしいので食べてくださーい」
豊漁を追い風に、庄内のクロマグロを広く知ってもらおうと、内陸部にある山形市内のスーパーで解体ショーと販売会が開かれた。

包丁で豪快にさばかれていくクロマグロ、一度も冷凍していない庄内浜産の「生マグロ」の試食も用意され、買い物客に振る舞われた。

訪れた人たちは「本当に新鮮で、めったに庄内のマグロは食べられないのでおいしかった」「おいしい、おいしい! 庄内まで買いに行ったりする。地元(山形市内)で売ることがなかなかないから、どこで食べてもおいしいが新鮮さが違う」と話す。

豊かな海の恵みで活気づく庄内のマグロ漁。
「漁獲枠の上限」「物価高」など課題はあるが、それでも関係者は庄内のクロマグロのブランド化に期待を寄せている。

県漁業協同組合指導課・佐藤課長は、「まずは庄内浜産クロマグロの認知度向上、一般の消費者にたくさん食べてもらうことが重要。それに伴い山形県庄内沖のマグロをブランド化していければ」と話す。
(さくらんぼテレビ)

