2026年6月10日の朝、宮城県蔵王町にある住宅の敷地内で飼われていた14歳の愛犬モカが、クマに襲われる被害が発生した。前年度から続く全国的なクマの異常出没のなかで起きてしまった今回の事態。悲しみに暮れる飼い主の親族が、取材に答えてくれた。

早朝の庭で見つかった愛犬の痛ましい姿

モカが襲われたとみられる犬小屋
モカが襲われたとみられる犬小屋
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6月10日午前6時ごろ。蔵王町にある住宅で、飼い主の男性が、犬小屋の近くで、愛犬のモカが腹部から大量に出血して倒れているのを発見した。
モカの腹部は爪痕のような傷があり、皮が大きくめくれてしまった状態だったという。

周囲の地面には激しく争った形跡か、モカの毛が散乱していた。そして、住宅に隣接する畑には、クマのものとみられる足跡がくっきりと残されていた。

モカが受けた傷は、家族が一見して別れを覚悟したというほど深いものだったが、仙台市内の動物病院で手術を受け、一命をとりとめたという。

モカは14歳で、人間でいえば70代に相当するシニア犬だ。クマの攻撃を受けても生き抜いた生命力には、驚くべきものがある。しかし、一命を取り留めたからといって、家族や地域住民の受けた精神的ショックが癒えるわけではない。

付近では過去に飼い犬が犠牲になる被害も

隣接する畑にはクマのものとみられる足跡が
隣接する畑にはクマのものとみられる足跡が

今回被害があった住宅の近くでは、前年10月にも飼い犬がクマに連れ去られ、近くの林で死体となって見つかるという痛ましい被害が発生していた。警察によると、現場には尻尾しか残っていない状態だったという。

そんな事態をうけて、この家では、モカを施錠できる作業場で飼っていた。
だが、夏に近づき暑い日も増えてきたことから、状況に応じて外に出していた時間もあったという。そんなタイミングで、クマに襲われてしまった。

日中の厳しい暑さを避け、夜の涼しい風に当たらせてやりたいという、家族の優しい配慮であったが、結果として野生の猛威を呼び込む隙となってしまった。

付近に仕掛けられた箱わな
付近に仕掛けられた箱わな

町では今回のクマが過去に飼い犬を連れ去った個体と同じである可能性もあるとして、現場近くに箱わなを設置するなど、対策を行っている。

統計開始以来「過去最多」の異常事態

4月には仙台市中心部の住宅街にもクマが出没した
4月には仙台市中心部の住宅街にもクマが出没した

宮城県の発表によると、2026年4月と5月のわずか2カ月間に確認されたクマの目撃や出没の件数は、過去最多の451件に達した。これは、県が統計を開始した2005年以降で最悪の数字であり、前年の同じ時期と比べると3倍以上という、異常なハイペースである。

すでに県は4月に「クマ出没警報」を発令し、5月、6月も継続して警戒を呼びかけていたが、こうした事態を受け、宮城県はこれまでの警報よりもさらに踏み込んだ「クマ出没特別警報」の運用開始へと踏み切った。

特別警報は、人身被害の危険性が極めて高まっていると判断された場合などに発表されるもので、発表された場合、強制力はないものの、宮城県は県民に対し、目撃された場所への外出自粛、児童生徒の登下校時の配慮、野外行事の開催時期の変更などを要請するとしている。

県の呼びかけと生活の実情の間にあるギャップ

現場には襲われたモカのものとみられる毛が散乱していた
現場には襲われたモカのものとみられる毛が散乱していた

宮城県はクマに遭遇しないために、

・朝夕の時間帯の行動を避ける
・クマすずなどの音を鳴らす
・多人数で行動しない
・生ごみなどを放置しない

といった基本的な対策を呼び掛けているが、県民の生活の実情とのギャップは大きい。

クマの目撃が続く地域の住人も、「注意はしつつも外での作業はしなければならない。どうしたらいいのかわからない」などと、県の対策に戸惑いを見せている。

コメや野菜などの農業、畜産業などの酪農が盛んな宮城では、自然に近い場所での屋外作業も避けることのできない生活の一部だ。

宮城県のほぼ全域でクマの目撃が続く現状では、人とクマの生活域の境界線はないに等しい。
県民がクマにおびえることなく、安心して暮らせる未来はやってくるのだろうか。

仙台放送
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