長野県小諸市の中心部に建つ築100年の建物についてです。かつては酒店でしたが、30年余りを経て、ひ孫夫婦が復活させました。どんな思いを込めたのでしょうか。

■30年経て…「元酒屋」が復活

汾陽アナウンサー(長野放送):
「趣のあるとても立派な建物ですね。道の角にあるということもあって、すごく存在感があります」

小諸駅からほど近い、旧北国街道と国道が交わる交差点に面した「カド」。

汾陽アナウンサー:
「店内は日当たりも良く、木が基調になっているので、すごく温かみがありますね。大きな梁や柱があっておしゃれさの中にも和の歴史を感じる空間です」

実はここ、大正から昭和の時代、“街の酒屋”として親しまれた場所。

閉店から30年以上の時を経て2025年12月、新たな店に生まれ変わりました。

■ひ孫夫婦が受け継いだ思い

カド 店主・大塚拓さん:
「(カウンターなどは)昔の酒蔵で使っていた酒樽のふたを使って作ってもらってます。(直径)2メートルちょっとくらいの丸いふたをバラシて新しくつぎ直してもらった」

店のオーナーは大塚拓さん(43)。

ここはおばあさんが生まれ育った家でした。

かつての「大塚酒店」。

通りの角地にあることから、「角の大塚」と呼ばれました。江戸時代から続く酒蔵の小売部門として、大正時代、ひいおじいさんが開業しました。

静岡で生まれ育った大塚さんにとって、ここは家族で帰省した第二の故郷です。

大塚拓さん:
「酒屋だったのは、本当に小さい頃まで、うっすら覚えているかいないかくらい。夏休みなどの楽しい家族の思い出、古い家で泊まったりとか」

■大型店、新幹線…活気失った街並み

江戸時代から宿場町として栄えた小諸市。

商家や蔵が立ち並び、商店街はにぎわいました。

しかし、車の普及や大型店の進出、長野新幹線開業で人の流れは佐久平へ。

活気が失われたその頃、大塚酒店も閉店しました。

大塚拓さん:
「(当時から)使われていなくてもったいない思いは家に関してもあったし、(小諸の)古い街並みについても、店が開いていなかったりってあったので」

■移住し”会社員と店主”二足のわらじ 

大学卒業後は首都圏で就職し、結婚。

祖母から受け継いだ建物が気がかりなままでしたが、転機が訪れます。

大塚拓さん:
「たまたま好きだった会社の求人があった。小諸に住めれば、この場所をうまく使うことができるんじゃないかと」

2023年、軽井沢町のビール会社に転職し、家族で小諸市に移住しました。

2025年春から建物の改修に取り掛かり、県の補助金も活用しながら工事を進めました。

平日は会社員として、休日は店主として、二足のわらじで奮闘しています

■甘酒に酒粕 元酒屋こだわりの料理

平日の昼間、店を切り盛りするのは、妻の和佳さん(39)です。

カフェのメニューにも、”元酒屋”のこだわりがあります。

大塚和佳さん:
「甘酒の麹の力で、肉がすごく柔らかくなります」

自家製タマネギ麹も。

「チキンのトマトクリーム煮」が完成です。

汾陽アナウンサー:
「うん、お肉が柔らかい。トマトの酸味とタマネギの甘味、そしてお肉のうま味などが合わさって、とてもまろやかな味わいになっています」

看板メニューのチーズケーキは、生地に酒粕を練りこみます。

汾陽アナウンサー:
「フォークを入れただけですごく滑らかなのがわかりますね。ふわっと口の中に酒粕の香りが広がりました」

■移住者も集う新たな交流の場に

客:
「お肉が柔らかかったので、子供もとても食べやすかった」
「とても目につく場所なので入りやすい」

大塚さんも5歳と3歳の子育て中。会話が弾みます。

最近、小諸では古い建物にひかれ、移住者や新規出店者が増えています。

客の中には移住予定者の姿もありました。

東京から移住予定の客:
「6月に移住してくるんです。あまり深い理由はなくて住みやすそうだなって」

大塚和佳さん:
「古い部分も残りながら、新しい風が吹き込んで新しい街ができていくのかと思うと楽しみ。自分もその風に乗って新しい街をつくり上げていけたら」

■夜はバー「地酒を知れる場所に」

日が暮れると、店は地酒を楽しむバーに。

大塚拓さん:
「昔、酒屋だった時に貯蔵スペースとして使っていた場所」

汾陽アナウンサー:
「ちょっと下りてきただけで、すごくヒンヤリ」

大塚拓さん:
「冬でも夏でも変わらない温度で15~16℃で落ちついていることが多い」

そこには地元の日本酒やワインなど約60種類が並びます。

大塚拓さん:
「地元にはこんな面白い酒、つくり手がいることを知れるような場所にできたら。ここを拠点にいろんな場所に(向かえる)、ワイナリーでも、酒造の見学でもいい」

■再び「角の店」が人の交わる拠点に

100年前、酒を求めて人が集まった角の店。

今また、さまざまな人が交わる場所として時を刻み始めました。

移住し飲食店を開業した客:
「(最近の小諸は)店が増えたり、飲食店が増えたり活気づいている感じはあります。(この店は)さらに活気づけるような場になっているのかな」

カド 店主・大塚拓さん:
「ここは交差点(に面する)ということでいろんな人が行き交っただろうと考えながら、今、再び盛り上がりつつある小諸で外の方も地元の方も交わる場所になれたら」

【カド】(基本 日、月、火 定休)
カフェ:午前10時~午後4時
バー:午後6時~午後10時

長野放送
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