日本人の約4人に1人が睡眠の悩みを抱えているとされています。
実は、日本人の「睡眠障害」は、深刻な状況が続いているのです。
しかし、これまでは「眠れない」等の悩みがあっても、どの診療科を受診すればいいのか、わかりにくい状況でした。それが、6月から受診先を選びやすくなる改正が施行されました。
では、「睡眠障害」をそのままにしていると、どういった悪影響が出るのでしょうか。
今回、中路幸之助医師(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)の監修で、「睡眠障害」についてまとめました。
18年ぶりの追加で「睡眠障害は医療で解決すべき」
今回の改正で、病院やクリニックが掲げる診療科名に新たに「睡眠障害」が加わり、「睡眠障害内科」や「睡眠障害精神科」といった既存の科名と組み合わせた表示が可能となりました。新たな診療科が追加されるのは実に18年ぶりです。

「睡眠障害」単独の診療科として新設されたのではありませんが、患者が受診先を選びやすくなることが期待されています。
これは、「睡眠障害は医療で解決すべき疾患である」という、国からの強いメッセージでもあります。
乳がんのリスクが約1.6倍に
日本では、約4割の人が6時間未満の睡眠しかとれていません(厚生労働省調査)。日本人の睡眠時間は、世界的に見ても極めて短いのです。
そして、「睡眠障害」の悪影響は大変に深刻です。

東北大学のグループは、宮城県の40~79歳の女性約2万4000人を7年間追跡し、睡眠時間と乳がんの発症リスクの関係を調べました。
すると、平均睡眠時間が6時間以下の人では、7時間睡眠の人に対して、乳がんのリスクが約1.6倍になることがわかったのです。
乳がんのリスクが高まるのは40代以降ですが、脳への影響を考えると、30代のうちから睡眠について意識しておくことが大切です 。

さらに、睡眠不足の状態に置いたマウスでは、アルツハイマー病の原因といわれるアミロイドβが脳に蓄積しやすくなることが分かっています。
アミロイドβは、認知症が発症する20~30年前から蓄積するといわれています。
30代~50代のうちから「睡眠障害」には注意が必要です。
睡眠時間が短いと食欲増進 太りやすい体に…
睡眠障害は「肥満を招きやすい」こともわかっています。
それは、「レプチン」と「グレリン」というホルモンのバランスが崩れてしまうからです。
・レプチン: 脂肪細胞が分泌する、食欲を抑制するホルモン
・グレリン: 胃で作られる、食欲を増進するホルモン
睡眠時間が短いと、食欲を抑えるレプチンが減り、食欲を高めるグレリンが増えてしまいます。

睡眠時間が5時間の人は8時間の人に比べて、レプチンが16%少なく、グレリンが15%も増えるのです。
そのため、睡眠時間が短いと、食欲が増進して太りやすい体になってしまいます。
“こってりラーメン”欲するのは「眠らせてくれ」のサインかも
そのうえ、グレリンが多いと高カロリー食を好むようになります。睡眠不足の時に、ケーキやこってりしたラーメンが欲しくなるのはこのためです。

もし睡眠不足を感じていて、最近こってりしたものが無性に食べたくなるようであれば、それは意志の弱さではなく、脳とホルモンからの「眠らせてくれ」というサインかもしれません。

また、こんな興味深い研究もあります。
米ペンシルバニア大学などの研究チームが行った実験では、「6時間睡眠を2週間続けた脳は、注意力や反応速度などが2晩徹夜したのとほぼ同じ状態」になることが明らかになりました。
この状態で車の運転をしたら、大きな事故を起こしても不思議ありません。
睡眠障害は「我慢するもの」から「治療するもの」へ
「睡眠障害」は、大きく分けると6つの症状(タイプ)が代表的です。
1.不眠症(最も多い)
・寝つくのに時間がかかる(入眠困難)
・夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)
・朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)
・十分寝ても休んだ気がしない(熟眠障害)
2.睡眠時無呼吸症候群(睡眠関連呼吸障害)
・大きないびき、睡眠中の呼吸の停止

3.過眠症・ナルコレプシー(中枢性過眠症)
・日中の耐え難い眠気や突然の居眠り(会議中、運転中など)
4.概日リズム睡眠・覚醒障害
・体内時計のズレによるもの。就寝・起床時刻が社会生活に合わない(極端に遅く寝る・起きる)
5.むずむず脚症候群
・寝る前に足(または手)がムズムズ・チクチクして動かしたくなる。
6.睡眠時随伴症(パラソムニア)
・夢中遊行(寝ぼけ歩行)
・夜驚症:大声で叫ぶ、恐怖で起きる等々
上記の症状が1ヶ月以上続いている場合は、「たかが睡眠」と我慢や放置せず、「睡眠障害」を掲げる医療機関を気軽に受診してみてください。

※この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています。
