「飛鳥・藤原の宮都」が世界文化遺産に登録される見通しとなり、奈良県明日香村の森川裕一村長はこう語った。
「私の本音を言いますと、ほっとした、本当にほっとした」
この言葉に、長年にわたる地元の悲願と、その重さがにじんでいる。
■「ほっとした」その言葉に込められた重み
登録への道のりで、最後のハードルとなるのがイコモス(国際記念物遺跡会議)による勧告だ。
専門家集団からのお墨付きをようやく受けたことで、村長は安堵を口にした。しかし同時に、「最後の最後まで頑張らなあかんと思ってます」と喜びの中にも、緊張感が漂う。

■「日本という国ができ上がった場所」
この場所の何がそれほど特別なのでしょうか。
明日香村・森川裕一村長:日本、天皇という単語も、日本の今も残る制度もみんな(ここから)でき上がってる。
そして、その過程は「中国や韓半島の皆さんとやりとりをしながら、交流しながら作っていった」として現代の日本の原型が、国際的な対話の中で形成された場所、それが「飛鳥・藤原の宮都」だというのだ。

■課題は「地下にある」こと
ただし、村長自身も率直に認める課題がある。
明日香村・森川裕一村長:地下でしかいない、ないという欠点もありますので、そこがやっぱり私たちとしてはわかりやすく説明したいと思っております。
遺跡の多くは地中に眠っており、地上に立ってもすぐには当時の姿が見えてこない。
藤原宮跡を訪れた田中友梨奈アナウンサーが「実際に来て見られるのは柱ぐらいかな」と感じたように、遺跡の価値を”見せる”工夫が、これからの大きなテーマだ。
橿原市が提供するアプリでは、当時の藤原宮をCGで再現することもできる。1300年前の宮殿が目の前によみがえる体験は、想像力を刺激するという意味で、ひとつの答えかもしれない。

■”夜を感じたい人”に来てほしい
では、村長はどんな人に訪れてほしいと思っているのだろうか。
明日香村・森川裕一村長:正直言って、数がほしいわけじゃないです。
少々意外に聞こえるが、明日香村の目指す観光の姿を示している。
明日香村・森川裕一村長:飛鳥を、古代を、そして未来に向かって体感したいという人々に足を運んでいただきたいし、例えば(静寂な雰囲気の)”夜を感じたい”という人がたくさん来られるとうれしいです。
にぎわいではなく、深みを求める旅人を歓迎する言葉ともいえそうだ。

■「何ともない景色」が守られ続けている
実際、明日香の風景には派手さがない。
「明日香は、何ともない景色が、今もずっと守られているというところが特徴です」と村長は言う。
持統天皇が詠んだとされる百人一首の一首「春すぎて 夏来にけらしい 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」
歌に登場する香具山は、今も当時と変わらぬ姿で立っている。
1300年前の人が見たのと同じ景色を、現代に生きる私たちも見ることができることが、飛鳥の唯一無二の世界に誇る魅力なのかもしれない。

■「ぜひ足を運んでください。お待ちしております」
7月19日以降に正式登録が見込まれる「飛鳥・藤原の宮都」。
村長は「できるだけわかりやすく、魅力を伝えていきたい」と話し、新しい施設の整備も進んでいることを明かした。
また現地では発掘調査が今も続いており、今後さらなる新たな発見が期待されている。
「飛鳥・藤原の宮都」は、過去を見せる場所であると同時に、まだ発見途上にある場所でもある。
(関西テレビ「newsランナー」2026年6月8日放送)

