高齢ドライバーを雇う怖さについて聞かれた運送会社の社長は「正直なところを言うと、あります」と吐露しました。

名古屋で先週発生したスイミングスクールのマイクロバスによるひき逃げ。逮捕された運転手の年齢は、85歳。

事故の危険性が指摘されながらも、高齢ドライバーに頼らなければならない背景には、長時間・低賃金のいわゆる”きつい仕事”で若者が業界に入ってこないという現実がありました。

運送会社やタクシー会社がさまざまな対策に乗り出している現状を徹底取材しました。

■「半数が50代以上」業界が直面する高齢化の実態

ドライバー歴およそ40年、68歳のトラックドライバー・遠藤正春さん。この日は夕方6時から翌朝6時まで、4トントラックで集荷作業をこなします。

【トラックドライバー遠藤正春さん(68)】「左折の時が一番気をつけて運転してるんですけど、ちょっと気づくのが遅いとか、そういうところはありますね」

ヒヤッとした経験もあると率直に認めながら、「人間って油断とか隙がありますから。そこのちょっとの隙がね」と、高齢ドライバーの事故は人ごとではないと話します。

現在、トラックドライバーのおよそ半数が50代以上を占めます。運送業界だけでなく、タクシー業界でも同様の傾向が進んでいます。

■「若い人が入ってこない」業界特有の構造的問題

なぜここまで高齢化が進むのでしょうか。

日本女子大学の二村真理子教授は、少子高齢化に加えて業界特有の構造的な問題があると指摘します。

【日本女子大学 二村真理子教授】「若い人たちがまず入ってこない。入ってきたとしても比較的短時間で辞めてしまう方も一定数いる。そうなれば自然とウエートは、年齢層の高い方にいってしまう」

ドライバーの仕事は長時間・低賃金のいわゆる”きつい仕事”というイメージが根強くあります。

改善は進んでいるものの、若者離れは加速する一方で、企業は高齢のベテランドライバーに頼らざるを得ない状況に追い込まれてるのです。

■高齢ドライバーを雇う怖さは「正直なところをいうとあります」

一方で、体力・視力・反応速度の低下といった加齢に伴うリスクは否定できません。年齢が上がるほど事故率が上昇するというデータもあります。

68歳のトラックドライバー・遠藤さんを雇用するトーワカーゴの岡村成晃社長は、高齢ドライバーを雇う怖さはあるかという質問に「正直なところを言うと、あります」認めたうえで、対策を説明します。

【トーワカーゴ 岡村成晃社長】「長距離輸送から、毎日帰れる運行に変えたりとか、大型車から中型車に車格を小さくすることによって、距離・時間・車格で事故のリスクを減らしています」

■「判断・動作のタイミングがずっと悪い」 適齢診断の現場

法令では、職業ドライバーに対して65歳以上は3年に1回、75歳以上は1年に1回の”適齢診断”受診が義務付けられています。

取材班が訪れた自動車学校では、77歳のタクシードライバーが診断を受けていました。

画面中央に表示される数字と、周辺に現れる丸の位置を答える検査では、やや苦戦する場面も。道路シミュレーションでは停止線のかなり手前で止まってしまいました。

診断後のカウンセリングで講師は「判断・動作のタイミングがずっと悪いね。先急ぎの傾向があるんですよ」と本人に伝えます。

本人は「自信過剰には絶対ならへん」と答え、何歳までドライバーを続けるかと言う問いに対しては「80歳ぐらいで」と語りました。

【大阪都島自動車学校 宮崎克佳講師】「本人の日々の健康管理や睡眠の量など体調的なものに対してしっかりと管理していくこと。それ以外で対応するのは、今現在ではなかなか難しい」

■「ドライバーは宝」タクシー会社の独自訓練

企業側の取り組みも進んでいます。

大阪市のタクシー会社「ユナイテッド」では、適齢診断の結果をもとに助言・指導を実施するとともに、新人・ベテランを問わず公道での運転訓練を行っています。

ドライバー歴15年以上、入社後無事故という69歳の今井聖さんも訓練に参加しました。目視確認など安定した運転ぶりでしたが、「ブレーキが”カクン”となってしまうので、もうちょっと優しく」と細かい指摘が入ります。

今井さん自身は「安全運転を心がけるのは基本中の基本ですけれども、自分の体調管理が一番大切」と語りました。

「ユナイテッド」の指導担当・嘉藤直矢さんは、「会社にとってドライバーさんは宝ですので、貴重な人材、人の財産」と強調。

日々の点呼の強化、乗務員とのコミュニケーション、安全性の高い車両への順次入れ替えを進めていると説明しました。

■「ともかく気をつけながら共存」専門家が示す当面の対応は

高齢ドライバーが増える背景にはドライバーの時間外労働の上限が設けられて、ドライバーの数がより必要になってきているということもあります。

二村教授は「しばらくの間、新しい技術が出てくるまでは、ともかく気をつけながら共存」するしかないとしつつ、「衝突安全装置などの活用できる技術、お金のかかる話ではあるけれども、積極的に活用していただきたい」と訴えます。

元検事の亀井正貴弁護士は「非常に難しい問題」と述べ、規制を厳しくすると、現在の物流や交通によって支えられている社会が回らなくなってしまう恐れも指摘しました。

【亀井正貴弁護士】「試験とか検査によって、認知能力や集中力についてチェックした上で、一定クリアしない場合には運転などの業務をさせないということを法規制でやるかどうか。

あんまり広くやりすぎると、確かに社会回らなくなりますから。それでも安全第一というところを考えて、規制まで踏み込むのかどうかという論点でしょうね」

(関西テレビ「newsランナー」2026年6月5日放送)

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