仙台市青葉区国分町を中心とした繁華街で、悪質な客引きを防止するための新たな取り組みが6月2日からスタートした。市が巡回業務を委託したのは、格闘技経験者や元アスリートなど「筋肉採用」を掲げる民間の警備会社だ。新宿・歌舞伎町などでの実績を持つ屈強なメンバーが前面に出ることで、犯罪の温床となっている客引き行為の抑止が期待されている。一方で、活動時間などの制約から課題も見えてきている。
「筋肉採用」の警備員 歌舞伎町で実績
仙台市は、市条例で客引き行為の禁止区域に指定されている国分町や仙台駅前の繁華街において多発している悪質な客引き行為に対処するため、都内の民間警備会社「エグゼクティブプロテクション」に巡回業務を委託した。
同社は新宿・歌舞伎町や六本木など、全国有数の繁華街で客引き対策の警備実績を持つ。その最大の特徴は「筋肉採用」を掲げている点だ。巡回にあたる警備員は、格闘技経験者や元アスリートといった屈強なメンバーで構成されており、日頃から提携するトレーニングジムで体づくりに励んでいるという。
仙台市では、12人の警備員が毎週火曜日から土曜日の午後4時から午後11時までの間、国分町を中心とした対象エリアを巡回する。こうした屈強な人材を前面に出すことで、悪質な客引き行為を未然に防ぐ狙いがある。
仙台市 郡和子市長:
これまで培ってこられたノウハウをさらに生かしていただきながら、市民の皆さまが安全に、そして安心に訪れることのできるまちづくりのためにご尽力をいただきたい。
2年10カ月で約2億4800万円の委託費を計上したこの対策に、仙台市の郡市長も期待を寄せている。
過去最多の摘発件数と多発するぼったくり被害

今回の対策強化の背景には、国分町周辺で行われている客引き行為の深刻な現状がある。宮城県警は、全国から客引きが流れ込み、犯罪の温床になっているとみて取り締まりを強めてきた。去年の摘発件数は44件に上り、過去5年間で最も多い数字を記録している。
仙台市によると、1日あたりの客引きの延べ人数は平均727人で、コロナ禍以降、増加傾向にあるという。
さらに深刻なのが「ぼったくり」の被害だ。去年1年間だけでおよそ140件の被害が報告されており、その被害総額は8000万円に達している。市や民間、地域ぐるみでの対策強化は急務となっていた。
立ちはだかる巡回時間の制限
実際のパトロールでは、警備員が繁華街を訪れた人たちに客引きを利用しないよう呼びかけるとともに、いわゆる「キャッチ」に対しては直接口頭で注意を行っている。
実際に取材した日にも、警備員が条例に基づいた的確な指導を行う姿が見られた。
パトロールにあたった警備員:
通行の支障をきたすようなものは基本的にNGです。ちゃんとお店の前でやってもらうか、道路使用許可をとってチラシ配りするか。
一方で、この取り組みには課題も残されている。
警備員の巡回時間は午後11時までとなっているため、巡回が終わった後の青葉区一番町などでは、路上に客引きと思われる人たちが依然として立っている状況が確認されている。未明にかけても多くの人が行き交う国分町周辺では、深夜帯の客引き行為が続いているのだ。
国分町を訪れた人からは、「午後11時までだとまだ足りないと思う」などと、巡回時間の延長を求める声も聞かれた。
仙台市は、警備員への配慮や終電時間などを考慮して現在の巡回時間を設定したとしているが、客引き撲滅に向けては今後も対策の検討が必要になりそうだ。
エグゼクティブプロテクションの紺井大揮さんは初日の巡回を終え、「客引き行為者に対して何度か指導し、条例の周知ができたので、本日の成果はあったのかと思う」と手応えを語り、地域と連携して対策を続けていく姿勢を示した。
エグゼクティブプロテクション 紺井大揮さん:
継続的な業務になりますので、日々の積み重ねを大事にしながら、市と警察、地域団体の方々と共同しながら業務を進めていきたい。
客引き撲滅に向けて

「筋肉採用」の警備員による巡回は、悪質な客引き行為に対する強力な抑止力として期待される一方で、深夜帯の対策など残された課題も少なくない。
安全で安心なまちづくりを実現するためには、行政や警察、民間企業による取り組みだけでなく、市民一人ひとりが「客引きを利用しない」という意識を持つことが不可欠だ。
地域全体が一体となった継続的な努力が、東北一の繁華街の健全化につながっていくだろう。
