瀬戸内海での出動に備え、海上保安庁の特殊救難隊と広島航空基地が合同訓練を行った。海難救助の“最後の砦”とも呼ばれ、人命救助の最前線を担うエリート部隊の活動に、テレビ新広島の辰已麗アナウンサーが密着した。

選ばれし“海難救助のスペシャリスト”

「救命胴衣を着て、これから特別な訓練に参加させてもらいます」
辰已アナウンサーが向かったのは、貨物船や旅客船など多くの船が行き交う広島湾。6月1日、江田島市沖で、海上保安庁の広島航空基地と東京・羽田空港にある羽田特殊救難基地を拠点とする「特殊救難隊」が合同訓練を行った。

海上保安庁の公式SNSより
海上保安庁の公式SNSより
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特殊救難隊には、全国から選抜された海上保安官約40人が所属。6チーム編成で出動に備えている。
転覆した船内からの救助活動や、火災が発生した危険物積載船での人命救助・消火活動、ヘリコプターからの降下や吊り上げ救助などを担う部隊だ。

海上保安庁 特殊救難隊 第二隊・寶蔵聖也さん
海上保安庁 特殊救難隊 第二隊・寶蔵聖也さん

特殊救難隊第二隊の寶蔵聖也さんは、「有害液体物質の漏えいによる中毒など、船舶で起きるあらゆる特殊海難事故に対応できるよう訓練を実施している」と話す。
過酷な訓練で身に付けた高度な技術と専門知識を武器に、全国各地の事案に対応するスペシャリスト。海難救助の“最後の砦”とも呼ばれている。

独自の“降下器”でヘリから船へ着地

今回の訓練の大きな目的は、普段は接する機会が少ない広島航空基地との連携強化だった。瀬戸内海で実際の出動事案が発生した際、よりスムーズに対応できる体制づくりを目指す。

救命胴衣を着用して訓練を取材する辰已アナウンサー
救命胴衣を着用して訓練を取材する辰已アナウンサー

船の甲板に立った辰已アナウンサーの真上を、海上保安庁のヘリコプターが低空で旋回する。
「海上保安庁という文字も見えます。それくらいヘリはいま私たちの真上にいるような状況です。海面の波打つ様子からも、風の強さがよくわかります」と、その迫力を伝えた。

独自開発された「降下器」で迅速に降下
独自開発された「降下器」で迅速に降下

訓練では、ヘリコプターから船舶へ降下する救助活動を想定。隊員たちは機体からロープを伝って降下し、走り続ける船の甲板へ着地していく。
「いま隊員が一人降りてきましたが、それを追いかけるようにもう一人の隊員も背中から機体の外へ身を乗り出し、非常にスムーズに降下していきます」
正確で無駄のない動き。一般の潜水士が電動装置で吊り下ろされるのに対し、特殊救難隊員は独自開発の「降下器」を使い、自らの意思で迅速に降下できる。

ハンドサインも使って確実に連携

走行中の船へ降下するためには、ヘリのパイロットや隊員同士の緻密な連携が欠かせない。
しかし、その環境は想像以上に過酷だ。
「ヘリの音で自分がしゃべっている声もよく聞こえないくらいです」と辰已アナウンサー。

仲間にハンドサインを送る隊員
仲間にハンドサインを送る隊員

もちろん無線も装備しているが、ごう音の中では腕を大きく回すなどの「ハンドサイン」も重要なコミュニケーションの手段となる。
また、隊員たちは首に特殊な器具を装着。首の振動を拾って音声に変換し、ほかの隊員の耳へ届ける仕組みで、激しい騒音下でも確実に連絡を取り合っているという。

「必ず助ける」人命救助にかける思い

訓練では、負傷者役を担架に固定し、ヘリコプターへ吊り上げる救助活動も実施された。
その一員として最前線に立つのが、広島出身の間賀田祥岳さんだ。県内の高校を卒業後、呉市の海上保安大学校へ入学。現在は特殊救難隊の隊長として活動している。

海上保安庁 特殊救難隊 第二隊・間賀田祥岳 隊長
海上保安庁 特殊救難隊 第二隊・間賀田祥岳 隊長

間賀田隊長は、「われわれが瀬戸内海を守るという精神のもと、救助要請があった際には必ず要救助者を助けるという思いで救助活動にあたりたい」と力を込める。

特殊救難隊の隊員たちが胸に刻む言葉がある。
「苦しい、疲れた、もうやめたでは人の命は救えない」

極限状態で、もう一歩を踏み出す体力と精神力。過酷な訓練の積み重ねが、人命救助につながっている。特殊救難隊と広島航空基地は、今後も有事に備え、さらなる連携強化を図っていく考えだ。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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